小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

アナフィラキシーに対してアドレナリンを使うタイミングの謎

2017年11月03日 06時28分41秒 | 小児医療
 アナフィラキシーはアレルギー反応の重症型で、複数の症状が組み合わさった場合を言います。
 さらに進行して血圧低下・顔色不良など循環器症状を伴う場合はアナフィラキシー・ショックと呼びます。
 アナフィラキシー〜アナフィラキシーショックの患者さんの治療はノルアドレナリンの筋肉注射が第一選択です。

 では、どのタイミングでノルアドレナリンを使用すべきか?
 調べて整理してみました。

<アナフィラキシーの定義>
 3つの資料の元論文は同じです。
 それを何で表現するかの違い・・・①わかりやすいシェーマで、②イラスト入りで、③文章で。

①「アナフィラキシーショック〜ボスミン筋注する勇気が患者を救う:総合内科 平井啓之」より


②「アナフィラキシーガイドライン」(日本アレルギー学会、2014)より


③「食物アレルギー診療ガイドライン2012」(日本小児アレルギー学会)



<アナフィラキシーの重症度評価>
 アナフィラキシーガイドラインでは、複数の臓器にわたる症状が合併しても「軽症ではアナフィラキシーとは言わない」としています。
 私の今までの常識とは、ちょっと違う・・・。
 例えば、アレルゲンとなる食物を食べて、局所じんましんと嘔吐があれば「アナフィラキシーです」と診断していました。
 考えを改めなくてはいけないですね。この表を印刷して診察室に張っておかなきゃ。
 でも、上記例では患者さんの心構えとして「摂取量が多ければアナフィラキシーになる可能性があります」と説明した方がよいと思われ、「アナフィラキシーではありません」と説明するのは適切ではないとも感じます。
 う〜ん。

・「アナフィラキシーガイドライン」(日本アレルギー学会、2014)より



<アドレナリンの適応>
 ではアナフィラキシーに対するアドレナリン治療の適応はどうでしょうか。
 同じく「アナフィラキシーガイドライン」(日本アレルギー学会、2014)から引用した下記文章。

 それによると、「グレード3の症状がアドレナリンの適応」とあります。
 しかしアナフィラキシーの定義は「グレード3の症状を含む複数臓器の症状」ですから、循環器症状はショックそのものなので除外しても、グレード3の消化器症状単独、グレード3の呼吸器症状単独、グレード3の神経症状単独ではアドレナリンの適応にならないと読むことも可能です。
 これでいいのでしょうか?



<エピペン使用の適応>
 患者さんが自分で所持して緊急時にアドレナリンを使用できるようにした薬剤キットが「エピペン®」です。
 こちらの使用基準を示します;

・「アナフィラキシーガイドライン」(日本アレルギー学会、2014)より

 あれ、グレード3の消化器症状・呼吸器症状単独でも使用すべきとしています。
 医療機関における基準と異なり、混乱してしまいます。

 これは私の解釈の間違いなのでしょうか。
 それとも、エピペン®は予防的に使用するものだから、アナフィラキシー前状態を基準とするという意味なのでしょうか。
 ・・・誰かに聞いてみよう。

<参考>意識障害の評価:JCSとGCS

・「救急医療の流れ〜急変時のチェックポイント」(ナースフル)


・「小児のバイタルサインスライド」(須坂病院小児科)より;


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