2019年に発売された「Zen2」アーキテクチャを採用するAMDのRyzenシリーズは、これまでの状況を大きく変えるゲームチェンジャーとなった。自作パソコンやホワイトボックスパソコンの分野では、今までのIntelの優勢を覆してシェアを逆転する原動力となっている。
ノートパソコンの分野でもAMDの躍進はめざましい。大手メーカーでもRyzenシリーズを搭載するモデルを多数ラインナップするようになり、売り上げランキングサイトの上位にRyzen搭載モデルが食い込むのも、めずらしい状況ではなくなった。
マウスコンピューターが11月20日に発売した「mouse B5-R5」(税別7万9,800円~)も、こうした最新のRyzen 5 4500Uを搭載するA4ノートパソコンだ。今回はこの強力なCPUを搭載するノートパソコンの使い勝手や、気になる性能を細かくチェックしていこう。
BTOで必要に応じて性能を強化できる
mouse B5-R5が搭載するRyzen 5 4500Uは、前述のZen2アーキテクチャを採用するCPUコアと、同じくAMDのグラフィックスコアを組み合わせたもので、AMDでは「APU」と呼んでいる。RyzenシリーズのAPUとしては最新の3世代目にあたり、CPU部は6コア6スレッドに対応する。
【表1】mouse B5-R5のスペック |
OS |
Windows 10 Pro 64bit |
CPU |
Ryzen 5 4500U(2.3GHz) |
メモリ |
DDR4-2666 SDRAM 8GB(空きスロット×1) |
ストレージ |
SATA SSD 256GB |
ディスプレイ |
15.6型フルHD(非光沢) |
解像度 |
1,920×1,080ドット |
通信 |
Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス |
USB 3.1(Type-C)、USB 3.0、USB 2.0×2、HDMI、Gigabit Ethernet、ステレオスピーカー、デュアルアレイマイク、ヘッドフォン/マイク |
カメラ |
100万画素 |
バッテリ駆動時間 |
約8.5時間 |
本体サイズ |
360.4×239.3×19.9mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 |
約1.62kg |
税別直販価格 |
7万9,800円(Officeなし) 9万9,800円(Office Personal 2019つき) |
基本構成のメモリは8GB、ストレージは256GBのSATA SSD、無線LANはWi-Fi 6に対応する。またBTOメニューに対応しており、ユーザーの好みに合わせてカスタマイズしたモデルを購入できる。たとえばメモリを8GB+8GB(合計16GB)のデュアルチャネル構成にすると、各種アプリの応答性が向上し、グラフィックス性能も若干アップする。
またSSDをPCI Express接続のモデルに交換すれば、Windows 10やアプリの起動、日常的な操作に対する応答性が向上する。システムドライブとして利用するSSD用のM.2スロットのほか、2.5インチベイを搭載しているので、大容量のデータドライブを追加して使い勝手を高めるのもオススメだ。
ネットワーク機能としては、このサイズのノートパソコンとしてはめずらしくLTE対応のモバイルネットワーク通信モジュールも追加できる。ドコモやKDDI、ソフトバンクと大手携帯電話会社の通信網に対応しており、手持ちのSIMカードを挿すだけでインターネット接続が行なえる。
15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)液晶を搭載したスタンダードなノートパソコンながら、重さは1.62kg。このサイズの液晶パネルを搭載するモデルとしては軽量だ。狭額縁のデザインで幅は約360mm、奥行きは約240mm、厚みも20mmを切っていることもあり、一般的なビジネスバッグにも余裕を持って収納できる。
大きめのテーブルがあるカフェや出張先のホテルなど、ある程度ゆったりとした空間を確保できる場所なら、モバイルノートパソコンとして利用してもよいだろう。ただ、12~14型の一般的なモバイルノートパソコンと比べると底面積はかなり大きめなので、当然ながら新幹線のテーブルなどではやや使いにくい。
シンプルで美しいデザイン、キータッチは軟らかめ
天板は、つや消しのシルバーを基調とした美しいデザインで、マウスコンピューターのトレードマークでもあるチーズのマークが薄く入っている。シンプルで飽きの来ないデザインも相まって、全体的に高級感がある。少なくともこれを7万9,800円(税別)のノートパソコンだと思う人は少ないだろう。
