前回に続いて補遺及び1999~現在までの推薦書リストのその3です。
当初の予定通り、20回目の今回でいよいよ最後です。
今回は単行本16冊。内容は雑多です。
☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
☆× 35 | 鄭儀 | 神樹 | 朝日新聞社 | 35・36、「西遊記」や「水滸伝」を生んだ中国文学の伝統は脈々と受け継がれている。 35=この20年間に読んだ中でいちばんすごい小説! 中国農村の土俗的世界を描きつつ、著者自身が体験した政治世界の批判にも・・・ 36=変貌著しい現代中国。腐敗した権力者に挑む刑務所の捜査官。冒険小説風の社会批判。書名は「敵は見えないところに潜む」という意味。 37~39は韓国の現代文学。 37=アジア文学おそるべし。この架空の歴史物語(!?)も、李朝に続くべき(?)朝鮮皇帝(?)の視点から近代を批判する。 38=朝鮮半島南端の小鹿島。かつて日本が設けたハンセン病者の隔離療養施設で、院長が主導する「事業」に患者たちの対応は・・・? 39=自伝的小説。70年代末地方から上京して工場で働きながら夜間高校で学んだ彼女は、無断欠席の反省文を読んだ先生の勧めで文学を志した。 40=在日朝鮮人作家の超大作。戦争直後の朝鮮半島の混乱した政情下、李承晩政権により済州島島民が大虐殺された<四・三事件>を描く。 41=戦前の左翼・労働運動に対する弾圧が厳しくなる中で、精神的にも肉体的にも、これほど強靭な詩人がいたんだなあ・・・。 42=明治期以降の戦争文学を幅広く網羅。戦場だけでなく、植民地の状況、引揚げ、脱走兵等々多様な観点から貴重な作品を多数収録。 43=「果てしなき彼方に向ひて手旗うつ万葉集をうち止まぬかも」等で知られる歌人が学生時代や中国での軍隊生活等を綴った自叙伝。 44=「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」(辞世)。河野裕子(かわのゆうこ)はいまわの際まで歌人だった。 45=この傑出した詩人の命を戦争は26歳で奪った。戦地中国で日記に記した詩「雪の夜」は涙なくして読めない。「きけ、わだつみのこえ」にもある。読んで! 46=著者の父親は30年以上前に日本に帰国した<中国残留孤児>。著者は中国語も学び、父の育った中国の村を訪れる。 47=なぜあの国は「あんな」国になったのか? 北朝鮮本の集大成したような本。上巻では金日成伝説、下巻は脱北者の証言を中心に詳述。 48=悪名高い北朝鮮の強制収容所の中でも最悪の「完全統制区域」という地獄で奴隷として23年。奇跡的に脱出した驚くべき証言。 49=よく観察しよく考え、どう声をかけるか? 精神論とは対極的な、コーチを受ける立場を重視した理論はスポーツ以外にも役立つ。 50=教科書や参考書よりず~っと面白くためになる、マンガ版江戸時代の歴史。これはすごい! 教科書なんかメじゃない。 |
× 36 | 張平 | 十面埋伏 | 新風舎 | |
☆× 37 | 李文烈 | 皇帝のために | 講談社 | |
38 | 李清俊 | あなたたちの天国 | みすず書房 | |
39 | 申京淑 | 離れ部屋 | 集英社 | |
40 | 金石範 | 火山島 | 文藝春秋社 | |
41 | 田木繁 | 田木繁詩集 | 現代思潮社 | |
42 | 集英社の全集 <戦争×文学> | 集英社 | ||
× 43 | 近藤芳美 | 近藤芳美集(第8巻) 青春の碑 | 岩波書店 | |
44 | 河野裕子読本 | 角川学芸出版 | ||
× 45 | 田辺利宏 | 夜の春雷 | 未来社 | |
46 | 城戸久枝 | あの戦争から遠く離れて | 情報センター出版局 | |
47 | B.マーティン | 北朝鮮「偉大な愛」の幻 | 青灯社 | |
48 | 申東赫 | 収容所に生まれた僕は愛を知らない | KKベストセラーズ | |
49 | 落合博満 | コーチング | ダイヤモンド社 | |
☆ 50 | みなもと太郎 | 風雲児たち | リイド社 |
実は前々回のリストに後からこっそり余華「兄弟」を追加しておきました。単行本が出てまもなく読んだのですが、その後文庫化したのを失念していました。
今回は中国と韓国の現代小説を何冊も入れました。
もっと注目されてもいいのに、と常々思っているのですが・・・。と言っても、残雪「突囲表演」はツンドクのままだし、文庫化された衛慧「上海ベイビー」も未読です。あ、ノーベル賞作家・莫言も入れるべきだったかな? 「酒国」か「豊乳肥臀」か・・・。
3回続いた続編は、<高校生向き>という看板に自分でも首を傾げるような中身でした。
今回も、自信を持って高校生向きと言えるのは46・48・49・50の4冊くらいかな?
