きみの靴の中の砂

夏空高く





 すでに、点火時期や燃料ポンプの調整どころの話ではなかった。

「排気タービンに必要なニッケル不足で、試作機の発動機はことごとく不調です」
 覗き込んでいた点検口から頭を引っ張り出しながら大河原軍曹が言う。

「ついに来るところまで来たということだ....」
 それ以上思い付く言葉もなく、私はただ、夏空高く広がりはじめた積乱雲を仰ぎ見る他はなかった。


 

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