震災・・・ですかね。
「取調室の椅子に座って、天井を見つめながら容疑者Cが語り始めた」
俺の場合、一日中家の中に居てゴロゴロしてました。
ああ、掃除くらいはやりましたよ。
カミさんが外にいる間に・・・ああ、普段はカミさんって呼んでます。
いわゆる、よく出来た女房ってやつですよ。
俺がソファーに寝転んでテレビを見てると、
買い物袋抱えたカミさんが、仕事から帰ってくる。
で、夕飯の支度をする。俺はそれを食べる。
食べ終わると片づけて、風呂に入ったり入らなかったり。
で、たいがい寝ちまう。
カミさんは3つか4つか・・・仕事を掛け持ちしてたんで、
帰ってくるのが遅かったんです。で、朝が早い。
会話はほとんどなかったな。
震災のニュースはテレビで見ました。
家が、車が、人が・・・流されていく映像を見ました。
で、考えたんです。
永遠なんてない。
もし、俺が死んだら、こいつはどうするんだろう。
カミさんが先に死ぬ分にはいい。
葬式はしてやれないかもしれないが、
どこかにちゃんと埋葬してやれる。
苦しむようなことがあれば、ずっとそばにいてやれる。
救急車を呼ぶことだってできる。
カミさんが逝っちまった後・・・俺は、のたれ死ねばいい。
カミさんの家族、友人の誰かくらいには連絡もしてやれる。
だが、もし俺が先に死んだら?
カミさんは俺の死体をどうするんだろう。
一人で運び出すなんて無理だ。
死体はやがて腐る。
だいたい、一緒にこの部屋にいるのにも限界がある。
さっさと俺を置いてどこかに行って、新しい人生を始めればいいのに、
カミさんのことだ。ずっとここにいるだろう。
・・・新しい人生を、さっさと始めればよかったのに。
いい女です。
俺から離れようと思って、出頭しました。
愛していたんです。
※ これはただの創造です。
実在の人物、事件とは一切関係ありません。
取材などをした訳でも、根拠があるわけでもありません。
すべて作り話です。