かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の166

2019-05-08 19:44:41 | 短歌の鑑賞
    渡辺松男研究2の23(2019年4月28日実施)
     Ⅲ【交通論】『泡宇宙の蛙』(1999年)P109~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


166 鳥追いつつ少年われは裏妙義にて坂口に遭いし錯覚あり

      (レポート)
 一九七二年の浅間山荘事件のあと、連合赤軍派が軍事特訓をしていた山岳ベースから、つぎつぎと仲間のリンチによって処刑された男性八人、女性四人の遺体が発見された。この山岳ベースのあった地が群馬県の榛名山や迦葉山や、一首に詠まれている妙義山だった。坂口弘は一九四六年生まれ、作者は一九五五年生まれ。事件当時は少年だった作者が、鳥を追いつつ裏妙義へ入って行ったとき坂口弘に遭ったような気がした、そんな実感を抱かせるほど少年に戦慄を与えた事件だったのだ。 


      (当日意見)
★最初は純粋に社会改革を目指したかもしれないけど、最後は男女の問題でガタガタになった、お
 ぞましい事件。(A・K)
★事件発覚前、坂口達が山岳アジトに潜んで仲間の総括を行っていたのは1971年から197 
 2年頃だから、松男さん、高校生くらいですね。坂口達は山岳アジトを点々としていますが、松
 男さんが鳥を追っかけて走り回っていた裏妙義もそんなアジトの近くだった。総括なんっておぞ
 ましいことが行われていると夢にも知らなかった頃だけど、だからもちろん坂口の顔も知らない
 んだけど、すれ違っていたという錯覚がある。(鹿取)
★裏妙義で会ったということは。坂口に対してはどういう感情なんでしょう?(A・K)
★憧れなのか、恐ろしさなのかどっちでしょうね。山岳アジトにこもった頃はもう純粋な思想は崩
 れていたのかなあ。山を歩いていれば何人もの人に行き会うけど、そこで坂口に遭遇したという
 錯覚が自分にはある。この歌だけ見ると恐ろしさではないような気もする。でも、この一連、大
 妣という血なまぐさい争いから始まって展開していくのでどうなんでしょうね。(鹿取)
★テレビで連日報道していましたから、こういう錯覚をもたれたんじゃないですか。(T・S)



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