地震リスク delphis manta blue

身近な地震リスク 減災を目指して

<復興を願い 2011.3.11東日本大震災>
<未曾有の巨大災害 記録>

地震被災者の再建支援

2009-09-05 | 地震リスク

政府は地震、水害等の自然災害により被災した人々を救うため被災者生活再建支援制度を設けている。自然災害により住宅が全壊した世帯には、最大で300万円が支給される内容だ。

この制度は民主・自民の合意により平成19年に大幅に改正され現行の制度となったが、これまで37の災害に対し17,240世帯、221億円を支給した。1災害の最大支給額は、平成16年新潟県中越地震で5,207世帯、73億円の実績となっている。

今後発生が懸念される首都直下地震をはじめ巨大地震に対しては大きな問題を抱えている。それが財源問題だ。現在の仕組みは、この制度を運営する被災者生活再建支援法人への全国都道府県からの拠出金およびその運用益と国からの補助金(支給額の半額を補助)が支援金支給の原資となっている。しかし、現在までのところその原資はわずか540億円(当初設立時の基金は600億円)しかなく、巨大地震では被災者へ十分に支給されない可能性がある。

想定される首都直下地震では、最悪のケースである東京湾北部地震(M7.3)が発生した場合、住宅・オフィスの建物への被害額は51.4兆円、家財への被害が3.8兆円にも上り、被災者生活再建支援制度が破綻してしまう可能性がある。

支援法人を実質運営している財団法人都道府県会館の公開している資料によれば、540億円の原資を地方債450億円、定期預金50億円、外債30億円で運用しており、平成20年度の収支は収入合計29億円、支出43億円で13億円のマイナスと資産の積み増しには至っていない実態だ。収入の殆どが災害が起これば国が半分補助金を支給する仕組みであることから、支給がなければ運用収益のわずか7.7億円が収入となるのみだ。

近い将来の大問題に発展しないよう早急に制度自体を改善しなければならない。民主党政権に抜本的な防災政策の転換を期待したい。

これまで国は私有財産への公費の投入はご法度の立場であったため、事前の耐震化政策、事後の救済制度が不完全なものであった。その結果、事前の住宅の耐震化が一向に進んでおらず、新潟県中越地震をはじめ耐震化されていない建物の多くが倒壊した。救済策も住宅が再建できない額の支給となり生活再建は長期間に亘った。

被害額を大幅に減少させる国の財源を使った事前の住宅の耐震化、耐火化を推進する政策が必要だ。耐震化されていない建物はその所有者だけの問題ではなく、地域の被害拡大につながる可能性がある。耐震化されていない建物を放っておくと火災延焼、避難の障害となり耐震化された住宅まで巻き込んで被害が拡大する可能性がある。

全建物の耐震化が完了すれば、大幅に被害額が減少するはずだ。そうすることにより大破・半壊ではなく一部損壊等の被害で済めば、早期の生活再建・復興が可能となろう。

民主党政権が構想する危機管理庁創設には賛成だ。地震を含む自然災害対策について、災害に負けないまちづくり、その技術、研究、経済、産業、財源等の問題すべてを検討する世界初の行政機関となるような組織としてほしい。

<内閣府 被災者生活再建支援制度に係る支援金の支給について>

http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/090731sienkin.pdf

<内閣府 被災者生活再建支援制度の概要>

http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/080818gaiyou.pdf

<財団法人都道府県会館 財産目録>

http://www.tkai.jp/pdf/pdf/08.pdf


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする