小児漢方探求

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

(医学雑誌拾い読み)「心と体の弁証論治」(梁 哲成)

2017年07月30日 16時56分39秒 | 漢方
日本小児東洋医学会雑誌、第43回学術集会ランチョンセミナーより。
もう一つ、梁 哲成先生の論文を見つけましたので、ポイントを抜粋;

□ 中医学は心身医学的側面を有している
(生理活動を行うもの)気、血、津液
(体の内部を構成するもの)五臓:肝、心、脾、肺、腎
・気・血・津液は五臓などのさまざまな部位にあり、そして巡って、生理活動を行う。
・気は血や津液、臓腑、器官などを動かし、温め、守り、支え、もらさず、代謝し、栄養を与え、こころの働きを行う。
・血と津液は、臓腑や器官に栄養と潤いを与え、さらに気の働きや、それによるこころの働きを行うための場を与える。
・五臓は気・血・津液の生理活動によって、生命活動を行うために必要なこころと体のそれぞれの機能を連携しながら分担して行う。つまり五臓は、こころと体の生理機能を一体として行うので、心と体の活動を切り離して考えることができない。
・五臓における気・血・津液の不足や停滞、病邪の侵襲、病理産物の発生などの病理変化は、こころと体の病症を一連のものとして併せて引き起こす。

□ 「漢方の心身医学」(相見三郎)より
 西洋哲学思想では「こころ(プシケー)」と「体(ソーマ)」とは別のものと考えるが、一方、東洋的医学思想では、体と離れたこころというものはなく、こころとは五臓と五志の働きを言う。そして五臓の病態にはそれぞれの薬方があり、五志の動きは直接五臓に影響するもので、また五臓の違和は五志に影響するものである。

□ 向精神作用を持つ代表的生薬
(解表薬)紫蘇葉、薄荷、菊花、柴胡
(清熱薬)夏枯草、山梔子、黄連
(利水浸湿薬)茯苓、厚朴
(温裏去寒薬)呉茱萸
(理気薬)香附子、鬱金、木香
(活血薬)川芎、丹参、地竜
(補気薬)人参、大棗
(補陰薬)麦門冬、百合
(固渋薬)蓮子
(安神薬)酸棗仁、柏子仁、遠志、竜眼肉、竜骨、牡蛎、浮小麦、石決明
(熄風鎮痙薬)○羊角、天麻、釣藤鈎、白○蚕、竜胆草、蝉退
(化痰鎮咳薬)半夏

□ 向精神作用を持つ一般的漢方方剤
(疏肝解欝薬)小柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴朴湯、大柴胡湯、四逆散、加味逍遥散、柴胡疏肝散、香蘇散
(疏肝解欝安神薬)加味帰脾湯
(清肝瀉火剤)黄連解毒湯、三黄瀉心湯、竜胆瀉肝湯
(平肝熄風剤)抑肝散、抑肝散加陳皮半夏
(安神薬)甘麦大棗湯、酸棗仁湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯

□ 五臓の失調と五志の失調
(肝)焦燥・抑うつ
(心)不眠・健忘・動悸
(脾)倦怠・懶言(らいげん:話すのがおっくう)
(肺)怠惰・小声
(腎)健忘・不穏
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