キーボード面は同じくつや消しシルバーのパームレスト部分に、ブラックのキーボードを組み合わせたツートンカラーだ。金属製の天板とは手触りや質感が若干違うので、こちらは樹脂製だろう。とは言えつや消しシルバーの質感は高く、安っぽさは感じられない。
右端にはテンキーがあり、メインキーとはちょっとだけ隙間が空いている。メインキーとテンキーがぴったりくっついたタイプと比べると数字キーや記号キーの視認性が高いので、個人的にはこうしたタイプのほうが好みだ。
キーはタッチは軟らかめで、ストローク感はやや深めなタイプ。指先を軽く当てていくだけで軽快にタイプできる。ただタッチが悪いわけではないが、高級なノートパソコンのような指先に吸いつくような感じはなく、この辺は価格なりといったところだろうか。
タッチパッドの幅は実測値で122mm、奥行きは75mmとかなり広い。独立したボタンは装備せず、下部の領域をマウスボタンとして利用するタイプだが、この領域もカーソル操作に利用できる。マルチタッチに対応し感度も良好で、2本指を使ったスクロール操作などもじつにスムーズだ。
左側面のインターフェイスは2基のUSB 2.0ポートと有線LANポート、microSDカードスロット、さらにWAN対応モデルならSIMカードスロットを装備している。マウスなど高速性が必要ない周辺機器は、こちらのUSBポートを使って利用するとよいだろう。
右側面には充電端子やHDMI、USB 3.0ポート、そしてType-CのUSB 3.1ポートを装備。またType-Cはディスプレイ出力やUSB PD対応の充電端子も兼ねているなど、最近のスタンダードなノートパソコンとしては必要十分の拡張性を備える。
Ryzen 5 4500Uの性能は折り紙つき、LTE通信も快適
今回試用したモデルは、基本構成のモデルに8GBのメモリを追加してデュアルチャネル構成で利用できるようにしたものだ。デュアルチャネルの場合、グラフィックス性能が若干向上する。ストレージはSATA接続で変更はない。
毎回行なっている基本的なベンチマークテストの計測結果を、同じくマウスコンピューターの法人向けノートパソコン「MousePro NB4」と比較してみた。MousePro NB4では、第10世代のCore iシリーズのなかでもRyzen 5 4500Uと位置づけが近い「Core i5-10210U」を搭載している。
【表2】ベンチマーク結果
|
mouse B5-R5 |
MousePro NB4 |
|
PCMark 10 Extended v2.1.2506 |
PCMark 10 Extended v2.0.2144 |
PCMark 10 Extended score |
4,117 |
2,414 |
Essentials |
8,798 |
7,690 |
App Start-up score |
10,751 |
10,399 |
Video Conferencing score |
7,682 |
6,592 |
Web Browsing score |
8,247 |
6,635 |
Productivity |
7,808 |
6,368 |
Spreadsheets score |
9,371 |
7,467 |
Writing score |
6,506 |
5,431 |
Digital Content Creation |
4,883 |
2,695 |
Photo Editing score |
7,575 |
3,518 |
Rendering and Visualization score |
4,283 |
1,613 |
Video Editting score |
3,589 |
3,452 |
Gaming |
2,316 |
697 |
Graphics score |
3,071 |
899 |
Physics score |
12,037 |
6,792 |
Combined score |
367 |
295 |
|
PCMark 10 Battery Test v2.1.2506 |
PCMark 10 Battery Test v2.0.2144 |
MODERN OFFICE |
8時間10分 |
18時間42分 |
|
3DMark v2.16.7094 |
3DMark v2.11.6846 |
Time Spy |
1,050 |
382 |
Fire Strike |
2,793 |
879 |
Sky Diver |
9,982 |
3,904 |
|
Cinebench R23.0 |
