10月1~2日、グローバルフェスタというイベントに行ってきました。
場所はお台場センタープロムナード。・・・って、どこなんだか私ヌルボはわかりませんでしたが。最寄り駅のりんかい線東京テレポート駅(orゆりかもめ青海駅)も初めてだし、このイベントも初めて。
国内最大級の国際協力のイベントで、毎年NGOやNPOのほか、JICAや大使館など250以上の団体が出展しているとのことなんですが、このイベントの認知度はどれくらいなんすかねー?
実際行ってみると、1日はどんよりとした空模様でとりおり小雨も降るという、行楽には向かない天気。しかし意外なほどの人出。2日は晴れたといっても蒸し暑い一日。しかしその後の情報では両日で来場者は約10万人に上ったとか。いやー、そんな催しが以前から続いていたんですねー。(一昨年までは日比谷公園で開催)
さて、私ヌルボのお目当ては北朝鮮難民救援基金のブース。公式サイト(→コチラ)の出展者紹介のページには「北朝鮮人権侵害の実態を示す、体験者によるイラスト画の展示、日本に定住した元脱北者の体験談、教科書の展示」とあります。
行ってみると、さして広くはない(というより狭い)空間内にいろいろ興味深い展示物がありました。
で、今回はその中で北朝鮮の学校で用いられている教科書について紹介します。
左から小1の数学、中学の英語、小3の自然。一見してわかることは、紙質の悪さ。印刷のレベルも低く、いくら実際に用いられたものにしても、日本人の基準では半世紀以上も前のものといった感じ。多くは(全部?)21世紀に入ってからのものなんですけどね。
★私ヌルボのただし書き・・・・この記事は決して北朝鮮を見下したり、からかったりするような差別的意図で書くものではありません。要は正確な北朝鮮の現実を認識し、それを多くの皆さんと共有するのが目的です。教科書の紙質や印刷のことをすぐ上で書きましたが「これはひどい!」という感想も「日本人だからそう思う」ので、「北朝鮮のような社会で生まれ育った人はそれが標準」です。このような双方のモノサシの大きな差異は、諸製品や技術等のレベルに限らず、一般的な知識や価値観等についても当然あるわけです。かの国の政府や人々と接する場合もそうしたことを念頭に置く必要がある、ということです。
さて教科書の表紙をめくると・・・。
そして表紙をめくると・・・。
左は(上左の)小1数学、右は(上中の)中学英語です。それにしても、このねずみ色の紙、数回消しゴムでこすると穴が空きそうです。
また、このページを見て気づくのは、文章の最初の方に太字の部分があること。(どの教科書も同様です。)
何が書いてあるか、具体的に見てみます。
これは小1数学の冒頭の4行。
偉大なる領導者金正日元帥様は次のようにおっしゃった。
《数学を知らなくては科学技術分野で現れる問題を正しく解き明かすことができません。》
つまり、「金正日」という文字と、彼の「お言葉」の部分が太字になっています。
こちらは中学英語です。
まえがき
偉大なる領導者金正日元帥様は次のようにおっしゃった。
《外国語は理解することに留まるのではなく、活用できるように学習しなければなりません。そうするとなると練習をたくさんしなければならなりません。たくさんの練習を経て、熟練した外国語の知識だけが活用できるのです。》
敬愛する父金正日元帥様が外国語学習をするにあたって下さったお言葉を深く承って、2学年英語教科書は聞いて話すことを主としつつ、読みと作文を適切に取り合わせるという原則で構成した。
これも同様。他の教科書もみな同じ。あ、「金正日元帥様」の前に「敬愛する首領金日成大元帥様」の「お言葉」が入っているものもありましたね。
また、教科書だけでなく、あらゆる分野の書物や、博物館等の施設の説明文にも必ず同じような形式の「お言葉」が冒頭部分に掲げられています。どれも上のような太字で記されているので、ハングルが読めなくても「例のアレだな」とすぐわかります。
記述内容については、ここでは深入りしません。ただ、中学英語の最初の章のページと、高等中学美術の数ページだけ紹介します。
