私は子供の頃から魔女が好きだ。
魔女がどういう存在なのか、詳しくは知らない。
しかしそのミステリアスな余白に惹かれるのだ。
私にとって魔女の定義なんぞはそれほど重要ではない。
「大きな三角帽子をかぶった怪しい女性」という程度の、
簡潔で大雑把なイメージさえ当てはまれば魔女なのだ。
魔法が使えれば尚良しだが、使えなくても構わない。
下手したら特徴的な帽子すらかぶっていないかもしれない。
その場合はどれだけ怪しいかという基準ではかることになるだろう。
現実世界でも何人か出会ったことがある。
追い求めているからか、そういう人がいる場所に引き寄せられるのだ。
そしていつもその出会いはどこか奇妙なのである。
今まで出会った魔女らしき女性の中でも特に印象的だった女性が二人いる。
今日はその内の一人の話を書こうと思う。
あれは3年ほど前、夫の実家に帰省中で夫は旧友に会うというので、
暇つぶしに町をふらついていた夕暮れ時のこと。
その町は私が大学時代を過ごした懐かしい町でもある。
駅の近くに私が4年生の頃研修でお世話になったNPO運営のミニシアターがあり、
ジョン・カーニー監督の新作が上映しているというのでそれを見るつもりだったが、
上映まで1時間ほどあったので向かいのカフェで時間を潰すことにしたのだ。
それは蔦に覆われた怪しいカフェで、以前からその外観が気になっていたので良い機会だった。
中に入るとアンティークの家具や食器が雑然と置かれており、
そこだけ時間が止まっているかのような感覚におちいった。
客もおらず店員も見当たらない。
棚に並べられた洋風な置物にしばらく見入っていると奥から出てきた店員に席を案内された。
例のごとくコーヒーを注文して映画の時間まで本を読んでいた。
その時は取り立てて変わったこともなかったのだが、
お会計の時に店員の横にいた70代くらいのマダムに声をかけられた。
M(マダム)「お店、どうでした?」
T(私)「すごい好きです。置いてあるものが一つ一つかっこいいですね。」
M「あら嬉しい。あなた、この後はどうするの?」
T 「 向かいの映画館で映画を観ます」
M「その後はお暇?」
T 「あ、はい、11時頃までは特に予定はないです」
M「それならご馳走するから、またここにいらっしゃい」
確かこんな感じだったと思う。
そしてアイルランドの映画『シング・ストリート』を観て号泣した後、
また草の生い茂った向かいのカフェに行ったのであった。
女性はカフェのオーナーで普段はフランスでインテリアデザイナーをしていた。
その時はちょうどフランスから帰国してカフェの様子を見に来ていたらしい。
店の家具や雑貨は全て彼女がフランスで選りすぐった本物のアンティークらしく、店内の雰囲気にも頷けた。
年上の女性を推し量るのは失礼だが、彼女は化粧は濃かったが綺麗で知的な人だった。
話も面白くてこんな小娘も共感できるような俗っぽい話も気さくにしてくれた。
約束通り彼女はお酒やおつまみを気前よく振舞ってくれ話は大いに盛り上がり、私は言い難い充足感に満たされた。
なぜ彼女が私に声をかけてくれたのかはわからないが、その夜は忘れ得ぬ思い出となったのだ。
魔女なんて言ったら怒られそうだけど、そのカフェは魔女の家そのものという感じだった。
猫足のついた本物のバスタブを観たのはそれが初めてだったと思う。
きっとお洒落で気さくで明るい魔女が住んでいるのだろう。
連絡先も交換したのにそれ以来そのカフェには行けていない。
近々帰る時はまた寄ってみよう。
最近魔女の絵ばかり描いているので載せておく。
「魔女の作業机」
「魔女の朝」
魔女がどういう存在なのか、詳しくは知らない。
しかしそのミステリアスな余白に惹かれるのだ。
私にとって魔女の定義なんぞはそれほど重要ではない。
「大きな三角帽子をかぶった怪しい女性」という程度の、
簡潔で大雑把なイメージさえ当てはまれば魔女なのだ。
魔法が使えれば尚良しだが、使えなくても構わない。
下手したら特徴的な帽子すらかぶっていないかもしれない。
その場合はどれだけ怪しいかという基準ではかることになるだろう。
現実世界でも何人か出会ったことがある。
追い求めているからか、そういう人がいる場所に引き寄せられるのだ。
そしていつもその出会いはどこか奇妙なのである。
今まで出会った魔女らしき女性の中でも特に印象的だった女性が二人いる。
今日はその内の一人の話を書こうと思う。
あれは3年ほど前、夫の実家に帰省中で夫は旧友に会うというので、
暇つぶしに町をふらついていた夕暮れ時のこと。
その町は私が大学時代を過ごした懐かしい町でもある。
駅の近くに私が4年生の頃研修でお世話になったNPO運営のミニシアターがあり、
ジョン・カーニー監督の新作が上映しているというのでそれを見るつもりだったが、
上映まで1時間ほどあったので向かいのカフェで時間を潰すことにしたのだ。
それは蔦に覆われた怪しいカフェで、以前からその外観が気になっていたので良い機会だった。
中に入るとアンティークの家具や食器が雑然と置かれており、
そこだけ時間が止まっているかのような感覚におちいった。
客もおらず店員も見当たらない。
棚に並べられた洋風な置物にしばらく見入っていると奥から出てきた店員に席を案内された。
例のごとくコーヒーを注文して映画の時間まで本を読んでいた。
その時は取り立てて変わったこともなかったのだが、
お会計の時に店員の横にいた70代くらいのマダムに声をかけられた。
M(マダム)「お店、どうでした?」
T(私)「すごい好きです。置いてあるものが一つ一つかっこいいですね。」
M「あら嬉しい。あなた、この後はどうするの?」
T 「 向かいの映画館で映画を観ます」
M「その後はお暇?」
T 「あ、はい、11時頃までは特に予定はないです」
M「それならご馳走するから、またここにいらっしゃい」
確かこんな感じだったと思う。
そしてアイルランドの映画『シング・ストリート』を観て号泣した後、
また草の生い茂った向かいのカフェに行ったのであった。
女性はカフェのオーナーで普段はフランスでインテリアデザイナーをしていた。
その時はちょうどフランスから帰国してカフェの様子を見に来ていたらしい。
店の家具や雑貨は全て彼女がフランスで選りすぐった本物のアンティークらしく、店内の雰囲気にも頷けた。
年上の女性を推し量るのは失礼だが、彼女は化粧は濃かったが綺麗で知的な人だった。
話も面白くてこんな小娘も共感できるような俗っぽい話も気さくにしてくれた。
約束通り彼女はお酒やおつまみを気前よく振舞ってくれ話は大いに盛り上がり、私は言い難い充足感に満たされた。
なぜ彼女が私に声をかけてくれたのかはわからないが、その夜は忘れ得ぬ思い出となったのだ。
魔女なんて言ったら怒られそうだけど、そのカフェは魔女の家そのものという感じだった。
猫足のついた本物のバスタブを観たのはそれが初めてだったと思う。
きっとお洒落で気さくで明るい魔女が住んでいるのだろう。
連絡先も交換したのにそれ以来そのカフェには行けていない。
近々帰る時はまた寄ってみよう。
最近魔女の絵ばかり描いているので載せておく。
「魔女の作業机」
「魔女の朝」