ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補) [18]

2013-12-20 19:23:14 | 高校生にすすめる本360冊
前回で1998年版の<高校生にすすめる本360冊>は終えましたが、予告通り補遺及び1999~現在までの推薦書リスト(予定では全50冊)を今後3回に分けてアップします。

 今回は、文学・ノンフィクション・教養書関係(つまりはエンタメ系以外)の文庫及び新書17冊です。
 これまでは、品切れ・絶版等の状況は1998年当時のものをそのまま載せましたが、今回以降は現時点での状況です。

          《高校生にすすめる本360冊・追加》 
 1998年の時点ですでに高校生諸君どころか30代くらいの人たちともかなりの<世代の壁>ができていることに気づいていました。それで、1960年代に高校時代を送った世代のひとつの歴史資料のような意味くらいはあるだろうと思いつつこのブログ記事としてアップしたわけです。
 そして今回の増補版。もうほとんど高校生向けというより、単に自分が読んでおもしろかったものを並べただけじゃないか、と言われるかも。それに対しては、・・・うーむ、反論のしようがないゾ・・・
 ☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
     [文庫・新書]  
1カズオ・イシグロわたしを離さないで早川文庫1=この設定は何だ!? 予備知識なく読み始めたら何ページ目で気がつくだろうか? 何と哀しく、深い小説であることか。
2=ただ職務に忠実だった彼女。その職務がユダヤ人収容所の看守。「あなたならどうしましたか?」。ラスト近くの<衝撃>の意味は深い。
3=ダイナミックに変貌する現実を活写したこんなにオモシロイ純文学(?)が中国にある! 女子トイレののぞきがばれてとっちめられた少年はその後・・・。
4=韓国の大ベストセラー。世界各国でも好評。田舎から出てきた老母がソウルの地下鉄で行方不明に。初めて気づく母の存在の大きさ。
5=漱石最後の、というか未完のままで終わった作品。やっぱり漱石は大人の文学だ。私も40歳前に読んでたら投げ出したかも・・・・
6=大正時代に、こんな翔んでる女性がいたとは! そして、彼女を描いた翔んでる作家有島は、その後自殺(心中)してしまった・・・・。
7=ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん。この虚無的な暗さは中也自身のものであると同時に、昭和前期の時代の暗さをも象徴している。
8=死刑について語っている部分をぜひ読んで下さい。死刑賛成という人、いろんなことに想像力をめぐらせてほしい。
9=すごい読書家にして文芸批評家の、痛快な文章論。「趣味は読書。」(ちくま)中の上記の「朗読者」についての評は笑ってしまう。
10=同時通訳に関わるユーモアとウィットにあふれる話の数々。外国人に理解不可能なジョークは「とにかく笑ってください」と頼むとか。
11=暗い時代の新興俳句の担い手たち。「戦争が廊下の奥に立つてゐた」(渡辺白泉.1939)という俳句を初めて見た時にはただ驚愕。
12=副題は「戦火を見つめた俳人たち」。一少女として戦争を体験した著者が、俳人たちが戦争といかに向き合ったかをつぶさに検証する。
13=漫画が好きだった明るい青年竹内浩三はフィリピンで戦死し、遺骨も還らず。彼が書き遺した「骨のうたふ」という詩をぜひ読んで!
14=本居春庭は29歳の時眼病を発症。父の宣長の尽力にもかかわらず結局3年後に失明。しかしその後も国語学の研究を続け、とくに「詞のやちまた」は今も高校で学ぶ用言の活用表の原点ともいうべきもの。そんな彼の伝記を作者自身の青春時代を重ね合せて描く。
15=専門の分子生物学関係の内容も興味深いが、文章の巧みさに魅かれる。理系ということと、文才の有無は関係ナシという好例。
16=「標準語」は自然にできたものではなく、近代国家の成立・成長の過程で作られたもの。そこにはさまざまなせめぎ合いがあった・・・。
17=昔の人が漢文を読む時用いた「角筆」という方法がある。(各自調べて。) そんな細部から漢字圏の広がりと歴史を巨視的に見通す。
18=1998年29歳の若さでネフローゼのため夭折した棋士(将棋のプロ)村山聖(さとし)。森信雄六段との師弟愛にはただ涙・・・。
19=料理家辰巳芳子さんのお母さん。四季折々の食材や料理法等々について随筆風に書いた和風家庭料理の本。「昭和」の香りが漂う。
2シュリンク朗読者新潮文庫
3余華兄弟文春文庫
4申京淑母をお願い集英社文庫
5夏目漱石明暗新潮文庫
6有島武郎或る女新潮文庫
7中原中也中原中也詩集新潮文庫
8辺見庸眼の探索角川文庫
9斎藤美奈子文章読本さん江ちくま文庫
10米原万里不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か新潮文庫
×
11

富沢赤黄男 高屋窓秋 渡辺白泉集朝日文庫
12宇多喜代子ひとたばの手紙から角川文庫
13稲泉連ぼくもいくさに征くのだけれど中公文庫
14足立巻一やちまた朝日文庫
15福岡伸一生物と無生物のあいだ講談社現代新書
16イ・ヨンスク「国語」という思想岩波現代文庫
17金文京漢文と東アジア岩波新書
18大崎善生聖の青春講談社文庫
19辰巳浜子料理歳時記中公文庫


