埴谷雄高は、奥さんを亡くして男手ひとつになって以降、日々の掃除などには多少行き届かない面はあったろうが、正しく独身生活を維持した。
夕飯時には、自宅で口に合った酒をチビリチビリやりながら、大学ノートに発想を鉛筆書きして過ごした。
今夜、埴谷雄高を思い出した勢いで、埴谷の好きだったハンガリーの国家管理・トカイ地方産貴腐葡萄酒を久し振りに開けた。
普遍的に奥さんに先立たれてガックリ老け込む男は非常に多いが、埴谷はその片鱗も見せず、坦坦と生き抜いたところは、文学者としての定評を超越して今も尊敬する。