かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の歌一首鑑賞 229

2022-10-15 13:56:07 | 短歌の鑑賞
     ブログ版 清見糺の短歌鑑賞    
                       鎌倉なぎさの会  鹿取 未放


229 はしきやしわがみどりごは死に至る病にとおく歩きはじめたり
           2003年6月作

 前年6月に生まれた孫を歌っている。お誕生前後に歩きはじめたわけである。「はしきやし」は「いとしい」の意。ところで、キルケゴールの「死に至る病」は、厖大な著作を著して追求した難しい概念の語である。だから一言では説明できないが、煎じ詰めると神や信仰から見放された奥深い苦悩の状態を「絶望」つまり「死に至る病」とよんでいる。しかし、作者はしばしば「死に至る病」をキルケゴールとは全く違う文脈、つまり「死が必然の病」という意味で使用している。この歌では癌という「死に至る病」にかかった自分と歩きはじめたばかりの孫とを対比している。
 ちなみに、作者の父親は六十歳で事故死したが、その折、孫(作者の最初の子)はたったの一ヶ月であったという。

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