しかし、単行本16冊とは少なすぎ。もっといろいろ、あと20冊くらいはあったような気がしないでもありません。
いずれまたぜひオススメ!という本が貯まってきたら、もしかしたら続編の続編をアップすることがあるかもしれませんが、あるとしても2~3年かそれ以上先(!)になりそうです。
以前紹介されていた「東アジアの現代文学」サイトは私もむかし参考にしていて今回の「神樹」や「皇帝のために」、韓国文学は結構買いあさりましたが、恥ずかしながらこの2冊は未だに積読のままです。
李文烈は映画にもなった「われらの歪んだ英雄」や「若き日の肖像」はなかなか良かったですが、日本では(日本より翻訳の先行した欧米でも似たりよったのようですが)余り訳されていないのが残念です。
という訳で今回は申京淑と城戸久枝の2冊のみでした。城戸久枝の作品はドラマもなかなか良かったです。
「神樹」と「皇帝のために」は近々読んでみたいものですが、今はジョナサン・リテルの大作「慈しみの女神たち」に取り掛かっているところなので、暫くは無理そうです。
数年後(?)の続篇も楽しみにしています!
このシリーズ最初から毎回つきあって下さってありがとうございました。
コメントをいただいていろいろ勉強になったり、自分で考えていなかったことを考える契機になったこともしばしばあり、大変励みになりました。
「慈しみの女神たち」、ですか・・・。よっぽどホゾを固めて取りかからないと読み通せそうもないので今まで敬遠してきました。・・・が、今訳者の一人が菅野昭正先生(←ちょっとだけ面識がある)であることを知って読んでみようという気が起こってきました。
ご愛読ありがとうございました。
「私が読んだ韓国朝鮮書ベスト100冊」というご提案ですが、興味はありますがとても「すぐにもできる」というわけにはいきません。「高校生にすすめる~」にしても過去30年の積み重ねの結果ですし・・・。
また韓国本の場合、とくに政治関係は「左」から「右」までいろんな「色」がついているものが多くて、無条件で薦めたいものものはなかなかないし・・・。
たとえば前川さんの書かれた「旅行記でめぐる世界」のような、本の紹介であると同時に、旅行のありよう等の歴史についても叙述するようなものが書ければよいのですが、とても今の私の知識&能力では無理のようです。
ものになるかどうかは別にして、少しずつメモを蓄積していくところから始めようとは思います。
リクエスト(ご助言? ご期待? )感謝します。
昨年春頃の<アジア雑語林>で連載されていた「日本人の韓国旅行事情史」は大変興味深く通読致しました。
私の知らない書名がぞろぞろで、個々読んでみるといろいろおもしろいだろうとは思いますが・・・。
また、旅行記・ガイドブック史もさることながら、明治以降の朝鮮・韓国旅行史というのもテーマとしておもしろそうです。
しかし、やるとなるとタイヘンな作業になると思います。(前川さんは「ささやかな」調べ事と謙遜されてますが、相当のテマヒマを費やされたことでしょう。)
当ブログですが、私の雑多な(散漫な)興味関心そのままにあの分野この分野と書き散らしてきました。このスタイルを今後も続けるのか、あるいは何らかのテーマを集中的に掘り下げてみるか、それとも身体の動くうちに韓国にでも行って何かやってみるか等々について、ちょっと考えてみるかなー、と思っています。
・・・ということとも併せて、「今後の課題」とさせていただきます。