せめて英語くらいは外の世界に開かれた内容を期待したいところですが、それは望むべくもありません。 タイトルからして「偉大な指導者金正日元帥の健康を祈る!」ですから。その下の絵は白頭山で「白頭山秘密キャンプの偉大なる指導者金正日元帥の生地」と記されていますが、「白頭山生まれ」というのは「金正日神話」の1つで、少なくとも外国ではよく知られた「虚構」です。※実は極東地方生まれで、この密営という丸太小屋も1987年に造られたもの。
高等中学校の美術の教科書の第一印象は、印刷が悪いこと。キレイな印刷を求められるはずの美術教科書なのに、他の教科書以下のようにも思えます。人物画のページ(右)の変に赤みがかった色はいくらなんでも原画の色調ではないでしょう。印刷が「悪い」というより「ひどい」レベルです。※ちなみに、描かれている人物は左ページ上が祖国解放戦争の時期の遊撃闘争中に敵に逮捕され死刑に処せられる最後の瞬間まで屈することなく戦った趙玉姫(チョ・オッキ)英雄の闘争を描いた作品。また右ページ上は「将軍様の戦士「柳京洙(リュ・ギョンス)先生様」(部分)。柳京洙は朝鮮戦争開戦時の北朝鮮軍の第105戦車旅団長。他の絵は自画像等です。
美術の教科書の内容面での特色は、日本ではよく知られているヨーロッパの名画が全然ないこと。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ミレーやゴッホ、ピカソ等々。ざっと見たところ、私ヌルボの知っている画家では、朝鮮王朝後期の絵師金弘道(キム・ホンド)の風俗画がページの下の方に小さく載っていたくらいでした。
そしてもう1つの特色は、宣伝画に4ページものページを割いていることです。
宣伝画といっても商品や催し等の宣伝ではありません。章の初めには、宣伝画が大衆に対する宣伝・扇動事業に重要な位置を占めること等が記されています。(上左) その下の、銃剣を高く掲げた4人の絵には青字で大きく「われわれは勝つ!」、そして絵の上には「偉大なる将軍様がいらっしゃれば」と書かれています。
その右のページ(上右)も銃を持った兵士の絵。「党中央を決死擁衛(護衛)する銃・爆弾になろう!」というスローガンが入っています。※「党中央」は金正日とほとんど同義。
その下右の絵だけは作画技術についての説明。これだけ異質な感じです。
さらに宣伝画の中から2つピックアップして紹介します。
左は「米帝を追い出して祖国を統一しよう!」というスローガンが記された絵(部分)。いかにも、という感じです。米軍兵士がひっくり返っていますが、「こうした敵愾心をあおるような教育があっていいのか!」という国際標準的疑問は、この国には遠くの雑音か、それ以下のものでしかなさそうです。
右の絵は、書かれた文字とその背景の意味がわからなければ単に「かわいいウサギの絵」と思ってしまうかもしれません。ところが、赤い大きな字は「より多くのウサギを育てよう!」、そして右上の黄色い字は「学校で家庭で」なのです。この宣伝画が書かれたのは「主体69年(西暦1980年)」ですが、それ以前(1960年代初め?)から北朝鮮では金日成大元帥様の指示で始められたのがウサギ飼育の奨励(というか強制というか・・・)でした。「軍や党の運用資金を補う」のがその目的で、とくに小中学校の子供は夏休みの宿題でウサギの皮3~5枚提出というのがあったりして大変だったようですよ。詳しくは→コチラの記事を参照してください。
以上、6、7冊ほどの教科書をざっと見て、そのうわべと中身について少しだけ書きましたが、それでもこれだけの分量になってしまいました。
教科書に限らず、北朝鮮の文物を直接見たりすることはめったにないでしょうが、そんなことがあった時の参考にしていただければと思います。
場所はお台場センタープロムナード。・・・って、どこなんだか私ヌルボはわかりませんでしたが。最寄り駅のりんかい線東京テレポート駅(orゆりかもめ青海駅)も初めてだし、このイベントも初めて。
国内最大級の国際協力のイベントで、毎年NGOやNPOのほか、JICAや大使館など250以上の団体が出展しているとのことなんですが、このイベントの認知度はどれくらいなんすかねー?
