最近初めてイ・スンウォン(이순원)の小説(小中学生向きの「江陵に行く古い道」)を読み(韓国語)、この作家について名前の漢字表記等々の諸情報をちょっと調べてみました。
すると、翻訳書は全然出ていないにもかかわらず、ウィキペディア(→コチラ)には李舜源という漢字表記をはじめ、略歴や代表作品等がずいぶん詳しく記されていました。(一体どんな人が書いてるのでしょうね?)
そして次にこの名前でヒットした意外な記事が<知名度.net>(→コチラ)というサイト中にある「韓国の小説家 のランキング」(→コチラ)。
これによると、李舜源は32位。ちなみに31位は「長雨」の尹興吉(ユン・フンギル)で、33位は「軍艦島」の韓水山(ハン・スサン)。こうした顔ぶれがこの順位だとするとトップ10は?と見てみると・・・。
アララ、1位が林達永(イム・ダリョン)って・・・、一体どういう人?
私ヌルボとしては、黄皙暎(ファン・ソギョン)か孔枝泳(コン・ジヨン)か申京淑(シン・ギョンスク)か、それとも李文烈(イ・ムニョル)あたりかと予測していたのが大外れ。それも知らない作家とはねー。
例によってウィキペディア(→コチラ)を見てみると、林達永は「黒神」等の漫画の原作者なんですと。あーそうですか。で、この「黒神」はTVアニメ化されて2009年「黒神 The Animation」のタイトルでTV朝日等で放映され、初の日米韓同時放送もされたとのことです。(知らんかったなー。ヌルボの数多い盲点の1つ。) この作品の内容等については→コチラの公式サイトにいろいろ。(・・・むむむむむ。)
ヌルボ思うに、いくら韓国人あるいは韓国通の日本人の間で名の知られた作家でも、ふつうの日本人の間ではほとんど知られていません。関心の(極度に)薄い韓国小説よりも、韓国人の原作によるアニメの方が何十倍(100倍以上?)も接する機会が多いということでしょう。したがって、林達永が1位というのもある意味当然なのかもしれません。彼の知名度は6.13%で、2位申京淑の3,67%を大きく引き離しています。(30人に1人が申京淑を知っているのが事実だとすると、意外なほど高いと思います。)
※なお、この<知名度.net>サイトの「日本の小説家のランキング」(→コチラ)を見てみると、①夏目漱石 ②紫式部(!) ③村上春樹 ④司馬遼太郎 ⑤大江健三郎 ⑥太宰治 と(ムチャクチャなりに)ビッグネームが並んでいる次に ⑦西尾維新 という肩透かし的な作家の名前が登場しています。(皆さん、西尾維新を知ってましたか? とくに50歳以上の人。) また漫画の原作者も含めて考えると梶原一騎も入ってるかなと見ると、案の定33位にありました。曽野綾子の1つ上です。
まあ要するに、「そういう」ランキングということです。
さて、と気を取り直して「韓国の小説家 のランキング」に目を戻すと、1~10位の中で林達永以外に知らなかったもう1人の名前が卜鉅一(ポク・コイル)。「京城・昭和六十二年 碑銘を求めて」(1987)という翻訳書が30年前に出ているのか・・・。(なんでこんな高ランクなんだろ?)