CPU |
5,467 |
- |
CPU(Single Core) |
1,151 |
- |
|
Cinebench R20.0 |
CPU |
- |
1,061 |
CPU(Single Core) |
- |
394 |
|
Cinebench R15.0 |
CPU |
901 |
566 |
CPU(Single Core) |
174 |
164 |
|
Crystal Disk Mark 7.0.0h |
CrystalDiskMark 7.0.0g |
Q8T1 シーケンシャルリード |
553.61 MB/s |
447.09 MB/s |
Q8T1 シーケンシャルライト |
483.99 MB/s |
499.34 MB/s |
Q1T1 シーケンシャルリード |
510.51 MB/s |
475.18 MB/s |
Q1T1 シーケンシャルライト |
407.82 MB/s |
438.96 MB/s |
Q32T16 4Kランダムリード |
280.6 MB/s |
300.65 MB/s |
Q32T16 4K ランダムライト |
249.22 MB/s |
350.25 MB/s |
Q1T1 4Kランダムリード |
32.83 MB/s |
25.35 MB/s |
Q1T1 4K ランダムライト |
85.46 MB/s |
66.18 MB/s |
TMPGEnc Video Mastering Works 7 ※3分のフルHD動画をエンコード |
H.264/AVC |
3分45秒 |
8分6秒 |
H.264/AVC(Quick Sync Video有効) |
42秒 |
1分5秒 |
H.265/HEVC |
7分7秒 |
14分35秒 |
H265/HEVC(Quick Sync Video有効) |
41秒 |
2分7秒 |
CPUの性能をより強く反映するCinebench R20、そして動画のエンコード時間を計測するTMPGEnc Video Mastering Works 7では、Ryzen 5 4500Uの強さがはっきりと示される結果となった。またRyzenのAPUが内蔵するGPUの性能はかなり高く、3DMarkの結果も優れている。設定を重くしなければ、ゲームも普通にプレイできるレベルだ。
こうしたCPUコア部分と内蔵GPUの性能の高さもあり、ノートパソコンの総合性能をチェックできるPCMark 10でも、mouse B5-R5に軍配が上がる結果となった。ここまでの性能があれば、数年は不満を感じずにノートパソコンを利用できることは間違いない。
また、今回試用したモデルにはLTE対応のモバイルネットワーク通信モジュールが組み込まれている。実際にOCNモバイルONEのSIMカードを挿してAPN設定を行なったところ、問題なくインターネットに接続できた。
BTOメニューの「ヒント」を見ると、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった日本の大手通信会社に対応しており、それらの通信網を利用するMVNOでも問題なく利用できるはずだ。今回テストしたOCNモバイルONEも、NTTドコモのMVNOである。
モバイルネットワーク通信モジュールを追加すれば、スマートフォンのテザリングを介さなくても、ノートパソコン1台でインターネットに接続できる。個人的にはスマートフォンを持ち歩かない状況は少なくなってはいるが、より身軽な状態でノートパソコンを利用できるのはメリットの1つと言ってよいだろう。
拡張性が高いので長くつき合っていける
総合性能に優れ、キーボードの作りやデザインは上位モデルと十分に戦えるレベルにあるmouse B5-R5は、非常に買い得感の高いノートパソコンと言ってよいだろう。正直、税別7万9,800円で買えるノートパソコンとは思えないほどの完成度だ。
分解すると保証対象外となってしまうが、底面を簡単に取り外せる構造なので、メンテナンスや拡張も容易だ。今回のモデルでは2.5インチSSD用のスペースがそのまま空いており、ここに1~2TBの大容量SSDを追加すれば、大容量ファイルもたっぷり保存できるし、M.2対応SSDやメモリを換装することも可能だ。
ワイヤレス通信モジュールを追加し、自宅や出張先で利用するテレワーク用に購入するもよし。家族全員で利用するノートパソコンとして、リビングに置いて使うのもよいだろう。もちろん子供用にプレゼントするノートパソコンとしてもぴったりだ。
低価格な標準モデルでも性能が高く、しかも拡張性が高く、長くつき合っていけるmouse B5-R5は、コストに敏感なユーザーにとくにおすすめしたいノートパソコンだ。