傘をさしてもささなくても済むような雨の朝だ。 近所にある市の健康センターの庭の植え込みに、最近はめずらしくなったマンサクの木があって、この間花が咲きかけていたから、「もうそろそろ見頃かも」とイチ子が言う。薄暗い雨の日に黄色い花が鮮やかなはずだから、写真を撮りに行こうとぼくを誘う。 * 行きの道すがら、「三月だし、菜種梅雨の走りって言ってもいいような雨ね」とイチ子が嬉しそうに言う。