実際行ってみると、1日はどんよりとした空模様でとりおり小雨も降るという、行楽には向かない天気。しかし意外なほどの人出。2日は晴れたといっても蒸し暑い一日。しかしその後の情報では両日で来場者は約10万人に上ったとか。いやー、そんな催しが以前から続いていたんですねー。(一昨年までは日比谷公園で開催)
さて、私ヌルボのお目当ては北朝鮮難民救援基金のブース。公式サイト(→コチラ)の出展者紹介のページには「北朝鮮人権侵害の実態を示す、体験者によるイラスト画の展示、日本に定住した元脱北者の体験談、教科書の展示」とあります。
行ってみると、さして広くはない(というより狭い)空間内にいろいろ興味深い展示物がありました。
で、今回はその中で北朝鮮の学校で用いられている教科書について紹介します。
左から小1の数学、中学の英語、小3の自然。一見してわかることは、紙質の悪さ。印刷のレベルも低く、いくら実際に用いられたものにしても、日本人の基準では半世紀以上も前のものといった感じ。多くは(全部?)21世紀に入ってからのものなんですけどね。
★私ヌルボのただし書き・・・・この記事は決して北朝鮮を見下したり、からかったりするような差別的意図で書くものではありません。要は正確な北朝鮮の現実を認識し、それを多くの皆さんと共有するのが目的です。教科書の紙質や印刷のことをすぐ上で書きましたが「これはひどい!」という感想も「日本人だからそう思う」ので、「北朝鮮のような社会で生まれ育った人はそれが標準」です。このような双方のモノサシの大きな差異は、諸製品や技術等のレベルに限らず、一般的な知識や価値観等についても当然あるわけです。かの国の政府や人々と接する場合もそうしたことを念頭に置く必要がある、ということです。
さて教科書の表紙をめくると・・・。
そして表紙をめくると・・・。
左は(上左の)小1数学、右は(上中の)中学英語です。それにしても、このねずみ色の紙、数回消しゴムでこすると穴が空きそうです。
また、このページを見て気づくのは、文章の最初の方に太字の部分があること。(どの教科書も同様です。)
何が書いてあるか、具体的に見てみます。
これは小1数学の冒頭の4行。
偉大なる領導者金正日元帥様は次のようにおっしゃった。
《数学を知らなくては科学技術分野で現れる問題を正しく解き明かすことができません。》
つまり、「金正日」という文字と、彼の「お言葉」の部分が太字になっています。
こちらは中学英語です。
まえがき
偉大なる領導者金正日元帥様は次のようにおっしゃった。
《外国語は理解することに留まるのではなく、活用できるように学習しなければなりません。そうするとなると練習をたくさんしなければならなりません。たくさんの練習を経て、熟練した外国語の知識だけが活用できるのです。》
敬愛する父金正日元帥様が外国語学習をするにあたって下さったお言葉を深く承って、2学年英語教科書は聞いて話すことを主としつつ、読みと作文を適切に取り合わせるという原則で構成した。
これも同様。他の教科書もみな同じ。あ、「金正日元帥様」の前に「敬愛する首領金日成大元帥様」の「お言葉」が入っているものもありましたね。
また、教科書だけでなく、あらゆる分野の書物や、博物館等の施設の説明文にも必ず同じような形式の「お言葉」が冒頭部分に掲げられています。どれも上のような太字で記されているので、ハングルが読めなくても「例のアレだな」とすぐわかります。
記述内容については、ここでは深入りしません。ただ、中学英語の最初の章のページと、高等中学美術の数ページだけ紹介します。
