日経BP社、2014年発行。
川端裕人、三島和夫共著。
文筆家(小説家?)の川端裕人氏が、三島和夫Dr.(国立精神・神経医療研究センター部長)を取材してまとめた本です。
睡眠・不眠症に関する最先端の知識がわかりやすく紹介されています。
知らなかった情報が次々と出てきて、勉強になりました。
まず、「体内時計25時間説はウソだった」というもの。
最新の研究によると、事実は24時間10分位であり、民族による差はほとんどないそうです。
それから「“8時間睡眠が理想”もウソ」。
これを信じているために「自分は十分に眠れていない」と悩む人を作ってしまっている事実。
8時間がっつり眠ることができるのは15歳くらいまでで、70歳を過ぎると必要睡眠時間は6時間を下回る。
これは体重あたりのエネルギー消費量が減る(赤ちゃんの1/3!)ので眠ることで消費エネルギーを節約する必要性が減るため。
高齢者は若者と比べると、寝つきはあまり変わらないが、深い睡眠がまず減り、中途覚醒の回数が増え、そして朝の目覚めが早くなる(私自身がこの通りです)。
日本人は世界の平均からすると「眠らない国民」(なんとなく頷けますね)。
いや、社会構造の変化から夜も明るい社会になり「眠れない国民」になってしまった。
日本人の5人に1人が睡眠に問題を抱えている。
現代日本における子どもの睡眠事情も紹介されています。
母親が働いていると子どもの睡眠時間が短くなるという悲しいデータが存在し、寝不足の子どもたちは無理に起きている結果として非常にいらだちが強くなる子がいて、それで見かけ上ADHDや学習障害みたいな状態になる事がある、とも。
「眠れなくても寝床に横になっていればいつかは寝付くし、体も休まる」というのも間違い。
不眠症の人は「寝室恐怖症」に陥っている場合が多く、眠くなるまで別の部屋で過ごすべきである。
ただ、その項で「どうしても眠れなければ、その日は朝まで寝なくていい」とまでいうのは、ちょっと行き過ぎではないかと思うんですが・・・。
等々。
私自身、40歳を過ぎる頃から「不眠症」という言葉がちらつくようになりました。
仕事のストレスがメインだと思っていました(夜間もよく呼び出されるので寝た気がしないうちに朝になる)が、年齢的なものもあるのかな、異常というほどでもないグレーゾーンかな、などとこの本を読んで自分自身のことを振り返りました(^^)。
<メモ・備忘録>
・一般的に睡眠時間が7時間台の人が一番長生きする。
・寝不足・寝過ぎは太る?
→ 睡眠時間が短い人ほど食欲を増すホルモンの分泌が増えると同時に、食欲を抑えるホルモンも低下する。しかし、睡眠時間が長い人も太りやすいというデータがある(なぜかは現時点で不明)。
・睡眠は記憶の固定に積極的な役割を果たす。
・・・私は朝早起きしていろいろ作業をする習慣があるのですが、夜した方が記憶に残りやすいということらしい。う〜ん、夜は疲れていて頭も体も使い物にならないんだけど、どうしたものか・・・(^^;)。
・寝付けないときの対処法
→ 自然の眠気が出てくるまで夜更かしをするか、もしくは、寝付きやすい時間を希望の時刻まで早めるために、光などを使って調節するかのどちらか。
・チェルノブイリ原発事故やスペースシャトルチャレンジャー号の事故といったヒューマンエラーの部分は、それぞれシフトワークや睡眠不足に起因していた。
・10カ国の睡眠時間を比較した報告によると、日本の有職者の睡眠時間は、女性で特に短く7時間33分、フランスの8時間38分にくらべて1時間も短い。
日本以外の9カ国では、男性より女性の方がよく眠っており、日本だけ女性の法が睡眠時間が短い。
・母親の勤務時間が長くなれば長くなるほど、子どもの睡眠時間に影響が出る。母親の就業時間が増えるにつれ、午後10寺以降に眠る子どもの割合が階段状に伸びている。
★ 午後10寺以降に就寝する幼児の割合;
(1980年)→ (2000年)
