読む日々

テーマばらばらの読書日記

オリーブ

2012-02-17 | 
吉永奈央「オリーブ」


 図書館へ行く暇がなくて、昨夜遅くに本屋へ行って買ってきました。
文春文庫の今月の新刊。5編の短編集。


「オリーブ」親の遺産増額の条件のため結婚した男。妻は植物を育てるのが得意。オリーブは1本だけじゃ実をつけないから、と知り、男がもう1本を買って帰った翌日、妻は行方をくらました。

妻を追い、調べていくうちに驚くべき事実が。妻は他人に成り済ましていて、婚姻届も出されてなく、妻の母は妻に雇われたバイト・・・。

あとは新刊だし、ネタバレになるので自粛。

面白かった。展開とかトリックとか、そういうのもミステリーとして面白かったけど、散々遊んで来た男が、妻に対して純粋に愛情を抱いていたことが、その気持ちが露わになりつつある経過が、すごくよかった。

「カナカナの庭で」
癌で余命いくばくもない男が、無理だと言われていた一時帰宅が叶う事に。妻を驚かせようと、タクシーで1日早く自宅へ向かうと・・・。
妻と親友、そして男の若いころからの複雑な関係と、第三者である男の友達が主な登場人物。第三者の友達の友情がいい。
そして親友と男の複雑な友情も。若いころ恋人同士だった妻と親友に対する負い目と引け目とそして感謝と。そんな思いで死を見つめる男の心境がジーンときた。

「指」
塑像を趣味で作る銅版画作家の女が主人公。妻子のいる芸術家の男と長く付き合っている。その塑像を巡ってのあれこれ。
これは、いまいち。

「不在」
統合失調症の妹を抱える女性。会社の副社長と婚約しているが、妹の病気は内緒。ところが女性が店長になった事を妬ましく思う者の策略で、妹の事がバレ・・。でも妹の姉への愛がじんわり。いいお話。

「欠けた月の夜に」
ある日突然夫が勤務中に死亡。絶対に過労死だと思いつめる妻。周囲、そして中2の息子までも真実を知っていた。
ひとつひとつ解き明かされる真実。後味よし。


満足度90

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