押し入れの隅にあった段ボール箱から、主人の雑誌などに書いた記事の切り抜きが出てきました。
進路を考えている高校生向けに書いたものがありましたのでご紹介いたします。
『国際関係のより深き洞察を』
1990年10月、まさかと思われた東西ドイツの統一が実現した。また東ヨーロッパでは、自由と民主化を求めて民衆が支配権力に立ち向かい、想像もできなかったことだが、社会主義体制は音を立てて崩れ落ちた。
東ヨーロッパは、今ようやく落ち着きをを取り戻しつつある。しかし真の再生はこれからが正念場であろう。と言うのは、これらの国々で当初高く掲げられていた民主革命の旗は、経済的により恵まれた生活を求める人々の波によってかき消されようとしているからである。
もし自由と民主化を求めるという当初の目標が見失われるようなことがあると、再び元の暗い時代への逆戻りとは言わないまでも、それを繰り返すであろう歴史の出発点に再び立ち戻ってしまうことにもなりかねない。
西ドイツの作家ギュンター・グラスが、東西ドイツの統一に熱狂する両ドイツ国民に向かって「心の準備のない急激な統一は有害である。統一を達成するためには、まだまだ精算されねばならないことがたくさんある」と警告している言葉に耳を傾けよう。
国際関係学という学問は、単に国家間の交渉、国際経済発展の予測・展望という問題だけを扱う学問ではない。人間が人間らしく生きる社会をどう築くか、どう守り抜くかを根底に据えて学ぶことが不可欠なのである。
国際化の時代と言われるが、華々しい国際社会での現象だけに目を奪われていては、地球に真の平和が訪れる日は遠いのである。
(福武書店「学部学科徹底研究」1991年)
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人間が人間らしく生きる社会をどう築くか、どう守り抜くか を考えずに
国際化の波に乗り遅れるな、リニア新幹線だ、5G革命だ、と煽られているような気がします。
そういえば、1991年は、まだ神戸の震災も東北大震災も起きる前でした。
震災の教訓から、安全性を確かめること、災害の被害を減らすことが必要である、とつけ加えたいと思います。