じんましんはよく相談を受ける病気です。
しかし、その実体はなかなか理解されていません。
じんましん=アレルギーというイメージが強く、
「原因を知りたいので検査をしてください」
と受診されます。
しかし、犯人がわかるアレルギー性じんま疹は全体の1割に過ぎません。
残りの9割ははっきりした原因が同定できないのです。
ところが、治療は抗アレルギー薬が有効なので、
原因のアレルギーが特定できないまま、抗アレルギー薬が処方されています。
なんだか混乱しますね。
なお、抗アレルギー薬という呼称は日本のみで、
欧米では「抗ヒスタミン薬」と呼ばれています。
また、じんましんに塗り薬は効きません。
なぜかというと、自然に消えてしまうのがじんましんの特徴だからです。
じんましんが出ている場所の皮膚病ではなく、
体の内側からあちこちの皮膚に顔を出す全身の病気と捉えていただきたいと思います。
ですから、他院を受診して強いステロイド軟膏が処方されている患者さんを見ると、
「?」と私は思ってしまいます。
実は私もじんましん体質です。
特に風呂上がりに目立ち、シャンプーを替えたら軽減したので、
一部はシャンプーが合わなかったと考えています。
今でも完全に縁が切れたわけではなく、
ちょっと掻いてしまうと掻いたところが線状に赤く腫れ上がります。
これは「機械性じんま疹」に分類され、現象を「皮膚描記症」と言います。
さて、先日じんましんに関するWEBセミナーがあり、
知識をアップデートすべく視聴しました。
概ね従来の理解通りでしたが、
「このタイプのじんましんには抗ヒスタミン薬推奨度はこれくらい」
「このタイプのじんましんはこのくらいで治る」
という目安が述べられており、とても参考になりました。
<メモ>
・じんましんと血管性浮腫:
(じんましん)真皮の浅いところに水が溜まる、数時間で消える。
(血管性浮腫)真皮の深いところに水がたまる、消えるまで数日かかる。
・ガイドラインでは、
6週間以内で治まるのを「急性蕁麻疹」
6週間以上続くのを「慢性じんま疹」
と分類している。
・アレルギー性のじんましんは約5%しかない。
★ 抗ヒスタミン薬連用の推奨度とエビデンス
推奨度:
1(強い推奨)
2(弱い推奨)
エビデンスレベル:
A(高い)
B(低い)
C(とても低い)
・機械性じんま疹(人工じんま疹):1B
・コリン性じんま疹:1B
コリン性じんま疹は「踏み台昇降運動15分」で誘発可能、
全身温熱発汗試験(特発性後天性全身性無汗症の鑑別目的)でも誘発可能。
・アレルギー性じんま疹:ー(連用の推奨/エビデンスともになし!、頓用は2C)
・寒冷じんま疹:1B
・日光じんま疹:1B
・アスピリンじんましん(不耐症):2C
NSAIDsは禁忌。COX1阻害作用が弱いアセトアミノフェン少量なら可、
COX2阻害選択性が高いエトドラク、メロキシカムが使える患者もいる。
・特発性じんま疹:1A
抗ヒスタミン薬の効果判定は1〜2週間内服した上で判断する。
慢性じんま疹の治癒までの期間は2〜6年。
内服ステロイドを使用するのは日本だけである。皮膚科専門医以外で処方されているセレスタミンは推奨できない。
国際ガイドラインでは抗ヒスタミン薬増量でも無効の場合、オマリズマブ、シクロスポリンの併用を検討。