まあ、他の8人はほぼ妥当、かどうか、鮮于煇(ソヌ・フィ)の5位はちょっと意外かもしれませんが。
しかし、当然10位内に入ってもよさそうな作家は他にもいるし、李清俊のように故人もOKとなるとあの作家もこの作家も・・・と何人かの名前が思い浮かびます。ということで、11位以下(最後の)139位まで目を通してみました。
個人的に、やや低いかなというのは16位・李文烈(代表作「われらの歪んだ英雄」)と36位・趙廷来(チョ・チョンネ.「太白山脈」)。明らかに低すぎると思うのが45位・朴景利(パク・キョンニ.「土地」)。98位・崔仁勲(チェ・インフン.「広場」)や超ロングせラー「こびとが打ち上げた小さなボール」の137位・趙世熙(チョ・セヒ)もこんな後の方とは。
次に、主にクオンから翻訳作品が出ている現在活躍中の作家に注目してみると・・・。
3位・韓江.(「少年が来る」)は別格というべき高ランクで、29位.朴玟奎(パク・ミンギュ.「カステラ」)と47位・金愛爛(キム・エラン.「どきどき僕の人生」)はこんなとこ、ですか? しかし131位・金衍洙(キム・ヨンス.「世界の果て、彼女」)はなんでこんな低いのかわからず。(しかし、この数字といえども、これだけ何人もの現代の作家が知られるようになったのはクオンの功績です。)
※韓江の父親は52位.韓勝源(ハン・スンウォン)
ところで、この139人中、なんでこの名前がないのだ!と(怒)ほどではないにしても激しく疑問に思ったのが韓国近代小説の草分けともいうべき李光洙(イ・グァンス.「無常」)。波田野節子「李光洙」(中公新書)という良い本も出ているのですけどね。
そして現在活躍中といえば鄭裕静(チョン・ユジョン)。純文学というよりスリラーというか、エンタメ系ですが、「7年の夜」以来ベストセラーを続けて出している女性作家です。
おまけ。一番驚いた小説家名は96位・李垠(イ・ウン)でした。大韓帝国最後の皇太子が小説を書いていたのか?と一瞬思ったりして・・・。実は現役の推理作家で、「美術館の鼠」(2009)という翻訳書が<島田荘司選アジア本格リーグ>シリーズ中の1作として刊行されています。しかし、このランキングの写真は明らかに皇太子李垠殿下なんですけどねー。(笑)
・・・というわけで、マジメに考えればいろいろ問題の多いランキングですが、単純に楽しめて、またそれなりの知識を得たことは収穫でした。
すると、翻訳書は全然出ていないにもかかわらず、ウィキペディア(→コチラ)には李舜源という漢字表記をはじめ、略歴や代表作品等がずいぶん詳しく記されていました。(一体どんな人が書いてるのでしょうね?)
そして次にこの名前でヒットした意外な記事が<知名度.net>(→コチラ)というサイト中にある「韓国の小説家 のランキング」(→コチラ)。
これによると、李舜源は32位。ちなみに31位は「長雨」の尹興吉(ユン・フンギル)で、33位は「軍艦島」の韓水山(ハン・スサン)。こうした顔ぶれがこの順位だとするとトップ10は?と見てみると・・・。
アララ、1位が林達永(イム・ダリョン)って・・・、一体どういう人?
私ヌルボとしては、黄皙暎(ファン・ソギョン)か孔枝泳(コン・ジヨン)か申京淑(シン・ギョンスク)か、それとも李文烈(イ・ムニョル)あたりかと予測していたのが大外れ。それも知らない作家とはねー。
例によってウィキペディア(→コチラ)を見てみると、林達永は「黒神」等の漫画の原作者なんですと。あーそうですか。で、この「黒神」はTVアニメ化されて2009年「黒神 The Animation」のタイトルでTV朝日等で放映され、初の日米韓同時放送もされたとのことです。(知らんかったなー。ヌルボの数多い盲点の1つ。) この作品の内容等については→コチラの公式サイトにいろいろ。(・・・むむむむむ。)
ヌルボ思うに、いくら韓国人あるいは韓国通の日本人の間で名の知られた作家でも、ふつうの日本人の間ではほとんど知られていません。関心の(極度に)薄い韓国小説よりも、韓国人の原作によるアニメの方が何十倍(100倍以上?)も接する機会が多いということでしょう。したがって、林達永が1位というのもある意味当然なのかもしれません。彼の知名度は6.13%で、2位申京淑の3,67%を大きく引き離しています。(30人に1人が申京淑を知っているのが事実だとすると、意外なほど高いと思います。)
※なお、この<知名度.net>サイトの「日本の小説家のランキング」(→コチラ)を見てみると、①夏目漱石 ②紫式部(!) ③村上春樹 ④司馬遼太郎 ⑤大江健三郎 ⑥太宰治 と(ムチャクチャなりに)ビッグネームが並んでいる次に ⑦西尾維新 という肩透かし的な作家の名前が登場しています。(皆さん、西尾維新を知ってましたか? とくに50歳以上の人。) また漫画の原作者も含めて考えると梶原一騎も入ってるかなと見ると、案の定33位にありました。曽野綾子の1つ上です。
まあ要するに、「そういう」ランキングということです。
さて、と気を取り直して「韓国の小説家 のランキング」に目を戻すと、1~10位の中で林達永以外に知らなかったもう1人の名前が卜鉅一(ポク・コイル)。「京城・昭和六十二年 碑銘を求めて」(1987)という翻訳書が30年前に出ているのか・・・。(なんでこんな高ランクなんだろ?)
