かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 92

2022-06-25 13:48:49 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の13(2018年7月実施)
    【すこし哲学】『泡宇宙の蛙』(1999年)P65~
     参加者:K・O、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放


92 紙やぶる音びっとして冬ふかし配偶者すこし哲学をする

      (当日意見)
★これ、上の句で俳句になりますね。この人俳句もやってらっしゃるから。「冬ふかし」っ
 て季語かしら?感覚として文句なく分かる歌ですね。冬の澄んだ空気の中で、配偶者がふ
 っと何かを思った、それを「すこし哲学をする」と表現した。この歌はだからあまりやや
 こしいことを言わない方がよいと思う。すーと入ってくる。渡辺さんの歌と知らなくても
 読める歌。(A・K)
★理屈を言ってはいけないのでしょうが、これは誰が紙を破っているのでしょう?
    (鹿取)
★そういうことは聞いちゃいけないんです、きっと(笑)どこかから聞こえてくるんです。
    (A・K)
★そうですね、子どもが破ったりしたらこの世界が壊れてしまいますね。配偶者でも〈わ
 れ〉でもまずいんでしょうね。(鹿取)
★どこかから紙を破る音がして、ああ冬が深いんだなあと思ったとたん、今自分は実存して
 いるってことじゃないかなあ。そういうことってありますよね。それで哲学をするに結び
 ついた。(A・K)
★それって、充分ややこしいことのような(笑)(鹿取)
★これが「ぴっと」だったら非凡な感じがある。「びっと」だとかわいらしい配偶者のスケ
 ッチのようでいい感じ。(K・O)


     (後日意見)(鹿取)
 「冬深し」は「冬の真っ盛り。寒さも絶頂期で、自然も人の暮らしもすっかり冬一色である」と「合本 俳句歳時記 第一版」には出ている。
  冬深し藪へ入り込む川の砂  大峯あきら     


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