渡辺松男研究2の10(2018年4月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
【邑】P50~
参加者:泉真帆、K・O、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取未放
70 風ひかる関東地図にみずいろの巨木坂東太郎がそよぐ
(レポート)
おおらかな心躍りをもって自然を詠んだ連「邑」八首。その冒頭の一首であるこの歌は、これから始まる物語を鳥瞰し爽やかだ。坂東太郎は利根川の異称だが、関東地図をみているとこの利根川が水色の巨大な樹木に見えたという。初句「風光る」が結句まで響きわたり、巨木の葉が風にそよぐさまを詠いつつ、木の葉の一枚一枚のように風にきらめいている川瀬を悠々とした抒情で楽しませてくれる。巨き木ではなく「巨木」と漢語を使ったことで一首は引き締められ、坂東太郎の堂々たる姿が立上がった。
(真帆)
(当日発言)
★地図という二次元のものを見ていて、坂東太郎がいきよいよく飛び出してくる。「みずいろ」が
ひらがなに開かれているのも行き届いた配慮だ。(K・O)
★巨木に例えられた坂東太郎はまさに生命感あふれる若いおのこのようですね。とても壮快な一
首。(鹿取)
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