まあ、他の8人はほぼ妥当、かどうか、鮮于煇(ソヌ・フィ)の5位はちょっと意外かもしれませんが。
しかし、当然10位内に入ってもよさそうな作家は他にもいるし、李清俊のように故人もOKとなるとあの作家もこの作家も・・・と何人かの名前が思い浮かびます。ということで、11位以下(最後の)139位まで目を通してみました。
個人的に、やや低いかなというのは16位・李文烈(代表作「われらの歪んだ英雄」)と36位・趙廷来(チョ・チョンネ.「太白山脈」)。明らかに低すぎると思うのが45位・朴景利(パク・キョンニ.「土地」)。98位・崔仁勲(チェ・インフン.「広場」)や超ロングせラー「こびとが打ち上げた小さなボール」の137位・趙世熙(チョ・セヒ)もこんな後の方とは。
次に、主にクオンから翻訳作品が出ている現在活躍中の作家に注目してみると・・・。
3位・韓江.(「少年が来る」)は別格というべき高ランクで、29位.朴玟奎(パク・ミンギュ.「カステラ」)と47位・金愛爛(キム・エラン.「どきどき僕の人生」)はこんなとこ、ですか? しかし131位・金衍洙(キム・ヨンス.「世界の果て、彼女」)はなんでこんな低いのかわからず。(しかし、この数字といえども、これだけ何人もの現代の作家が知られるようになったのはクオンの功績です。)
※韓江の父親は52位.韓勝源(ハン・スンウォン)
ところで、この139人中、なんでこの名前がないのだ!と(怒)ほどではないにしても激しく疑問に思ったのが韓国近代小説の草分けともいうべき李光洙(イ・グァンス.「無常」)。波田野節子「李光洙」(中公新書)という良い本も出ているのですけどね。
そして現在活躍中といえば鄭裕静(チョン・ユジョン)。純文学というよりスリラーというか、エンタメ系ですが、「7年の夜」以来ベストセラーを続けて出している女性作家です。
おまけ。一番驚いた小説家名は96位・李垠(イ・ウン)でした。大韓帝国最後の皇太子が小説を書いていたのか?と一瞬思ったりして・・・。実は現役の推理作家で、「美術館の鼠」(2009)という翻訳書が<島田荘司選アジア本格リーグ>シリーズ中の1作として刊行されています。しかし、このランキングの写真は明らかに皇太子李垠殿下なんですけどねー。(笑)
・・・というわけで、マジメに考えればいろいろ問題の多いランキングですが、単純に楽しめて、またそれなりの知識を得たことは収穫でした。
この翻訳院の援助もあって、確かに韓国文学の翻訳点数は欧米やアジア中心に着実に増えているようですが(http://library.ltikorea.or.kr/)、日本における韓国文学の翻訳は、ちょこちょこ単発で翻訳書を出す出版社はあるものの、コンスタントに出版しているのは上記記事にもあるクオンさんの孤軍奮闘といったところで(ただし価格が結構高く、個人的には買ってまで読む気にはなかなかなれませんが)、おさみしい状況ですね。
ただ、昨年韓江が「菜食主義者」で韓国人初のブッカー賞を受賞したという宣伝ネタはなぜか書かれていません。韓国紙の日本語版各紙だけでなく<日経ビジネス>や<もっと!コリア>等のサイトにも記事が出てたので、それがこのランキング3位にも関係しているのかなと思いますが。
ウィキペディアの韓国人作家の項目をいくつか見てみると、どれにも脚注で韓国文学翻訳院文人DBとリンクが張られていますが、開いてみるとどれも「Not Found」の表示が出てしまいます。背後にどんな事実が隠されているのでしょうね?
