かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 364 中欧①

2023-10-10 10:37:52 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 馬場あき子の外国詠50(2012年3月実施)
   【中欧を行く 秋天】『世紀』(2001年刊)91頁
   参加者:N・I、K・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:崎尾廣子 司会とまとめ:鹿取未放
   

364 いまの地球救ひうる一人缺けてゐる英雄広場の酸性の雨

      (当日発言)
★なぜ一人なのか?一人だけなのか?(T・H)
★T・Hさんの疑問はもっともで、期待する英雄は一人だけでなくたくさんいてほしい
 ですよね。でもまあ、ここは修辞です。たとえば「いまの地球救ひうるあまた缺け
 てゐる」と言ったら歌に ならないでしょう。(鹿取)
★作者はこの旅行の前に『プラハの春』を読んで行ったそうだ。十四体以外に入るべ
 き人がいるはずなのに入っていないと言っている。ハンガリー革命の英雄の一人か?
   (藤本)
★もし藤本さんのいうようにかつてのハンガリー革命の英雄の一人が欠けているという
 ことなら 「いまの地球」という表現にはならないでしょう。また、『プラハの春』は
 1956年の事件を題材にしているので、ハンガリー革命の英雄とは結びつかないと
 思います。(鹿取)
 

      (まとめ)(2012年)
 酸性の雨の降るうすら寒い英雄広場に立って、今の地球を救う一人が存在しないことを嘆いている。ここには十四体のかつての英雄が顕彰されているが、今現在の混沌とした世界を救う人物が存在しないという辛辣な歌。ちなみに英雄像十四体の内、最後の像は一九四八年にハンガリー革命一〇〇年を記念して入れ替えられたそうだ。その入れ替えられた十四体めが、ハンガリー革命の指導者で亡命しイタリアで客死したコッシュートである。入れ替えられる前は、英雄広場建設当時のハプスブルク皇帝フランツ・ヨーゼフの像であった。(当時ハンガリーは、ハプスブルクとオーストリアとの二重帝国の時代だった。)
 この歌が歌われてから20年ほどが経過した現在、更に世界は昏迷を深め、今の地球を救う一人が存在しない感は深くなる一方だ。(鹿取)



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