1歳6ヶ月児: 25% 55%
2歳児: 29% 59%
3歳児: 22% 52%
4歳児: 13% 39%
5-6歳児: 10% 52%
・人間のマスタークロック(親時計)は脳の視交叉上核という部分にある。
ここで自律的、永続的に時計遺伝子の周期をリズミカルに発現している。
・午前中の光は体内時計を朝型に、つまり時刻を早める(早寝早起きにする)効果があって、夕方から深夜の光は逆に夜型にする。
午前中にできるだけ太陽光を浴び、体内時計をリセットすることが大切。屋内の仕事では、昼間なのに室内照明の暗い光しか浴びないことになり、睡眠リズムの調整がうまくいかなくなりがち。
現代生活の生活光の変化が、寝つきが悪いとか、昼間に眠いとか、睡眠習慣が現代社会に追いつかなくて、問題を抱えている人がどんどん増えて来た一因。
★ 光の強さ・・・晴天時の屋外:十数万ルクス、屋内(家庭照明)300〜600ルクス、夜の明るいコンビニ:1500ルクス、夜のパソコン作業:1000ルクス
→ 家庭照明に相当する数百ルクスでも長時間当たれば体内時計に影響が出ることが判明している。
・「体内時計25時間」という誤解
1960年代の洞窟内での実験では人工照明の影響が計算に入っていなかった。夕方から深夜に相当する時間帯に人工照明の光に当たってリズムが後方にずれる効果が増幅されて、周期が25時間くらいに見えていた、というのが事実。
・睡眠相:ノンレム睡眠とレム睡眠と
(ノンレム睡眠)大脳皮質を休めて冷却する睡眠で、霊長類などの高等動物で発達した。
(レム睡眠)より古くからある睡眠で体の休息、エネルギーの節約が主な目的。
・「金縛り」はレム睡眠状態
レム睡眠の時、頭は結構活発で夢を見やすい。しかし、夢の通りに動いたら大変なので、首から下が動かないようにスイッチがオフになっている。
・3時間睡眠で有名なナポレオンは昼寝の名人だった。
・不眠症状=不眠症ではない。昼間の生活が問題なくできれば深刻に考える必要はない。
脳波上、正常な睡眠構造を持っていても、不眠を訴える人たちがいる。「眠れない」と訴える人は成人の40%いるが、その中で治療が必要な人は6〜8%にすぎない。
基礎疾患(うつ病や疼痛性疾患等)のない不眠症を「原発性不眠症」と呼ぶが、「原発性不眠症=不眠恐怖症」である。
・長く眠りすぎると抑うつを誘導、断眠(徹夜)は気分を持ち上げる効果がある。
うつ病の人が不眠気味になるのは、自己治癒的に断眠を自ら生じさせ、抑うつ気分を晴らそうとしているのだ、という説もある。
・シエスタ・昼寝は30分以内にすべし。
それより長い人は認知症のリスクが高くなる。
・「眠れなければ、絶対ベッドにいてはダメ」
10分経っても眠れなかったら、ベッドから出るだけではなくて、寝室から必ず出る必要がある。
出来上がってしまった「寝室=眠れない場所」という条件反射を緩和するためにも、眠くならなければベッド・寝室から出るようにすることが効果的。
・不眠症の認知行動療法
1.眠くなったときだけ寝床に就く。
2.寝床は眠りと性生活のためだけに。他のことを一切やらない。
3.眠気がなければ一旦寝床を離れる。
4.眠れそうになるまで寝床に戻らない。
5.10分経っても入眠できなかったら他の部屋に移る。
6.それでも眠れない時は何度でも上記を繰り返す。
7.平日も休日も必ず毎日同じ時刻に起床する。
8.日中は眠くなっても昼寝をしない。
・乳児の睡眠は多相性
赤ちゃんの時は1、2時間おきに寝たり起きたりしながら20時間も眠っている。だいたい2歳くらいになってくると、昼寝も1回くらいにまとまってくる。就学前になると、その昼寝のニーズも少なくなっていく。
幼児期・未就学児にとって昼寝をするのは、赤ちゃん的な「分散型」の睡眠から大人の睡眠に移行する過程。
・小中学生の睡眠時間(平成22年、27000人の調査):小学校低学年で9時間、中学生になると8時間を割ってきて7.4時間。
