それが露わになったのが昨年のブエルタでした。最大のライバルのエヴェネプール対策として、エースの二人を囮にしてクスを逃がすという作戦で、エヴェネプール攻略は成功したのですが、結果、クスがマイヨ・ロホを手にしてしまったのです。個人TTで大きくタイムを失うとみられていたクスが意外な健闘を見せ、マイヨ・ロホを守ってしまったのがチームを悩ませる結果になってしまいました。
総合1位がクス、2位がヴィンゲゴー、3位にログリッジとなり、チームは3人の戦いを一度は認め、ヴィンゲゴーとログリッジがクスに挑みかかったのです。ここまで3大ツールで献身的なアシストを務めて来たクスに対する同情論をメディアが取り上げ、最終的にクスがマイヨ・ロホを手にすることをチームが決断せざるを得なくなってしまうのです。
これに不満を示したのがログリッジでした。勝負の世界なのだから、力がある者が勝つべきだという意見は尤もです。一方、サイクルロードレースでは“サクリファイス”「犠牲」が求められるのもまた事実なのです。1人を勝たせるために7人が犠牲になるのがサイクルロードレースなのです。アシストと呼ばれる選手たちはエースを勝たせることで給料を得ているのですから。
ただ、時にレース中にエース交代が起こることがあります。エースの落車などの怪我や体調不良でセカンドエースがエースを担うことで、後にその選手がエースになって行くことは少なくないのです。ヴィスマのヴィンゲゴーはその代表格でした。アルベルト・コンタドールもそうです。ただ、セップ・クスは根っからのアシストで。誰かをアシストする事が生きがいのような選手なのです。この年も3大グランツール全てに参戦し、ジロではログリッジをツールではヴィンゲゴーを最高の形でアシストして来たのです。
このブエルタで最も戸惑っていたのがクスでした。勝ちに拘りたいログリッジと冷静に達観しているヴィンゲゴーの間に挟まれ、苦しい時を過ごしていたのでしょう。結果はチームが決めたのですが、ログリッジがチームを去ったことに責任を感じていても不思議はないのです。
このブエルタで最も戸惑っていたのがクスでした。勝ちに拘りたいログリッジと冷静に達観しているヴィンゲゴーの間に挟まれ、苦しい時を過ごしていたのでしょう。結果はチームが決めたのですが、ログリッジがチームを去ったことに責任を感じていても不思議はないのです。
ヴィスマは家族のようなチームで本当に結束が固く、綿密な戦略を練ることで知られています。ログリッジはそのチームで8年を過ごし、ヴィンゲゴーやクスもその姿を見て育ってきたことは間違いありません。貪欲なまでに勝ちに拘る選手で落車も多かったのですが、ブエルタを3連覇、そして2023年のジロとグランツールで4度の総合優勝を飾っている選手なのです。そんなチームの柱が抜けたせいなのか、今季のヴィスマは精彩を欠いている印象があります。落車などの不運もあったのでしょうが、ツールではヴィンゲゴーがポガチャルに完敗。オリンピックではエヴェネプールに金メダルを2個も与えてしまっているのですから。
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