発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

双極性障害に対する交通事故リスクは抗うつ薬で軽減する?

2018-02-12 05:58:14 | 双極性障害
 ときどき話題になる精神疾患と交通事故の問題。
 意識を失う・判断力がなくなる疾患が一番リスクが高いと思われます。

 双極性障害(=躁うつ病)では意識が保たれるので問題ないはずです。
 関連記事が目にとまりました。

■ 双極性障害患者における道路交通傷害リスクと薬物治療との関連
2018/02/09:ケアネット
 双極性障害患者の道路交通傷害リスクを調査するため、台湾・長庚大学のVincent Chin-Hung Chen氏らは、台湾の全国規模の人口データセットを用いて、非双極性障害患者との比較検討を行った。さらに、双極性障害と道路交通傷害リスクとの関連に対する、リチウム、抗てんかん薬、抗うつ薬、第1世代抗精神病薬、第2世代抗精神病薬の処方で推定される緩和効果についても調査を行った。Journal of affective disorders誌2018年1月15日号の報告。
 16年間の縦断コホート研究の一環として、双極性障害と診断された16歳以上の患者における道路交通傷害リスクについて、年齢、性別を一致させた非双極性障害10サンプルとの比較を行った。ICD-9-CMコード(E800~807、E810~817、E819~830、E840~848)に基づく公的医療保険データベースを用いて、道路交通傷害の発生率を比較した。年齢や薬剤使用などの時間的に変化する共変量の調整には、時間依存性Cox回帰モデルを用いた。年齢、性別、その他の併存疾患、薬剤使用の調整前後のハザード比を算出した。
 主な結果は以下のとおり。

・双極性障害患者3,953例が、一般人口3万9,530例のコントロールと一致した。
・双極性障害患者の道路交通傷害リスクの調整ハザード比は、コントロールと比較して、1.66倍(95%CI:1.40~1.97)の増加が認められた。
道路交通傷害リスクの低さは、女性、高齢者(80歳以上)、都市レベルの最も高い地域の居住者、抗うつ薬の使用との関連が認められた。

 著者らは「本検討で、双極性障害は道路交通傷害リスクの増加と関連することが認められた。しかし、抗うつ薬の使用がリスクの緩和に役立つ可能性がある」としている。


 双極性障害でも、健常人と比較して交通事故のリスクが少し高くなるのですね。
 ただ気になることが1点。
 この疾患に対して抗うつ薬を使用すると“躁転”するため、一般的に使用しないはずですが・・・。
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「不安障害」で適切な治療を受けているのは患者10人中1人に過ぎない

2018-02-04 07:32:37 | 精神科医療
 「不安障害」は一般に世間では「あがり症」や「赤面症」「対人恐怖症」とよばれており、その人の性格(極端な心配性)と捉えられがちで、“治療が必要な病気”として認識されていない傾向があります。
 では、どんな方が治療対象となるのでしょうか?
 単純に「社会生活に支障がある」場合です。
 具体例を「元住吉こころみクリニックHP」から引用;

・立場上避けられないシーンで常に恐怖があって精神的苦痛が大きい
・苦手なシーンに向かうためにお酒の力が必要になっている
・苦手なシーンのことを考えるだけで心身に不調を感じる
・会食を避けるために対人関係に支障がでている
・結婚を望んでいるのに異性との交流の場を避けてしまう

 「治療が必要な患者さんが治療を受けていない」という内容の記事を紹介します;

■ 不安障害:適切な治療を受けているのは患者10人中1人に過ぎない
Univadis Medical News2018.01.26
 治療を受ける患者は高所得国でも3分の1に過ぎないことが新しい数字から示唆される。
 世界保健機関(WHO)が委託した新しい研究から、不安を抱えており、その治療を受けている人は28%以下、「恐らく適切な」治療を受けているのは10%以下であることが分かった。
 21ヵ国51,500人以上を対象とした研究から、対象者の9.8%が不安障害のDSM-IV診断基準を満たすことが分かった。頻度は各国ごとに違っていたが、アフリカ諸国集団では5.3%、欧州諸国コホートでは10.4%であった。治療の必要性を認識していたのはそのうち41.3%に過ぎなかった。不安を他の障害と組み合わせず、単独で検討した場合は、この割合が26.3%に低下した。
 治療を受けた患者は27.6%に過ぎず、「恐らく適切な治療」を受けた患者は10%以下であった。治療を受けた患者は高所得国でも3分の1に過ぎなかった。
 『 Depression and Anxiety 』に結果を発表するように著者らは、結果は不安障害に対する認識と治療を改善する必要性を示唆するものである、と述べている。
 「不安障害に関しては、臨床ガイドラインを守るよう医療提供者に働きかけ、治療の質を改善することが重要です。」と筆頭著者のJordi Alonso氏は述べた。

<原著>
・Alonso J, Liu Z, Evans-Lacko S, Sadikova E, Sampson N, Chatterji S, Abdulmalik J, Aguilar-Gaxiola S, Al-Hamzawi A, Andrade LH, Bruffaerts R, Cardoso G, Cia A, Florescu S, de Girolamo G, Gureje O, Haro JM, He Y, de Jonge P, Karam EG, Kawakami N, Kovess-Masfety V, Lee S, Levinson D, Medina-Mora ME, Navarro-Mateu F, Pennell BE, Piazza M, Posada-Villa J, Ten Have M, Zarkov Z, Kessler RC, Thornicroft G; WHO World Mental Health Survey Collaborators. Treatment gap for anxiety disorders is global: Results of the World Mental Health Surveys in 21 countries. Depress Anxiety. 2018 Jan 22. doi: 10.1002/da.22711. PMID: 29356216.


<参考>
□ 全般性不安障害とは?不安が制御できない症状と年齢ごとの特徴、本人・周囲の対処法は?(LITALICO
日本不安症学会HP
□ 「社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル」(厚生労働省作成
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