不思議なことに、中学生になって昼寝の時間が増えている(授業中に眠っている!)。一生の間で10代後半から30台はじめの頃が、一番夜型になりやすく、寝つきが悪くなる傾向がある。一番まずいのは、部活で汗も流さずに、夜に家庭照明をずっと浴び続けたとき。
・試験勉強の徹夜は記憶という視点からはダメ。
長時間勉強しても、睡眠時間が短くなると、記憶した内容が頭の中でコンソリデート(定着)されていくのに悪影響がある。徐波睡眠(深い睡眠)もレム睡眠もそれぞれ、記憶したものを海馬(記憶を司るとされる脳の部位)に刷り込むのに役立っているので、キチンと長期的記憶を保持しようと思うなら、覚えた直後に睡眠を取らなきゃいけない。
試験前に詰め込み勉強をして徹夜するのはいけない。単に眠気の問題ではなく、記憶した内容の想起力が低下したり、計算の正確さが落ちたりする。
・高齢者の睡眠(中途覚醒・早朝覚醒)と処方箋
高齢者は寝つきは悪くないが、眠りが続かず、中途覚醒・早朝覚醒してしまう。正味、必要な睡眠時間も若い頃に比べると少なくなっている。でも、体は疲れるので早く横になりたい。それで早く寝ると結局、深夜のうちに目覚めて、なが〜い夜を過ごすことになる。
対策は若年者とは真逆と考えるべし。
朝は外光をブロックして室内でおとなしく過ごす。朝日を浴びての散歩は早期覚醒を助長する。夜間には強い光を1時間ほど浴びるとよい。
・認知症患者の睡眠問題
高齢になってくると、睡眠も幼児の頃のようにやや多相性になってくる。認知症でも必要な睡眠時間はほかの高齢者と変わらない。昼寝れば夜起きるのは当然で、その時に睡眠薬を使っても、もともと睡眠がばらついているだけで不眠ではないから効きが悪い。もし昼夜逆転に悩んでいるようだったら、昼間は深寝をさせないように、うとうとしてたら声をかけて起こすというようなことを、デイケアでも自宅でも、手間がかかるけどやっていくしかない。
認知症患者の睡眠問題が悪化していくことが、デイケアではないフルタイムの介護施設入所に至る原因の最大のファクターになる。
・健やかな睡眠のための12の習慣
1.睡眠時間は人それぞれ。日中の眠気で困らなければ十分と考える。
2.刺激物は避け、寝塗る前には自分なりのリラックス法を。
カフェインの効果は4時間以上持続する。カフェインはコーヒーだけではなくお茶にも入っている(玉露はコーヒーの3倍)。
3.床に就くのは眠くなってから。入眠する時間にこだわらない。
4.同じ時刻に毎日起床。
寝不足は蓄積するが、寝だめはできない。
5.光を利用。目覚めたら日光を入れ、夜の照明は控えめに。
6.規則正しい三度の食事、規則的な運動習慣。
7.昼寝をするなら、午後3児までの20〜30分。長い昼寝はかえってぼんやりのもと。
8.眠りが浅いときは睡眠時間を減らし、遅寝・早起きにしてみる。
早寝・早起き・朝ご飯・・・早起きからはじめるべし。
9.激しいイビキ、呼吸停止(睡眠時無呼吸症候群)、足のピクつき(周期性四肢運動障害)やムズムズ感(レストレスレッグス症候群)などは要注意
10.十分眠っても日中の眠気が強いときは専門家に相談
11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠の元
晩酌と寝酒は区別し、最低、眠るまでに4時間のインターバルが必要。お酒は睡眠に関しては「百害あって一利なし」。
12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
<参考>
□ 「宇宙医学に学ぶ快眠の秘密」(JAXA)
□ 「健康づくりのための睡眠指針2014」(厚生労働省健康局)
□ 「睡眠・覚醒リズム表」(日本うつ病学会)
□ 「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン ー出口を見据えた不眠医療マニュアルー」(厚生労働科学研究班、2013年)
