『日刊ゲンダイに思う戦争責任の有無という根本問題』
櫻井 智志
後に転載させていただいた記事をよむと、第2次安倍政権発足と同時に、政治と社会の劣化が凄まじいほど悪化している背景が見えてくる。ひとりの異様な人物と、それに何も言えないとりまきの人々の屈服的迎合によって、日本国はアブノーマルな怪物国家時代に突入していることが見えてくる。
良識ある多くの政治家や国民が怒りと政治危機に、立ち上がった。同時に次々に失望して無気力に虚無感に襲われ、一部には虚無感が無力感となり、そのことが権力依存迎合の反応として、安倍晋三政権に擦り寄り「強者の側」につく反転現象が起きている。このようなことは世界史に教訓がある。ワイマール憲法下のドイツ国民の親ナチズム化がよく知られた史実だ。ドイツは戦後に徹底的にナチス戦犯を追及しつづけている。けれど日本は、A級戦犯岸信介がなんと総理になりその孫である安倍晋三が一国の総理となっている。
戦争犯罪の追及が実行された国家。戦争犯罪人が総理となりその義理の息子が閣僚となり、その実子が総理となった国家。さかのぼれば戦後に「戦争責任」が国家ぐるみでどうなされたのかに根本原因があることにたどりつく。
=======引用開始============
日刊ゲンダイ 巻頭特集
安倍首相こそ本紙を読んでほしい…目に余るすり替え答弁
2016年2月5日
激励に応えます(C)日刊ゲンダイ
「帰りに日刊ゲンダイでも読んでみてくださいよ。これが萎縮している姿ですか」
これは、4日の衆院予算委での安倍首相の発言だ。民主党議員が「表現の自由を制限し、言論機関を萎縮させる」と、自民党の憲法改正草案の問題点を指摘。今も安倍政権に批判的なキャスターが次々とテレビから消えている事実を踏まえ、「権力者への批判の自由を担保する考えはあるか」と質問したことに対する答弁である。
国会の場で安倍サマのお墨付きを得てしまった以上、今後も必死で報道の自由を行使しなければならないが、そんなに愛読しているのなら、ぜひ記事の内容もきちんと理解してもらいたいものだ。本紙が批判記事を書くからといって、それで報道の自由全体が確保されているとの主張は、あまりにご都合主義というものである。
「なぜそこで、ふだん一緒にメシを食っている読売や産経など、お仲間メディアの名前が出てこないのか。大メディアが政権に配慮した記事しか書かないことを知っているからでしょう。
日刊ゲンダイの名前しか挙がらない時点で、言論機関の萎縮を認めたも同然で、他のメディアはすべて制圧したと思い上がっているのです。ここまで挑発されて黙っているようでは、メディアの側も情けない。今の日本では、政権の圧力によって報道の自由が失われている。それは国民の知る権利が奪われているということです」(元NHK政治記者で評論家の川崎泰資氏)
■批判されると逆上してわめき散らす
一部の特殊な例を挙げて、それが全体に当てはまるかのように丸め込むのは、典型的な詐欺師の手法だ。アベノミクスは成功していると強弁する際の常套手段でもある。「名目GDPが28兆円増えた」「雇用は110万人以上増えた」「有効求人倍率は23年ぶりの高い水準」「過去最高の企業収益を更新」「賃上げは過去17年間で最高」─―。持ち出す例はいつも同じだ。都合のいい数字だけを取り上げて成果をアピールする。 だが、国際的に見ると、安倍政権になってからGDPは減り続けている。ドルベースで換算すると国民1人当たりのGDPはOECD加盟国の中で過去最低の20位にまで落ちてしまった。雇用が増えたといっても非正規労働が増えただけで、正社員は減っている。有効求人倍率だって、正社員は0.7程度しかないし、実質賃金も減り、貧困率が上がり続けている。日本全体としては明らかに貧しくなっているのに、円安で収益を上げた大企業など、一部の実績を誇示して成果を振りかざすのはペテンでしかない。