「日本で売れそうな」韓国小説と考えると、日本文学の後追いみたいな、村上春樹の亜流っぽいものではなく、韓国の独自性を発揮した、強い個性を持ったものでなければ、というのが私の見方。そんな観点から、昨年読んだ李起昊(イ・ギホ)の「次男たちの世界史」はおもしろかったです。彼も翻訳書は全然出ていませんが、ウィキペディア(日本)にはやはり彼の項目がありますね。
https://www.ltikorea.or.kr/ebooks/m/pdf/annual/14.pdf
韓国文学翻訳院文人DBとのリンクが切れているのは翻訳院のページがリニューアルされてアドレスが変わったからではないかと思います(まだ旧アドレスのメインページなどは残っていますが)。
韓江のブッカー賞受賞の際の「世界三大文学賞」受賞といった韓国メディアの報道は完全なミスリードというか、誤報と言っても良いもので、彼女が受賞したのは英語で書かれた作品を対象とするマン・ブッカー賞そのもの(この賞は確かにこれまで高い評価を得てきました)ではなく、その派生部門である国際賞で、しかも従来は有名作家の名誉賞的なものだったのが昨年から刷新され、(結果的に)英訳された文学作品を対象とする翻訳賞(かつ新人賞)的な性格が強いと言えると思います(今年度ももうすぐ最終候補が決まり、6月には受賞作が決まりますが、その時点でこの賞の性格もますます明瞭になると思います)。
韓江の「菜食主義者」は決して悪い作品ではないと思いますが、英訳が非常に優れていることと、フェミニズム的文脈で受け入れやすい点が受賞の最大の決め手になったのではないかと個人的には考えています。
私も村上春樹や高橋源一郎などの亜流のような作品は全く読む気がしませんし、ここしばらく韓国人作家の作品をチョコチョコ読んではウンザリさせられることばかりなので、李文烈や黄皙暎レヴェルの作家があらためて出てこない限り、あえて韓国文学を読もうという気にはなかなかなれそうにありません(李起昊の作品は今度読んでみることにしますが)。
むしろアジア文学ということであれば、閻連科や残雪、賈平凹、蘇童などの作家たちを擁する中国文学の方が遙かに魅力的ですし、おそらく今後しばらくはノーベル文学賞のアジア枠は(韓国人作家でも日本人作家でもなく)中国人作家で占められることになるのではないかと推察しています。
韓江のブッカー賞受賞をめぐる昨年の韓国メディアの報道を思い起こしてみると、(ノーベル賞関係報道同様)「国際的に認められたい」願望が無邪気なほどロコツにあらわれてましたね。まあいつものことですけど・・・。
中国人作家に注目というのは全面的に同感です。おもしろさだけをとってみても余華の諸作品はほとんどハズレがないし、閻連科の「年月日」は今のところ今年に入って読んだ小説中ダントツの1位で、高校生等にも強く薦めたい作品です。
今年の李箱文学賞受賞作家は具孝書で、彼の書いた「長崎パパ」という作品はクオンから刊行されている本の中ではなかなか良かったという印象を持っています。李起昊は候補になっていたようです。
※李起昊の短編「バニー」については過去記事で取り上げたことがあります。 →
http://blog.goo.ne.jp/dalpaengi/e/301d365b30fe127fda05a6b4639eb00a