川端裕人、三島和夫共著。
文筆家(小説家?)の川端裕人氏が、三島和夫Dr.(国立精神・神経医療研究センター部長)を取材してまとめた本です。
睡眠・不眠症に関する最先端の知識がわかりやすく紹介されています。
知らなかった情報が次々と出てきて、勉強になりました。
まず、「体内時計25時間説はウソだった」というもの。
最新の研究によると、事実は24時間10分位であり、民族による差はほとんどないそうです。
それから「“8時間睡眠が理想”もウソ」。
これを信じているために「自分は十分に眠れていない」と悩む人を作ってしまっている事実。
8時間がっつり眠ることができるのは15歳くらいまでで、70歳を過ぎると必要睡眠時間は6時間を下回る。
これは体重あたりのエネルギー消費量が減る(赤ちゃんの1/3!)ので眠ることで消費エネルギーを節約する必要性が減るため。
高齢者は若者と比べると、寝つきはあまり変わらないが、深い睡眠がまず減り、中途覚醒の回数が増え、そして朝の目覚めが早くなる(私自身がこの通りです)。
日本人は世界の平均からすると「眠らない国民」(なんとなく頷けますね)。
いや、社会構造の変化から夜も明るい社会になり「眠れない国民」になってしまった。
日本人の5人に1人が睡眠に問題を抱えている。
現代日本における子どもの睡眠事情も紹介されています。
母親が働いていると子どもの睡眠時間が短くなるという悲しいデータが存在し、寝不足の子どもたちは無理に起きている結果として非常にいらだちが強くなる子がいて、それで見かけ上ADHDや学習障害みたいな状態になる事がある、とも。
「眠れなくても寝床に横になっていればいつかは寝付くし、体も休まる」というのも間違い。
不眠症の人は「寝室恐怖症」に陥っている場合が多く、眠くなるまで別の部屋で過ごすべきである。
ただ、その項で「どうしても眠れなければ、その日は朝まで寝なくていい」とまでいうのは、ちょっと行き過ぎではないかと思うんですが・・・。
等々。
私自身、40歳を過ぎる頃から「不眠症」という言葉がちらつくようになりました。
仕事のストレスがメインだと思っていました(夜間もよく呼び出されるので寝た気がしないうちに朝になる)が、年齢的なものもあるのかな、異常というほどでもないグレーゾーンかな、などとこの本を読んで自分自身のことを振り返りました(^^)。
<メモ・備忘録>
・一般的に睡眠時間が7時間台の人が一番長生きする。
・寝不足・寝過ぎは太る?
→ 睡眠時間が短い人ほど食欲を増すホルモンの分泌が増えると同時に、食欲を抑えるホルモンも低下する。しかし、睡眠時間が長い人も太りやすいというデータがある(なぜかは現時点で不明)。
・睡眠は記憶の固定に積極的な役割を果たす。
・・・私は朝早起きしていろいろ作業をする習慣があるのですが、夜した方が記憶に残りやすいということらしい。う〜ん、夜は疲れていて頭も体も使い物にならないんだけど、どうしたものか・・・(^^;)。
・寝付けないときの対処法
→ 自然の眠気が出てくるまで夜更かしをするか、もしくは、寝付きやすい時間を希望の時刻まで早めるために、光などを使って調節するかのどちらか。
・チェルノブイリ原発事故やスペースシャトルチャレンジャー号の事故といったヒューマンエラーの部分は、それぞれシフトワークや睡眠不足に起因していた。
・10カ国の睡眠時間を比較した報告によると、日本の有職者の睡眠時間は、女性で特に短く7時間33分、フランスの8時間38分にくらべて1時間も短い。
日本以外の9カ国では、男性より女性の方がよく眠っており、日本だけ女性の法が睡眠時間が短い。
・母親の勤務時間が長くなれば長くなるほど、子どもの睡眠時間に影響が出る。母親の就業時間が増えるにつれ、午後10寺以降に眠る子どもの割合が階段状に伸びている。
★ 午後10寺以降に就寝する幼児の割合;
(1980年)→ (2000年)
1歳6ヶ月児: 25% 55%