「安倍首相は自画自賛する時、聞かれてもいないことを延々とまくし立てて、野党の質問時間を侵害する。不都合なことを聞かれると、はぐらかし答弁に終始し、やはり無駄に時間を浪費する。批判されると激高し、民主党に責任転嫁して話をすり替えてしまう。安倍首相がヒステリックにわめき散らしている時は例外なく、図星を突かれたからなのですが、とてもマトモな精神状態と思えない激高ぶりです。ひとり興奮してアジ演説をやっている。批判に真摯に耳を傾けようとせず、それどころか野党を罵るなんて、こんな首相答弁は見たことがありません。世襲のボンボン首相だから耐性がないとはいえ、あまりに子供じみているし、品性を疑います」(政治評論家・森田実氏)
「ないことを証明できない方が悪い」と言ったのが誰だったか
民主党の岡田代表に対する答弁もヒドいものだった。3日の予算委で、岡田は甘利前経済再生相の疑惑に関連して、「2日の本会議で(安倍は)安倍内閣の政策が政治献金で影響を受けることはないと断言したが、何を根拠に言っているのか」と質問した。
これに対し、安倍は「ないからです」の一言である。こんな人を食ったような答弁があるか。「オレ様がないと言えばない」という態度。根拠を示せと言っているのに、これでは議論のしようがない。さらには「嫌疑をかけるのであれば、具体的に述べなければ誹謗中傷だ」「そんな言いがかりには答えようがない」と居直り、「週刊誌に報道されていたようなことが、安倍政権の、例えばTPPの交渉に影響するのか。経済財政運営に影響するのか。影響するはずないじゃありませんか!」と声を荒らげる。こうなると、ほとんどクレーマーの類いだが、屁理屈だけは得意のようだ。
「ないと断言した以上は、その根拠を示さなければならないのは、あなたではないか」と重ねてただされると、今度は「ないことを証明するのは悪魔の証明なんですよ。ないものについては、ないと言うしかないじゃありませんか!」とキレ気味にまくし立て、自席に戻るや「してやったり」とばかりにニヤついていた。
だが、かつて国会で「ないことを証明できない方が悪い」と言ってのけたのは安倍その人だ。ブッシュ政権が仕掛けたイラク戦争に協力したことについて、判断材料となった大量破壊兵器が実はなかったことが国会で問題になった際、「ないことを証明できなかったイラクが悪い」と断罪したことを忘れたとは言わせない。よくもまあ、こうも都合良く使い分けられるものだ。安倍の思考回路には一貫性とか論理性というものが存在しないのか。
■狂乱答弁を詳報しないメディアの罪
「安倍首相の答弁はガキの喧嘩レベルで、完全に論理が破綻しています。答弁にすらなっていない。どう見ても、岡田代表の発言の方が論理的に正しくて勝っているのに、メディアは首相の狂乱答弁を批判しないし、詳しく報じることもない。だから支持率も下がらず、政権は安泰でいられる。こんなボクちゃん首相をつけあがらせ、のさばらせているメディアの責任は重大です。疑惑大臣をかばったり、国会の場で平然とウソをついたりしてデタラメを言う。それでも支持率が上がるのだから、ますますいい気になっている。異常に興奮して野党を罵倒するなど、この通常国会での首相の言動は常軌を逸しています」(川崎泰資氏=前出)
言論の府であり、国権の最高機関であるはずの国会で議論が成立しなくなっているという事実。最後は「私が最高責任者だ」「総理大臣の私が言っているのだから正しい」と一方的に議論を封印してしまう。国会軽視も甚だしいのだ。常に自分は正しいと言い張り、野党への侮蔑も目に余る。
「責任は私にある」と見えを切るのも決まり文句のひとつだ。取りあえずそう言っておけば、その場はやり過ごせると学習したのだろうが、責任が「ある」と言うだけで、内閣の不祥事が発覚しても、責任を取ったためしはない。こういうナメた態度を放置しているメディアも国民も問題だ。
安倍が威張っていられるのは、メディアが忖度して権力者を支えているせいもあるが、それにまんまとダマされる有権者もリテラシーが低過ぎる。
この調子だと、甘利のワイロ問題もウヤムヤにされ、新たに浮上した遠藤五輪相の口利き疑惑にもフタがされてしまう。事実、高木復興相の香典配布問題やパンツ泥棒疑惑への関心も、すっかり下火になってしまった。
大メディアの腐敗堕落は度し難いが、これだけ閣僚の疑惑が相次いでいるのに、政権を倒すこともできない野党の無力ぶりもまた、寒々しいほどである。
=======引用終了============
