【零下】
毛羽だった毛布を宿の寝台に広げる。
今宵出航する金星号に乗る人と共に
零下の夜を忍んだ毛布だった。
船の出る時刻。
毛布を身体に巻き付け
窓を開ける。
星の見えない漆黒の宙。
ひと筋の光の尾が遠い宙を横切った。
最後の会話が思い出せず
言葉を交わしたのかさえ思い出せず。
冷気が布を貫き。
flake89『零下』
毛羽だった毛布を宿の寝台に広げる。
今宵出航する金星号に乗る人と共に
零下の夜を忍んだ毛布だった。
船の出る時刻。
毛布を身体に巻き付け
窓を開ける。
星の見えない漆黒の宙。
ひと筋の光の尾が遠い宙を横切った。
最後の会話が思い出せず
言葉を交わしたのかさえ思い出せず。
冷気が布を貫き。
flake89『零下』