 日本の純文学作品が全然入っていません。
 このところ韓国語の本を読むことが多くなってくるにつれ日本の本の読書量が減ってきたということもありますが、どうも90年代以降は小説に描かれる世界が狭くなり、また作家の想像力も広がりが感じられなくなってきてるようです。阿部和重の「シンセミア」等は考えないでもなかったんですけどね。
 あ、中上健次は入れるべきだったか。私ヌルボが常としている風呂場読書、「鳳仙花」(新潮文庫)のせいで何日も長湯が続いたしなー。
 あっ、それから気になっていた辻原登「韃靼の馬」も未読のまま。早く文庫にならないかな。・・・って、辻原登の本、全然読んでないぞ・・・。

 「中原中也詩集」がなぜ先の「360冊」のリストに入れなかったのかは自分でもわかりません。1970年前後だったか、TBSラジオの夜の番組で大橋巨泉が中也の詩をいくつも音読して紹介していたのを覚えています。

 10~12は戦時下の詩歌関係。いずれこれらについても別枠で詳述していきたいと思ってはいるのですが、いつになることか・・・。

 おもしろい将棋本はいろいろありますが、ルールからしてご存知ない方には全然チンプンカンプンなので「聖の青春」にしました。
 <高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補)[3]>で大内延介「決断するとき」を紹介しましたが、そこで彼(大内)が将棋の魅力にめざめたという(有名な)詰将棋の図を載せるのを忘れていたので、遅ればせながら入れておきます。

       
 ※すぐわからない方。ヒントは(  )手詰です。←範囲指定すると現れます。
 ※それでもわからないという方。第2ヒントは(初手は5二馬)です。

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翻訳書 (前川健一)
2013-12-29 00:33:07
 興味深い回答、ありがとうございます。台湾でも、「こんな本まで翻訳するか?」と驚くような日本の本が翻訳されていましたが、韓国でも同じなんですね。翻訳書が多いということが、知的好奇心の拡大によるものならいいのですが、出版界の企画不足が原因だと困ったことになりますね。
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『打ちのめされるようなすごい本』 (ヌルボ)
2013-12-28 21:21:12
『打ちのめされるようなすごい本』も「テーダナン チェク(大変な本」というタイトルで2007年刊行されています。
抄訳かなと思ったら全680ページ。完訳のようです。読者レビューを見るとほとんど例外なく、といってよいほど好評ですね。日本語の本はかなり翻訳されているとは思いますが、本書に載っている物がどれくらい訳されているかはわかりません。9つほど見てみた読者レビューの中でその点についてふれているものはありませんてでした。
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Unknown (前川健一)
2013-12-28 01:49:52
 米原作品が全部翻訳されているということは、『打ちのめされるようなすごい本』もか。日本語の本の書評まで翻訳されているんですね。読めない本の書書評翻訳に、読者は欲求不満を感じないのでしょうかね。
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米原万里等 (ヌルボ)
2013-12-25 11:10:41
米原万里の「全作品が翻訳され・・・」云々は知りませんでした。
YES24のサイトを見てみたら2006年刊行の「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」(韓国題は「プラハの少女時代」)が最初のようですね。この本と「旅行者の朝食」(韓国題は「美食見聞録」)あたりがとくによく読まれているようです。
読者の感想をいくつか拾い読みしたところ、
①親が共産党で、東欧で暮らしたという著者の実体験
②数多くの興味深いエピソードと、それらについての洞察を、ユーモアを交えて記述していること
③語学関係
・・・といった諸点が読まれている理由のようです。なんのことはない、日本での読まれ方とほとんど同じですね。

中上健次の本を読んだ時、半島というところには一時代前の「気」といったものが立ち込めてている(滞っている)のかなということをなんとなく思いました。男鹿半島・能登半島等々。神奈川県内ではスケールは小さいですが三浦半島。
あっ、朝鮮半島も!(笑)
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高校生にすすめる本360冊[18] (ソウル一市民)
2013-12-21 00:42:06
 今回は(今回も)ヴァラエティに富んでいますね。私は最初の方の数冊しか読んでいません。
 カズオ・イシグロは良かったですね。短編集も悪くありませんでしたが、次の長編作品が待ち遠しいです。
 「明暗」や「或る女」、高校生には厳しいかも知れませんが、いつかは読んで欲しいですね。「明暗」、水村美苗による続篇は個人的に今ひとつでしたので、誰かまた別の続篇を書いてくれないですかね~。これからというところで終ってしまうのが本当に残念です。

 米原万里は韓国でも人気ですね。全作品が翻訳され、それを記念して選集まで出たという報道がありましたね。どうして韓国でそこまで人気があるのかよく分りませんけれども、やはり日本人と同じく外国語に対する関心が強いからでしょうか。

 中上健次、最近も選集が出たり、作品が映画化されたりしてはいるものの、その文学的価値とは裏腹に、どんどん忘れ去られているようなのが残念です。あの詩的な(?)文体を外国語に移すのが容易ではないのか、海外ではほとんど評価されていないのも残念です(仏訳は結構ありますが、決して高い評価を受けているとは言えません)。
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