発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

「魂をゆさぶる歌に出会う」(ウェルズ恵子)

2018-06-14 07:06:55 | カウンセリング
 アメリカ黒人文化のルーツを黒人音楽を介して解説した内容の本です。
 その中で、ブルーズの説明を読んでいて驚きました。

 アメリカの黒人達は、200年以上にわたって奴隷として搾取され、むごい扱いを受け、一瞬一瞬を上と暴力におびえながら暮らしてきた。彼らの中に植え付けられた人間に対する不信感や恐怖は、生きていく希望を根こそぎ借りたってしまった。
 ぬぐいきれない不安や、ほんとうに自分を押しつぶしてしまう「いや〜な気持ち」を、彼らをとても苦しめた。頑張って何かをしようという気になれないのである。だいたい、朝、憂鬱すぎて起きることができない。他党としても、足の下に悪魔がいるような気がする、そんながんじがらめの気分。
 ブルーズが生まれた頃の南部の黒人の多くは、今の私たちから見ると「どうやって生き続けていたんだろう」と思うほどの苦難を生きていた。
 でもすごいのは、その苦難を「トラブル君」と呼び、自分の鬱状態を「ブルーズ君」というキャラクターにしてしまったこと。トラブル君やブルーズ君に文句を言ったりして「やれやれ、かなわないなあ」と歌って「ダメ男」の仮面を演じ、深刻な事態をまるで人ごとのように扱っている。「たいへんさ」を自分から取り出して、壁に掛けて、眺めて、話しかけて、茶化して、歌ってしまう。
 もしあなたがいま、とてもゆううつで動けないような気がしていたら、あなたの「うつ君」に「おい、相棒、オレの側をウロウロすんなよ」と話しかけるといい。
 ブルーズの歌い手はいつも不安である。そして歌には、彼の不安を化身したような気味悪い生き物が「ブルーズ君」として現れる。


 驚きました。
 これはまるで、うつ病の精神療法そのものではありませんか!
 ブルーズの歌詞は、ゆううつを客観視し、擬人化して手放すことを歌っているのですね。

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