櫻井 智志
後に転載させていただいた記事をよむと、第2次安倍政権発足と同時に、政治と社会の劣化が凄まじいほど悪化している背景が見えてくる。ひとりの異様な人物と、それに何も言えないとりまきの人々の屈服的迎合によって、日本国はアブノーマルな怪物国家時代に突入していることが見えてくる。
良識ある多くの政治家や国民が怒りと政治危機に、立ち上がった。同時に次々に失望して無気力に虚無感に襲われ、一部には虚無感が無力感となり、そのことが権力依存迎合の反応として、安倍晋三政権に擦り寄り「強者の側」につく反転現象が起きている。このようなことは世界史に教訓がある。ワイマール憲法下のドイツ国民の親ナチズム化がよく知られた史実だ。ドイツは戦後に徹底的にナチス戦犯を追及しつづけている。けれど日本は、A級戦犯岸信介がなんと総理になりその孫である安倍晋三が一国の総理となっている。
戦争犯罪の追及が実行された国家。戦争犯罪人が総理となりその義理の息子が閣僚となり、その実子が総理となった国家。さかのぼれば戦後に「戦争責任」が国家ぐるみでどうなされたのかに根本原因があることにたどりつく。
=======引用開始============
日刊ゲンダイ 巻頭特集
安倍首相こそ本紙を読んでほしい…目に余るすり替え答弁
2016年2月5日
激励に応えます(C)日刊ゲンダイ
「帰りに日刊ゲンダイでも読んでみてくださいよ。これが萎縮している姿ですか」
これは、4日の衆院予算委での安倍首相の発言だ。民主党議員が「表現の自由を制限し、言論機関を萎縮させる」と、自民党の憲法改正草案の問題点を指摘。今も安倍政権に批判的なキャスターが次々とテレビから消えている事実を踏まえ、「権力者への批判の自由を担保する考えはあるか」と質問したことに対する答弁である。
国会の場で安倍サマのお墨付きを得てしまった以上、今後も必死で報道の自由を行使しなければならないが、そんなに愛読しているのなら、ぜひ記事の内容もきちんと理解してもらいたいものだ。本紙が批判記事を書くからといって、それで報道の自由全体が確保されているとの主張は、あまりにご都合主義というものである。
「なぜそこで、ふだん一緒にメシを食っている読売や産経など、お仲間メディアの名前が出てこないのか。大メディアが政権に配慮した記事しか書かないことを知っているからでしょう。
日刊ゲンダイの名前しか挙がらない時点で、言論機関の萎縮を認めたも同然で、他のメディアはすべて制圧したと思い上がっているのです。ここまで挑発されて黙っているようでは、メディアの側も情けない。今の日本では、政権の圧力によって報道の自由が失われている。それは国民の知る権利が奪われているということです」(元NHK政治記者で評論家の川崎泰資氏)
■批判されると逆上してわめき散らす
一部の特殊な例を挙げて、それが全体に当てはまるかのように丸め込むのは、典型的な詐欺師の手法だ。アベノミクスは成功していると強弁する際の常套手段でもある。「名目GDPが28兆円増えた」「雇用は110万人以上増えた」「有効求人倍率は23年ぶりの高い水準」「過去最高の企業収益を更新」「賃上げは過去17年間で最高」─―。持ち出す例はいつも同じだ。都合のいい数字だけを取り上げて成果をアピールする。 だが、国際的に見ると、安倍政権になってからGDPは減り続けている。ドルベースで換算すると国民1人当たりのGDPはOECD加盟国の中で過去最低の20位にまで落ちてしまった。雇用が増えたといっても非正規労働が増えただけで、正社員は減っている。有効求人倍率だって、正社員は0.7程度しかないし、実質賃金も減り、貧困率が上がり続けている。日本全体としては明らかに貧しくなっているのに、円安で収益を上げた大企業など、一部の実績を誇示して成果を振りかざすのはペテンでしかない。
「安倍首相は自画自賛する時、聞かれてもいないことを延々とまくし立てて、野党の質問時間を侵害する。不都合なことを聞かれると、はぐらかし答弁に終始し、やはり無駄に時間を浪費する。批判されると激高し、民主党に責任転嫁して話をすり替えてしまう。安倍首相がヒステリックにわめき散らしている時は例外なく、図星を突かれたからなのですが、とてもマトモな精神状態と思えない激高ぶりです。ひとり興奮してアジ演説をやっている。批判に真摯に耳を傾けようとせず、それどころか野党を罵るなんて、こんな首相答弁は見たことがありません。世襲のボンボン首相だから耐性がないとはいえ、あまりに子供じみているし、品性を疑います」(政治評論家・森田実氏)
