もう一つ、同様の記事が目に留まりました。
専門家からみても、診断が難しいようです。
■ 医師が子どもを「発達障害」と診断する難しさ
榊原 洋一 : 小児科医師・お茶の水女子大学名誉教授 著者フォロー
榊原先生はとくに「過剰診断」を問題視されています。
そしてやはり「検査では診断できない」と断言しています。
発達障害(注意欠陥多動性障害、自閉症スペクトラム障害、学習障害)の診断は、診断基準書(DSM)をもとにした専門家による問診が主で、特異的学習障害を除いて、この検査をすれば診断ができるといったものはありません。血液検査や脳波検査、MRIなどの脳機能画像、さらには知能検査などのさまざまな心理検査をしても、注意欠陥多動性障害や自閉症スペクトラム障害の診断をすることはできないのです。
さらに診断は当てはまる症状を数えて行うため、「いかに多くの正確な情報を集められるか」にかかっていることも指摘しています。
現状、発達障害の診断は医師や専門家による問診が主ですが、その基準書は、アメリカ精神医学会が定期的に発行している「精神疾患の診断と統計マニュアル(DSM)」です。定期的に改訂され、現在は第5版が2012年に発行されています。このマニュアルには、発達障害を含むさまざまな精神疾患の診断基準が書かれています。「統計」という言葉がタイトルに使われているのは、その疾患の特徴的な症状を複数提示し、そのいくつ以上が該当すれば診断してよい、という統計的な基準が示されているからです。
発達障がいの診療をしている医師から、「大切なのはDSM-5を熟読して頭にたたき込むこと」と聞いたことがあります。
弁護士を目指して勉強する人が六法全書を暗記するのと似ているかもしれません。
例えば注意欠陥多動性障害の診断は、DSMに記載されている、不注意に関する9つの行動特徴と多動・衝動性に関する9つの行動特徴のうち、不注意と多動の項目のいずれかで6つ以上が当てはまる場合につけられます。アメリカの医学の教科書を見ると、例えば注意欠陥多動性障害の診断には、本人の学校、家庭、地域等における行動の現在の特徴と、過去の経歴をできるだけ詳しく調べて、診断基準と照らし合わせることと記されています。子どもの行動の特徴を評価するための質問紙(アンケート)も必要に応じて併用することも書かれています。しかし、特異的な検査や心理検査はないとはっきり明記されています。
誤診の原因として、
・医師の理解不足
・専門医と患者の需給バランスが崩れ、診療時間を十分取れない
を挙げています。
1つは、自閉症のスペクトラム障害の行動評価スケール(M─CHATなど)の結果をそのまま診断として捉えるという、チェックリストの意味の理解が不十分であったことでしょう。・・・こうしたチェックリストは有用ですが、そこで自閉症のリスクが高い得点を得たとしても、それが正しい確率は50%前後なのです。チェックリストでハイリスクと判定された場合は、時間をおいて再度チェックすることで、診断の確率が上がることが調査によって明らかになっており、複数回チェックを行うことが推奨されています。
もう1つの可能性は、自閉症スペクトラム障害という診断名にあるのではないか、と考えています。これまでに複数の小児神経科ないしは児童精神科の医師に、私が過剰診断の事例について話をしていた時に、「スペクトラム(連続体)という広がりを示す診断名なので、基準のすべてが揃わなくても診断してしまう傾向があるかもしれない」と自らの診療姿勢について語っていました。スペクトラムという診断名がついていますが、DSMの中には診断に必要な基本症状の数がきちんと書かれており、スペクトラムであるからそれらを満たさなくても診断してよい、といった規定はありません。
発達障がい患者は多く、一般小児科医も診療を担当すべきであるという意見もあります。
しかし、精神科と小児科の間のグレーゾーンでもあり、低くないハードルがあると感じています。
もし私(小児アレルギー科医)が担当するなら、一定の研修と資格試験などを整備していただきたいと思います。