せめて英語くらいは外の世界に開かれた内容を期待したいところですが、それは望むべくもありません。 タイトルからして「偉大な指導者金正日元帥の健康を祈る!」ですから。その下の絵は白頭山で「白頭山秘密キャンプの偉大なる指導者金正日元帥の生地」と記されていますが、「白頭山生まれ」というのは「金正日神話」の1つで、少なくとも外国ではよく知られた「虚構」です。※実は極東地方生まれで、この密営という丸太小屋も1987年に造られたもの。
高等中学校の美術の教科書の第一印象は、印刷が悪いこと。キレイな印刷を求められるはずの美術教科書なのに、他の教科書以下のようにも思えます。人物画のページ(右)の変に赤みがかった色はいくらなんでも原画の色調ではないでしょう。印刷が「悪い」というより「ひどい」レベルです。※ちなみに、描かれている人物は左ページ上が祖国解放戦争の時期の遊撃闘争中に敵に逮捕され死刑に処せられる最後の瞬間まで屈することなく戦った趙玉姫(チョ・オッキ)英雄の闘争を描いた作品。また右ページ上は「将軍様の戦士「柳京洙(リュ・ギョンス)先生様」(部分)。柳京洙は朝鮮戦争開戦時の北朝鮮軍の第105戦車旅団長。他の絵は自画像等です。
美術の教科書の内容面での特色は、日本ではよく知られているヨーロッパの名画が全然ないこと。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ミレーやゴッホ、ピカソ等々。ざっと見たところ、私ヌルボの知っている画家では、朝鮮王朝後期の絵師金弘道(キム・ホンド)の風俗画がページの下の方に小さく載っていたくらいでした。
そしてもう1つの特色は、宣伝画に4ページものページを割いていることです。
宣伝画といっても商品や催し等の宣伝ではありません。章の初めには、宣伝画が大衆に対する宣伝・扇動事業に重要な位置を占めること等が記されています。(上左) その下の、銃剣を高く掲げた4人の絵には青字で大きく「われわれは勝つ!」、そして絵の上には「偉大なる将軍様がいらっしゃれば」と書かれています。
その右のページ(上右)も銃を持った兵士の絵。「党中央を決死擁衛(護衛)する銃・爆弾になろう!」というスローガンが入っています。※「党中央」は金正日とほとんど同義。
その下右の絵だけは作画技術についての説明。これだけ異質な感じです。
さらに宣伝画の中から2つピックアップして紹介します。
左は「米帝を追い出して祖国を統一しよう!」というスローガンが記された絵(部分)。いかにも、という感じです。米軍兵士がひっくり返っていますが、「こうした敵愾心をあおるような教育があっていいのか!」という国際標準的疑問は、この国には遠くの雑音か、それ以下のものでしかなさそうです。
右の絵は、書かれた文字とその背景の意味がわからなければ単に「かわいいウサギの絵」と思ってしまうかもしれません。ところが、赤い大きな字は「より多くのウサギを育てよう!」、そして右上の黄色い字は「学校で家庭で」なのです。この宣伝画が書かれたのは「主体69年(西暦1980年)」ですが、それ以前(1960年代初め?)から北朝鮮では金日成大元帥様の指示で始められたのがウサギ飼育の奨励(というか強制というか・・・)でした。「軍や党の運用資金を補う」のがその目的で、とくに小中学校の子供は夏休みの宿題でウサギの皮3~5枚提出というのがあったりして大変だったようですよ。詳しくは→コチラの記事を参照してください。
以上、6、7冊ほどの教科書をざっと見て、そのうわべと中身について少しだけ書きましたが、それでもこれだけの分量になってしまいました。
教科書に限らず、北朝鮮の文物を直接見たりすることはめったにないでしょうが、そんなことがあった時の参考にしていただければと思います。
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