「ないことを証明できない方が悪い」と言ったのが誰だったか
民主党の岡田代表に対する答弁もヒドいものだった。3日の予算委で、岡田は甘利前経済再生相の疑惑に関連して、「2日の本会議で(安倍は)安倍内閣の政策が政治献金で影響を受けることはないと断言したが、何を根拠に言っているのか」と質問した。
これに対し、安倍は「ないからです」の一言である。こんな人を食ったような答弁があるか。「オレ様がないと言えばない」という態度。根拠を示せと言っているのに、これでは議論のしようがない。さらには「嫌疑をかけるのであれば、具体的に述べなければ誹謗中傷だ」「そんな言いがかりには答えようがない」と居直り、「週刊誌に報道されていたようなことが、安倍政権の、例えばTPPの交渉に影響するのか。経済財政運営に影響するのか。影響するはずないじゃありませんか!」と声を荒らげる。こうなると、ほとんどクレーマーの類いだが、屁理屈だけは得意のようだ。
「ないと断言した以上は、その根拠を示さなければならないのは、あなたではないか」と重ねてただされると、今度は「ないことを証明するのは悪魔の証明なんですよ。ないものについては、ないと言うしかないじゃありませんか!」とキレ気味にまくし立て、自席に戻るや「してやったり」とばかりにニヤついていた。
だが、かつて国会で「ないことを証明できない方が悪い」と言ってのけたのは安倍その人だ。ブッシュ政権が仕掛けたイラク戦争に協力したことについて、判断材料となった大量破壊兵器が実はなかったことが国会で問題になった際、「ないことを証明できなかったイラクが悪い」と断罪したことを忘れたとは言わせない。よくもまあ、こうも都合良く使い分けられるものだ。安倍の思考回路には一貫性とか論理性というものが存在しないのか。
■狂乱答弁を詳報しないメディアの罪
「安倍首相の答弁はガキの喧嘩レベルで、完全に論理が破綻しています。答弁にすらなっていない。どう見ても、岡田代表の発言の方が論理的に正しくて勝っているのに、メディアは首相の狂乱答弁を批判しないし、詳しく報じることもない。だから支持率も下がらず、政権は安泰でいられる。こんなボクちゃん首相をつけあがらせ、のさばらせているメディアの責任は重大です。疑惑大臣をかばったり、国会の場で平然とウソをついたりしてデタラメを言う。それでも支持率が上がるのだから、ますますいい気になっている。異常に興奮して野党を罵倒するなど、この通常国会での首相の言動は常軌を逸しています」(川崎泰資氏=前出)
言論の府であり、国権の最高機関であるはずの国会で議論が成立しなくなっているという事実。最後は「私が最高責任者だ」「総理大臣の私が言っているのだから正しい」と一方的に議論を封印してしまう。国会軽視も甚だしいのだ。常に自分は正しいと言い張り、野党への侮蔑も目に余る。
「責任は私にある」と見えを切るのも決まり文句のひとつだ。取りあえずそう言っておけば、その場はやり過ごせると学習したのだろうが、責任が「ある」と言うだけで、内閣の不祥事が発覚しても、責任を取ったためしはない。こういうナメた態度を放置しているメディアも国民も問題だ。
安倍が威張っていられるのは、メディアが忖度して権力者を支えているせいもあるが、それにまんまとダマされる有権者もリテラシーが低過ぎる。
この調子だと、甘利のワイロ問題もウヤムヤにされ、新たに浮上した遠藤五輪相の口利き疑惑にもフタがされてしまう。事実、高木復興相の香典配布問題やパンツ泥棒疑惑への関心も、すっかり下火になってしまった。
大メディアの腐敗堕落は度し難いが、これだけ閣僚の疑惑が相次いでいるのに、政権を倒すこともできない野党の無力ぶりもまた、寒々しいほどである。
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