今回から単行本。3回に分けてアップします。今見直してみたら並べ方がいいかげんで、全71冊のうち最初の方の42冊は内外の文学、伝記、ノンフィクション等々ジャンルがかなりいいかげんに混じりあっていることに気づきました。
☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
[単行本] | ||||
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☆ 290 | エンデ | 果てしない物語 | 岩波書店 | 290・291=非常に読みごたえのあるファンタジー。なぜ書店では児童書の棚にしか置いてないのか? 290は装丁も凝っている。高いのだけが(大きな)難点。(2800円!) 292=砲弾の直撃を受けて左右半々になった騎士が一人の女性をめぐって決闘するという荒唐無稽さが楽しい。この「文学のおくりもの」というシリーズには、「たんぽぽのお酒」(ブラッドベリ)などヤング・アダルト向き名作が多い。 293=これぞ泣きます、泣かせます! なぜ早く文庫にしないのだろう? とにかくリクツ抜き、絶対おすすめ。読んでネッ!! 294=アフリカの神話的・呪術的世界。さまざまな魔物が潜む森。不思議な出来事が次々に展開されてゆく。 295=ノアの方舟等々さまざまな物語の宝庫。できれば文語訳で読んでほしい。(美しい日本語の典型。) 296=戦中のハンガリーを生き抜く双子の少年の衝撃的な物語を特異な文体で綴る。続巻・続々巻での意外な展開は驚き。 以下は308まで少年少女向きの売場にある本。 297=日中戦争下の中国を日本人少女の目から描いた、非常に感動的、かつ考えさせられる作品。 298=カリブ海の島国ハイチの独立をめざす闘い。中央志向・欧米志向・メジャー志向では、致命的な見落としがある。 299=「偉大なる道」(岩波)で知られるアメリカの女性作家スメドレーの伝記。翻訳の石垣さんも昭和初期若くして渡米した先進的女性。自伝に「わが愛、わがアメリカ」(ちくま)がある。 300=暴君として有名なネロの実像。彼も弱さをもった人間だった。 301=明治の思想家中江兆民を通して、人の権利や、国家権力との関わりなどについて考える。 302=ハンガリーの作曲家バルトークのピアノ曲や弦楽四重奏曲に十代の私は大大大衝撃を受けた。ナチスの手を逃れて亡命したアメリカで不遇のうちに病死とか。絶句! 303=前野良沢、杉田玄白等、蘭学者たちの労苦や権力の弾圧等を描いたこの本は本来の学問のあり方を追求し、感銘をよぶ。「初めて学問の意味を知った」とはある生徒の感想。 304=第一次世界大戦の捕虜として徳島に収容されたドイツ人たちと地元民の心温まる交流。読んだ人は皆泣いた。乞再刊! 305・306=民間考古学者の情熱に満ちた青春。この<ちくま少年図書館>というシリーズはどれもヒューマンな魅力に溢れる。 307=民間考古学者の元祖(?)、トロイの発掘で知られるシュリーマンの伝記。彼は6週間で新しい言語を習得し、計十余ヵ国語をマスター。方法は読めばわかるが、私には到底無理。 308・309=な、ぜ、か、社会科教科書にない部落差別の実態に愕然とする、と同時に、さまざまな意識の半生を迫られる。309は、被差別部落や在日朝鮮人が多く居住する地域の町医者の家に生まれた役者が体験をもとに差別を論じる。 310=韓国にも昔から<白丁>とよばれる被差別民がいた。原題を基点にした4代にわたるその一族の物語。 311=“加害者”自身が気づかない差別・迫害は学校にもある。“反抗的”で、孤立していた友の死をめぐり悩み、考える少年。 312=308等と相通じる問題を含む、ユダヤ人差別をテーマにした作品。主人公の設定等279(「あの頃はフリードリヒがいた」)と共通する点も多いが、これは19世紀、殺人の疑いをかけられたユダヤ人一家の物語。 313=両親は離婚。で、少年は作家ヘンショーさんに手紙を出す。深刻な問題だがユーモアと余裕が感じられほほえましい。 |
☆ 291 | ル・グイン | ゲド戦記 | 岩波書店 | |
☆ 292 | カルヴィーノ | まっぷたつの子爵 | 晶文社 | |
☆ 293 | キース | アルジャーノンに花束を | 早川書房 | |
294 | チュツオーラ | やし酒飲み | 晶文社 | |
295 | 聖書 | 日本聖書協会等 | ||
296 | クリストフ | 悪童日記 | 早川書房 | |
☆ 297 | 赤木由子 | 二つの国の物語 | 理論社 | |
298 | 乙骨淑子 | 八月の太陽を | 理論社 | |
299 | 石垣綾子 | 愛ある限り | 偕成社 | |
300 | 河津千代 | 運命の人びと | リブリオ出版 | |
301 | なだいなだ | TN君の伝記 | 福音館書店 | |
302 | ひのまどか | バルトーク | リブリオ出版 | |
× 303 | 加藤文三 | 学問の花ひらいて | 新日本出版社 | |
☆× 304 | 棟田博 | 板東捕虜収容所 | 国土社 | |
305 | 藤森栄一 | 心の灯 | 筑摩書房 | |
306 | 楠本政助 | 縄文人の知恵にいどむ | 筑摩書房 | |
307 | ヴィーゼ | 夢を掘りあてた人 | 岩波書店 | |
308 | 小林初枝 | こんな差別が | 筑摩書房 | |
309 | 山城新伍 | 現代・河原乞食考 | 解放出版社 | |
310 | 鄭東柱 | 神の杖 | 解放出版社 | |
311 | コルシュノウ | 誰が君を殺したのか | 岩波書店 | |
312 | フェーアマン | 隣の家の出来事 | 岩波書店 | |
313 | クリアリー | ヘンショーさんへの手紙 | あかね書房 |
「アルジャーノンに花束を」はその後まもなく文庫本になりましたね。 その一方で、とても良い本なのに絶版になってしまった本もたくさんあるのは残念。
最近アマゾンのサイトを見てみたら、<オールタイムベスト小説100>というのがリストアップされたました。(→コチラ。)
この<高校生にすすめる本360冊>にも含まれているのが13作品。比較的に新しいものが多いので、まあこんなものかな?
その小説100の中で、ヌルボが読んだものはちょうど半分くらい。まあそんなものかな?
聖書は「旧約」の「歴史書」の途中で読書意欲が挫け、その後はつまみ食いで、全体の半分くらいしか読んでいませんし(文語訳やラゲ訳も所々参照しましたが、残念ながら基本的には口語訳です。文語訳はラゲ訳などとセットで、今ではキンドルなどで簡単に入手できますが)、エンデもル・グインも積読のままです。「やし酒飲み」は岩波文庫に入ったので読んでみたいと思います。
「悪童日記」は仏語で読み凄い作家が出てきたと思いましたが、邦訳で読んでかなりガックリきました。仏語ネイティヴでないアゴタ・クリストフがかなり年をとってから習得した仏語で書いたため、文体はシンプルでありながら含意に飛んでおり、翻訳(正直あまり上手とは言えません)でその多くが失われてしまったような気がします。
3部作は後に進むにつれ、正直どんどん最初の衝撃度が薄れ、個人的にはこの作家の作品としては「悪童日記」のみが残るだろうという気がします。
「悪童日記」について「特異な文体」と書いているのは具体的にはどういうことか、自分でも思い出せません。
それが作家自身の文体を伝えているのか、それとも翻訳の癖(?)によるものかも、知るべくもありません。
翻訳文学の場合、このあたりはむずかしいところですね。