先日、私自身も自動車運転免許証の更新を行いました。
その際、「運転中に意識を失う可能性のある病気がありますか?」という質問がありました。
確かにてんかん発作などで意識を失うと交通事故に繋がります。
しかしそのような症状がない精神・神経疾患一般にも、残念ながら偏見の目が向けられがち。
こういう情報を地道に発信して、不要な偏見が減ることを望みます。
■ 双極性障害患者の運転は危険なのか 〜社会復帰準備段階の患者で検討
(2016.09.09:Mediacl Tribune)
双極性障害の患者には継続した薬物療法が必須となるが、気分安定薬や抗精神病薬の多くは添付文書で自動車運転に関する注意喚起がなされている。なお、気分安定薬と交通事故との関係や、双極性障害と交通事故との関係は明確でないといった指摘もある。そこで、名古屋大学大学院精神医学分野の宮田明美氏らは、双極性障害患者の運転技能に関する予備的検討として健常人と比較した運転シミュレータの検討結果から、社会復帰準備期にある双極性障害患者の運転技能は健常人との間で統計学的に有意な差がないことを、第13回日本うつ病学会総会(8月5~6日、会長=名古屋大学大学院精神医学/精神生物学主任教授・尾崎紀夫氏)で報告した。
◇ 車間距離、横揺れ、ブレーキ反応時間は健常人との有意差はなし
予備的検討の対象は、運転免許を持ち、社会復帰準備期にある、病状が安定した双極性障害患者21例(男性17例、女性4例、平均年齢40.1±10.1歳、双極性障害Ⅰ型3例、同Ⅱ型18例)と年齢・性をマッチさせた健常人同数例。運転シミュレータを用いた運転技能と、症状評価(ヤング躁病評価尺度、ハミルトンうつ病評価尺度、ベック抑うつ質問票-Ⅱ、自記式社会適応度評価尺度、スタンフォード眠気尺度)、認知機能〔Continuous Performance Test(CPT)、Wisconsin Card Sorting Test(WCST)、Trail Marking Test〕との関係を検討した。
臨床背景について見ると、双極性障害患者群では気分安定薬処方率は66%、ベンゾジアゼピン系薬併用率は57%、抗精神病薬併用率は52%、抗うつ薬併用率は33%であった。
健常人群との比較では、運転歴は双極性障害群の週当たりの運転頻度は平均2回で健常人群の7回に比べて有意に低く、走行距離も有意に短かった。症状評価で有意差が認められた項目はベック抑うつ質問票-Ⅱ、自記式社会適応度評価尺度、認知機能では持続的注意を評価するCPTで、認知課題で遂行機能を評価するWCSTは低下傾向にあった。
運転シミュレータによる車間距離の変動を計測する追従走行課題、車体の横揺れの度合いを計測する車線維持課題、ブレーキ反応時間を測定する飛び出し課題について評価し比較した結果、いずれの運転技能も双極性障害患者群と健常人群との間で統計学的有意差はなかった。
◇ 運転技能と認知機能や処方薬との明確な関連は認められず
また、双極性障害患者群において運転技能と症状評価について項目ごとに関係を検討したが、運転歴や症状、認知機能のいずれの指標も有意な関連が認められなかった。
以上から、宮田氏は「認知機能では注意や遂行機能が健常人よりも低下傾向にありながらも病状が安定している双極性障害患者を対象とした予備的検討からは、運転シミュレータによる運転技能は健常人とは有意な差がないこと、運転技能は認知機能と有意な関連が認められないこと、さらに処方薬と運転技能との明確な関連が認められなかった」と述べた。
その際、「運転中に意識を失う可能性のある病気がありますか?」という質問がありました。
確かにてんかん発作などで意識を失うと交通事故に繋がります。
しかしそのような症状がない精神・神経疾患一般にも、残念ながら偏見の目が向けられがち。
こういう情報を地道に発信して、不要な偏見が減ることを望みます。
■ 双極性障害患者の運転は危険なのか 〜社会復帰準備段階の患者で検討
(2016.09.09:Mediacl Tribune)
双極性障害の患者には継続した薬物療法が必須となるが、気分安定薬や抗精神病薬の多くは添付文書で自動車運転に関する注意喚起がなされている。なお、気分安定薬と交通事故との関係や、双極性障害と交通事故との関係は明確でないといった指摘もある。そこで、名古屋大学大学院精神医学分野の宮田明美氏らは、双極性障害患者の運転技能に関する予備的検討として健常人と比較した運転シミュレータの検討結果から、社会復帰準備期にある双極性障害患者の運転技能は健常人との間で統計学的に有意な差がないことを、第13回日本うつ病学会総会(8月5~6日、会長=名古屋大学大学院精神医学/精神生物学主任教授・尾崎紀夫氏)で報告した。
◇ 車間距離、横揺れ、ブレーキ反応時間は健常人との有意差はなし
予備的検討の対象は、運転免許を持ち、社会復帰準備期にある、病状が安定した双極性障害患者21例(男性17例、女性4例、平均年齢40.1±10.1歳、双極性障害Ⅰ型3例、同Ⅱ型18例)と年齢・性をマッチさせた健常人同数例。運転シミュレータを用いた運転技能と、症状評価(ヤング躁病評価尺度、ハミルトンうつ病評価尺度、ベック抑うつ質問票-Ⅱ、自記式社会適応度評価尺度、スタンフォード眠気尺度)、認知機能〔Continuous Performance Test(CPT)、Wisconsin Card Sorting Test(WCST)、Trail Marking Test〕との関係を検討した。
臨床背景について見ると、双極性障害患者群では気分安定薬処方率は66%、ベンゾジアゼピン系薬併用率は57%、抗精神病薬併用率は52%、抗うつ薬併用率は33%であった。
健常人群との比較では、運転歴は双極性障害群の週当たりの運転頻度は平均2回で健常人群の7回に比べて有意に低く、走行距離も有意に短かった。症状評価で有意差が認められた項目はベック抑うつ質問票-Ⅱ、自記式社会適応度評価尺度、認知機能では持続的注意を評価するCPTで、認知課題で遂行機能を評価するWCSTは低下傾向にあった。
運転シミュレータによる車間距離の変動を計測する追従走行課題、車体の横揺れの度合いを計測する車線維持課題、ブレーキ反応時間を測定する飛び出し課題について評価し比較した結果、いずれの運転技能も双極性障害患者群と健常人群との間で統計学的有意差はなかった。
◇ 運転技能と認知機能や処方薬との明確な関連は認められず
また、双極性障害患者群において運転技能と症状評価について項目ごとに関係を検討したが、運転歴や症状、認知機能のいずれの指標も有意な関連が認められなかった。
以上から、宮田氏は「認知機能では注意や遂行機能が健常人よりも低下傾向にありながらも病状が安定している双極性障害患者を対象とした予備的検討からは、運転シミュレータによる運転技能は健常人とは有意な差がないこと、運転技能は認知機能と有意な関連が認められないこと、さらに処方薬と運転技能との明確な関連が認められなかった」と述べた。