世界ランク3位にはアルペシン・ドゥクーニンクのヤスペル・フィリップセンでバイクはCANYONのAEROAD CFRでした。ツールからは新型が投入されています。世界ランク5位のファンデルプールも同様です。エアロロードとしての空力に優れたバイクで、今や世界的に注目されている製品です。「空気の壁を抜ける」とも評されるバイクで、エアロ性能はあのVENGEを超えると迄言われているのです。
平坦で高速巡行した時の伸び、速度維持、限界スピードに達したときの圧が少なく、明らかに他のエアロロードとの違いを感じられるバイクなのだそうです。プロのレース結果もそれを裏受けているようです。フィリップセンが前年の9位から3位へ、ファンデルプールは7位から5位へ世界ランクを上げているのですから。2022年のフィリップセンの世界ランクは22位だったことを考えると凄い成績です。
彼らに共通するのは筋肉質で平坦に強い選手だということでしょう。ファンデルプールは距離の短い登りならこなせてしまうクラシックレーサーですが、長い登りを苦手としています。一方、モビスターチームでも同じバイクを使用しているのですが、こちらはクライマーが多いチームで、近年、良い成績が残せていないのです。チームランクも2022年には11位、2023年は12位、今年は13位と年々下げているのです。エンリク・マスがエースですが、今季はブエルタの総合3位が最高の成績でした。
これは私見になりますが、AEROAD CFRは平坦では圧倒的な速さがある一方で、登りでの優位性が無いバイクなのかもしれないのです。レース志向が強く、より速く走りたいのならAEROAD CFRは魅力的なバイクかもしれませんが、クライマーには優位性が無く、私のようなホビーライダーには乗り心地も気になるところです。ツールではモビスターの一部の選手がAEROAD CFRではなく、軽量のUltimate CFRを使用していたのはそのためでしょう。
縦に大きく扁平させたダウンチューブを見ただけで堅そうだと感じてしまうのは私だけではないでしょう。新型のAEROAD CFRダウンチューブは40.31mmという幅で旧型より3mmほど、私の第4世代のSupersix EVOより7mmも狭いのです。その分、縦幅は太くなっているのが特徴です。
今年のツールで山岳賞を獲得したリチャル・カラパスはcannondaleのSupersix EVOに乗っています。最上位のLAB71ではなくHi-Modだそうですが、重量的にはUCIの規定ギリギリの軽さを持っています。AEROAD CFRの市販車の完成車重量(シマノ デュラエース、DTスイス・ARC 1100 Dicut ホイール装着)が7.07㎏とエアロロードとしては軽い方ですが、Supersix EVO Hi-Modはさらに軽量です。
この辺りがモビスターの選手達を苦しめているのかもしれないです。平坦を走ればAEROAD CFRは最強のロードバイクなのかもしれませんが、登りの軽さや下りでの安定感という面では不安もあるバイクのようです。