今日(2020年11月16日)付の朝日新聞朝刊1面14版△に「無人駅 5割に増加 障害者、利用に支障 国交省集計」という記事が掲載されています(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14696241.html)。何かを考える題材には打ってつけなので、取り上げておきます。
鉄道事業者の経営合理化のための一策として用いられるのが、駅員を配置しない駅、すなわち無人駅の増加です。上記記事には無人駅についての厳密な定義などは書かれていませんが、おそらく、前提として、駅員は、鉄道事業者の従業員、またはその鉄道事業者の子会社など、鉄道事業者から駅業務について全面的に(但し、運転取扱を除いて)委託を受けた会社の従業員を意味するのでしょう。簡易委託駅(乗車券の販売業務のみが鉄道会社から市町村や他の会社または個人に委託されるような駅)は無人駅として扱っていないかもしれません。また、路面電車の停留所が除外されているかどうかはわかりません(記事を読んだ限りでは除外されていないと思われます。東京都、大阪府、高知県、長崎県の無人駅の数が多いからです)。
国土交通省が集計したところによると、無人駅の数はこの20年間で1割増えており、今年3月において全駅の5割近くになっているとのことです。また、完全無人化ではなく、一部の時間帯に限定された無人化も進んでいます。私が見た例はJR南武線の稲田堤駅で、早朝など一部の時間帯には駅員がおりません。
現に大分県で訴訟が提起されていますが、たしかに身体障害者であれば乗降に支障があるでしょう。障害者に優しくなければ高齢者にも健常者にも優しくないとも言える訳です(誰でも、いつ、どうなるかわからないのです)。また、無人化によって不便になることも少なくないでしょう。
国土交通省がデータを取り始めたのは2002年3月のことだそうですが(もっと前からデータはあったと思われますが、ここでは記事に従っておきます)、その際には全国9514駅のうち、4120駅が無人駅でした。割合は43.3%です。20年後の2020年3月には駅数が9465、無人駅が4564で48.2%でした。
記事に掲載されている折れ線グラフを見ると、興味深いことがわかります。2002年から2003年までは100以上も無人駅が増えましたが、2003年から2005年まではわずかながら減少気味となり、2005年から2009年までは減少を示す傾きが大きくなり、2008年と2009年には2002年より無人駅の数が減りました。しかし、2010年から増えています。背景を知りたいところです。
なお、無人駅であっても日や時間帯によっては駅員が配置される場合もあります。あくまでも臨時という扱いなのでしょう。
上記記事には、無人駅の割合が低い都道府県と高い都道府県が紹介されています。まず、割合が低い都道府県は次の通りです。
1.沖縄県:0.0%(0駅。沖縄モノレールの駅は全て有人駅)
2.埼玉県:3.0%(7駅)
3.東京都:9.9%(75駅)
4.神奈川県:16.0%(61駅)
5.大阪府:16.0%(83駅)
次に、割合が高い都道府県は次の通りです。
1.高知県:93.5%(159駅)
2.徳島県:81.6%(61駅)
3.長崎県:79.6%(109駅)
4.山口県:77.6%(118駅)
5.岐阜県:76.6%(144駅)
ラフである印象も否めませんが、このようになっています。このうち、路面電車が走っているのは東京都(都電荒川線と東急世田谷線。いずれも専用軌道が圧倒的に多いのですが、歴史的な経緯もあって軌道線のままです)、大阪府(阪堺電気鉄道)、高知県(とさでん交通)、長崎県(長崎電気軌道)ですから、路面電車の電停を除外するといかなる数と割合になるかが気になります。
もう一つ、鉄道事業者別で無人駅の数と割合を知りたいという気持ちもあります。私がよく利用する東急線を例にとると、世田谷線では三軒茶屋駅、上町駅および下高井戸駅には駅員が配置されていますが、それ以外の駅には駅員がいません(もしかしたら時間帯によって配置される駅もあるかもしれません)。また、東急が第二種鉄道事業者である横浜高速鉄道こどもの国線の恩田駅およびこどもの国駅も無人駅です(長津田駅も、こどもの国線については無人駅と表現してよいかもしれません)。
無人駅と言えば、南海高野線の美加の台駅が無人駅化されたことは大きく報じられましたが、南海には他にもいくつか無人駅があります。近鉄もそうですし、名鉄の無人駅の多さには驚かされます。
神奈川県の場合は、まず鶴見線が思い浮かびます。1970年代、鶴見駅を除く全駅が無人化されているからです(旅客駅の場合)。他に相模線、御殿場線、東海道本線(根府川駅)、江ノ電などに無人駅があります。
少子高齢化など、駅の無人化を進めざるをえない理由が存在します。それらを丹念に検討して、問題を処理していくしかないでしょう。
中途半端な文章になりましたが、今回はこの辺で。また、じっくりと考えていきます。
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