漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

「すごい弁当力!」

2010年06月18日 21時57分08秒 | 食育
佐藤剛史著、五月書房(2009年発行)

弁当を作ろう!
すると、自分が、家族が、社会が変わる!
という内容の本です。

著者は大学農学部の先生で栄養学が専門ではありません。
ですので、栄養バランスとかの記述はありません。

あえて云えば、弁当の社会学でしょうか。

お母さんが作ってくれた弁当は「家庭の味」の一端を担い、小児・青年期の思い出としてその後の人生に豊かな土壌を提供します。
一方、小学生が、中学・高校・大学生が「弁当の日」と称して自分で弁当を作るとどうなるか?
メニューを考え、食材を買い出しに行き、食材がどこで作られるのかに思いを馳せ、見た目の色彩を考え、無駄の出ない調理を考え・・・それはそれはいろんな社会勉強の要素が詰め込まれている画期的イベント。
そしてなにより、「誰かのために作る」という貴重な体験をすることになります。

「食べること」は生きることに直結します。
「食」を共有すると云うことは家族の繋がりを強くします。
そういう視点からは、良いことずくめですね。

わが家でできることは何だろう。
高校生の長男は偏食で、弁当のバリエーションが少なくて困っています。
子ども達にいきなり「自分で弁当を作れ」と言っても・・・まず、父親の私自身が作ることが第一歩かな。
自分で誰かのために弁当を作り、いつの日か子ども達に「一緒に作ろう」と誘ってみたいと思います(笑)。

今の日本が抱える「食」の問題にも触れています。
ただ、私は既に本書でも引用されている幕内秀雄さんの書籍を何冊か読んでいるので、例示される数字はだいたい聞いたことのあるデータでした。

一点、気になったこと。
家庭が崩壊して「弁当」そのものの経験が存在しない子ども達もいます。
家族の絆を強くする「弁当」ですが、その家族を失っている子ども達にはつらい言葉でしかありません。
親から「愛情」をもらえなかった子ども達は、どうすればいいんだろう。
ゼロから出発することもできるんだろうか・・・(考えすぎ?)。

もう一点、気になったこと。
著者は「弁当を作ることは素晴らしい」と信じるあまり、それを他人に強制しようとする勢いを感じます。
大切さを感じて、実行に移すまでの時間は人それぞれです。急がせてはいけません。
ちょっと抵抗を感じました。

まあ、流れとしては賛成なのですが・・・小児科医から見ると少し違和感あり。

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