2歳児: 29% 59%
3歳児: 22% 52%
4歳児: 13% 39%
5-6歳児: 10% 52%
・人間のマスタークロック(親時計)は脳の視交叉上核という部分にある。
ここで自律的、永続的に時計遺伝子の周期をリズミカルに発現している。
・午前中の光は体内時計を朝型に、つまり時刻を早める(早寝早起きにする)効果があって、夕方から深夜の光は逆に夜型にする。
午前中にできるだけ太陽光を浴び、体内時計をリセットすることが大切。屋内の仕事では、昼間なのに室内照明の暗い光しか浴びないことになり、睡眠リズムの調整がうまくいかなくなりがち。
現代生活の生活光の変化が、寝つきが悪いとか、昼間に眠いとか、睡眠習慣が現代社会に追いつかなくて、問題を抱えている人がどんどん増えて来た一因。
★ 光の強さ・・・晴天時の屋外:十数万ルクス、屋内(家庭照明)300〜600ルクス、夜の明るいコンビニ:1500ルクス、夜のパソコン作業:1000ルクス
→ 家庭照明に相当する数百ルクスでも長時間当たれば体内時計に影響が出ることが判明している。
・「体内時計25時間」という誤解
1960年代の洞窟内での実験では人工照明の影響が計算に入っていなかった。夕方から深夜に相当する時間帯に人工照明の光に当たってリズムが後方にずれる効果が増幅されて、周期が25時間くらいに見えていた、というのが事実。
・睡眠相:ノンレム睡眠とレム睡眠と
(ノンレム睡眠)大脳皮質を休めて冷却する睡眠で、霊長類などの高等動物で発達した。
(レム睡眠)より古くからある睡眠で体の休息、エネルギーの節約が主な目的。
・「金縛り」はレム睡眠状態
レム睡眠の時、頭は結構活発で夢を見やすい。しかし、夢の通りに動いたら大変なので、首から下が動かないようにスイッチがオフになっている。
・3時間睡眠で有名なナポレオンは昼寝の名人だった。
・不眠症状=不眠症ではない。昼間の生活が問題なくできれば深刻に考える必要はない。
脳波上、正常な睡眠構造を持っていても、不眠を訴える人たちがいる。「眠れない」と訴える人は成人の40%いるが、その中で治療が必要な人は6〜8%にすぎない。
基礎疾患(うつ病や疼痛性疾患等)のない不眠症を「原発性不眠症」と呼ぶが、「原発性不眠症=不眠恐怖症」である。
・長く眠りすぎると抑うつを誘導、断眠(徹夜)は気分を持ち上げる効果がある。
うつ病の人が不眠気味になるのは、自己治癒的に断眠を自ら生じさせ、抑うつ気分を晴らそうとしているのだ、という説もある。
・シエスタ・昼寝は30分以内にすべし。
それより長い人は認知症のリスクが高くなる。
・「眠れなければ、絶対ベッドにいてはダメ」
10分経っても眠れなかったら、ベッドから出るだけではなくて、寝室から必ず出る必要がある。
出来上がってしまった「寝室=眠れない場所」という条件反射を緩和するためにも、眠くならなければベッド・寝室から出るようにすることが効果的。
・不眠症の認知行動療法
1.眠くなったときだけ寝床に就く。
2.寝床は眠りと性生活のためだけに。他のことを一切やらない。
3.眠気がなければ一旦寝床を離れる。
4.眠れそうになるまで寝床に戻らない。
5.10分経っても入眠できなかったら他の部屋に移る。
6.それでも眠れない時は何度でも上記を繰り返す。
7.平日も休日も必ず毎日同じ時刻に起床する。
8.日中は眠くなっても昼寝をしない。
・乳児の睡眠は多相性
赤ちゃんの時は1、2時間おきに寝たり起きたりしながら20時間も眠っている。だいたい2歳くらいになってくると、昼寝も1回くらいにまとまってくる。就学前になると、その昼寝のニーズも少なくなっていく。
幼児期・未就学児にとって昼寝をするのは、赤ちゃん的な「分散型」の睡眠から大人の睡眠に移行する過程。
・小中学生の睡眠時間(平成22年、27000人の調査):小学校低学年で9時間、中学生になると8時間を割ってきて7.4時間。
