偏見・差別を避けるために隠すのが当たり前だった精神疾患。
変化の兆しが見えてきました。
■ 精神障害の苦悩「勇気をもって語る」 静岡でセミナー
(2018年02月12日:朝日新聞)
「勇気をもって語ります」
そんなタイトルの市民公開セミナーが、静岡県藤枝市茶町1丁目の市生涯学習センターであった。語ったのは精神障害の当事者だ。
「私は統合失調症です」。同市の黒田成基さん(44)はとつとつと語り始めた。発症は社会人3年目のころ。長時間勤務の疲れと、かつてネズミ講に関わった罪悪感から「警察に追い回されている」という妄想にとりつかれた。
「株主総会の時、警備に訪れた私服警官と会社の同僚が一緒になって自分を追いかけてきた。……あ、妄想です」。時々、自分で断りを入れながら、幻覚の苦しさを吐露する。
「死のう」と富士の樹海に行った帰り、対向車のトラックが全て敵意を持ってパッシング(ヘッドライトの点滅)してきた、と見えた。発作的に焼津の歩道橋から身を投げた。両足と右ひじを骨折、頭蓋骨(ずがいこつ)も陥没する大けがを負った。
定期的に通院するようになり、「パトカーの登場も減ってきた」。2年前に結婚して、市内の公営住宅に住む。「病者だけど全力で生きてきた」と語った。
村沢龍一さん(34)はアルコール依存症と、うつ病に苦しんだ。先天性心疾患で幼少期に受けた手術跡があり、小学校でいじめられた。「中学でぐれ、お酒とたばこに手を出した」。絵を描く特技をいかした仕事についたが、上司とうまくいかずに酒量が増えた。会社を辞め、飲食店の店長になった。「自分の精神のゆがみを直視しないために、ひたすら飲み続けた」
2度の入院。妻と2人の子は去っていった。断酒して3年。「酒のせいで頭の中は中学生で止まったまま。実年齢と差が開きすぎて苦しい」
半年前から3度、脳梗塞(こうそく)で倒れた。幸い、まひは軽度ですんだ。「生きなさい」と言われたのだろう、と今回、体験を話すことにした、という。「だんだんと顔を上げて生きていきたい。マイペースで歩んでいきたい」
セミナーは先月開かれ、主催したのは「精神保健福祉ネットワーク会議」。2002年に精神障害者と医療者、市が対等に話し合う場として発足した。当事者による公開セミナーは5年前に始まり、これまでに14人が市民を前に人生を語ってきた。
心のクリニック(同市)の中江清員医師は「実名で地元で語るというのは、本当にすごいこと」。ケースワーカーの藁科ひろ子さんは「当事者の大変な歩みを聞くことで、身近な人に精神障害への理解や、助けたい、という気持ちが生まれる」。
会場で聞いていた女性は「私も携帯ゲームにはまったり、買い物に逃げたりする。誰でも小さな依存症がある。2人の正直な言葉は、心に響きました」と話した。
変化の兆しが見えてきました。
■ 精神障害の苦悩「勇気をもって語る」 静岡でセミナー
(2018年02月12日:朝日新聞)
「勇気をもって語ります」
そんなタイトルの市民公開セミナーが、静岡県藤枝市茶町1丁目の市生涯学習センターであった。語ったのは精神障害の当事者だ。
「私は統合失調症です」。同市の黒田成基さん(44)はとつとつと語り始めた。発症は社会人3年目のころ。長時間勤務の疲れと、かつてネズミ講に関わった罪悪感から「警察に追い回されている」という妄想にとりつかれた。
「株主総会の時、警備に訪れた私服警官と会社の同僚が一緒になって自分を追いかけてきた。……あ、妄想です」。時々、自分で断りを入れながら、幻覚の苦しさを吐露する。
「死のう」と富士の樹海に行った帰り、対向車のトラックが全て敵意を持ってパッシング(ヘッドライトの点滅)してきた、と見えた。発作的に焼津の歩道橋から身を投げた。両足と右ひじを骨折、頭蓋骨(ずがいこつ)も陥没する大けがを負った。
定期的に通院するようになり、「パトカーの登場も減ってきた」。2年前に結婚して、市内の公営住宅に住む。「病者だけど全力で生きてきた」と語った。
村沢龍一さん(34)はアルコール依存症と、うつ病に苦しんだ。先天性心疾患で幼少期に受けた手術跡があり、小学校でいじめられた。「中学でぐれ、お酒とたばこに手を出した」。絵を描く特技をいかした仕事についたが、上司とうまくいかずに酒量が増えた。会社を辞め、飲食店の店長になった。「自分の精神のゆがみを直視しないために、ひたすら飲み続けた」
2度の入院。妻と2人の子は去っていった。断酒して3年。「酒のせいで頭の中は中学生で止まったまま。実年齢と差が開きすぎて苦しい」
半年前から3度、脳梗塞(こうそく)で倒れた。幸い、まひは軽度ですんだ。「生きなさい」と言われたのだろう、と今回、体験を話すことにした、という。「だんだんと顔を上げて生きていきたい。マイペースで歩んでいきたい」
セミナーは先月開かれ、主催したのは「精神保健福祉ネットワーク会議」。2002年に精神障害者と医療者、市が対等に話し合う場として発足した。当事者による公開セミナーは5年前に始まり、これまでに14人が市民を前に人生を語ってきた。
心のクリニック(同市)の中江清員医師は「実名で地元で語るというのは、本当にすごいこと」。ケースワーカーの藁科ひろ子さんは「当事者の大変な歩みを聞くことで、身近な人に精神障害への理解や、助けたい、という気持ちが生まれる」。
会場で聞いていた女性は「私も携帯ゲームにはまったり、買い物に逃げたりする。誰でも小さな依存症がある。2人の正直な言葉は、心に響きました」と話した。