東京国立博物館「挂甲の武人 国宝指定50周年記念特別展「はにわ」」。
2024年10月29日(火)。
第5章 物語をつたえる埴輪
埴輪は複数の人物や動物などを組み合わせて、埴輪劇場とも呼ぶべき何かしらの物語を表現します。ここではその埴輪群像を場面ごとに紹介します。例えば、古墳のガードマンである盾持人(たてもちびと)、古墳から邪気を払う相撲の力士など、多様な人物の役割分担を示します。
また、魂のよりどころとなる神聖な家形埴輪は、古墳の中心施設に置かれ、複数組み合わせることで王の居館を再現したのではないかと考えられます。このほか動物埴輪も、種類ごとに役割が異なります。この章の動物埴輪は、従来にないダイナミックな見せ方で展示します。
重文・両面人物埴輪。和歌山県大日山35号墳出土。古墳時代後期。6世紀。
両面人物埴輪の顔には矢が刺さっており、一方の顔は口が裂けている。首から下はみつかっておらず、どのような職掌か分かっていない。『日本書記』には仁徳天皇の頃に、飛騨地方で1つの胴体に2つの顔をもつ人物(両面宿儺りょうめんすくな)がいたという伝承があり、その関連が注目される。
和歌山県の北端を西流する紀ノ川の河口部に、岩橋千塚古墳群が立地する。この岩橋千塚古墳群は、4世紀末から7世紀後半にかけて作られた総数約850基の古墳が分布し、国の特別史跡に指定されている。
なかでも紀伊における最大級の前方後円墳である6世紀前半の首長墓である大日山35号墳からは埴輪群が出土し、翼を広げた鳥形埴輪や両面人物埴輪は、他に類例のないものとして著名であり、古墳墳丘上での儀礼の実態を考えるうえでも、高い学術的価値を持つ。
大日山35号墳は、岩橋千塚古墳群のなかでも、紀ノ川流域を一望することができる、たいへん眺望の良い所に築造され、東西の造出(つくりだし/前方後円墳のくびれ部の両側に付設された方形台状の突出部のこと)からは数多くの珍しい埴輪が出土した。