不思議なことに、中学生になって昼寝の時間が増えている(授業中に眠っている!)。一生の間で10代後半から30台はじめの頃が、一番夜型になりやすく、寝つきが悪くなる傾向がある。一番まずいのは、部活で汗も流さずに、夜に家庭照明をずっと浴び続けたとき。
・試験勉強の徹夜は記憶という視点からはダメ。
長時間勉強しても、睡眠時間が短くなると、記憶した内容が頭の中でコンソリデート(定着)されていくのに悪影響がある。徐波睡眠(深い睡眠)もレム睡眠もそれぞれ、記憶したものを海馬(記憶を司るとされる脳の部位)に刷り込むのに役立っているので、キチンと長期的記憶を保持しようと思うなら、覚えた直後に睡眠を取らなきゃいけない。
試験前に詰め込み勉強をして徹夜するのはいけない。単に眠気の問題ではなく、記憶した内容の想起力が低下したり、計算の正確さが落ちたりする。
・高齢者の睡眠(中途覚醒・早朝覚醒)と処方箋
高齢者は寝つきは悪くないが、眠りが続かず、中途覚醒・早朝覚醒してしまう。正味、必要な睡眠時間も若い頃に比べると少なくなっている。でも、体は疲れるので早く横になりたい。それで早く寝ると結局、深夜のうちに目覚めて、なが〜い夜を過ごすことになる。
対策は若年者とは真逆と考えるべし。
朝は外光をブロックして室内でおとなしく過ごす。朝日を浴びての散歩は早期覚醒を助長する。夜間には強い光を1時間ほど浴びるとよい。
・認知症患者の睡眠問題
高齢になってくると、睡眠も幼児の頃のようにやや多相性になってくる。認知症でも必要な睡眠時間はほかの高齢者と変わらない。昼寝れば夜起きるのは当然で、その時に睡眠薬を使っても、もともと睡眠がばらついているだけで不眠ではないから効きが悪い。もし昼夜逆転に悩んでいるようだったら、昼間は深寝をさせないように、うとうとしてたら声をかけて起こすというようなことを、デイケアでも自宅でも、手間がかかるけどやっていくしかない。
認知症患者の睡眠問題が悪化していくことが、デイケアではないフルタイムの介護施設入所に至る原因の最大のファクターになる。
・健やかな睡眠のための12の習慣
1.睡眠時間は人それぞれ。日中の眠気で困らなければ十分と考える。
2.刺激物は避け、寝塗る前には自分なりのリラックス法を。
カフェインの効果は4時間以上持続する。カフェインはコーヒーだけではなくお茶にも入っている(玉露はコーヒーの3倍)。
3.床に就くのは眠くなってから。入眠する時間にこだわらない。
4.同じ時刻に毎日起床。
寝不足は蓄積するが、寝だめはできない。
5.光を利用。目覚めたら日光を入れ、夜の照明は控えめに。
6.規則正しい三度の食事、規則的な運動習慣。
7.昼寝をするなら、午後3児までの20〜30分。長い昼寝はかえってぼんやりのもと。
8.眠りが浅いときは睡眠時間を減らし、遅寝・早起きにしてみる。
早寝・早起き・朝ご飯・・・早起きからはじめるべし。
9.激しいイビキ、呼吸停止(睡眠時無呼吸症候群)、足のピクつき(周期性四肢運動障害)やムズムズ感(レストレスレッグス症候群)などは要注意
10.十分眠っても日中の眠気が強いときは専門家に相談
11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠の元
晩酌と寝酒は区別し、最低、眠るまでに4時間のインターバルが必要。お酒は睡眠に関しては「百害あって一利なし」。
12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
<参考>
□ 「宇宙医学に学ぶ快眠の秘密」(JAXA)
□ 「健康づくりのための睡眠指針2014」(厚生労働省健康局)
□ 「睡眠・覚醒リズム表」(日本うつ病学会)
□ 「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン ー出口を見据えた不眠医療マニュアルー」(厚生労働科学研究班、2013年)