【現代思想とジャーナリスト精神】

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 日ロ交渉後に相次いで安倍首相がテレビ出演した二つの報道番組への挽歌

2016-12-17 07:09:29 | 政治・文化・社会評論
  日ロ交渉後に相次いで安倍首相がテレビ出演した二つの報道番組への挽歌

            櫻井 智志


 昨夜の「報道ステーション」「news23」に安倍首相のインタビュー生出演を見て、唖然とした。首相出演自体が問題なのでない。首相の詭弁に対するキャスター両氏の言論人としての対応の様子を見て、失望感は大きかった。


 鳴り物入りでロシアのプーチン大統領を招いて、レーガン・中曽根の日の出山荘での「ロン」「ヤス」親密関係の二番煎じの演出。
 しかし、北方領土返還問題は頓挫した。マスコミからは、安倍首相のアメリカとロシアの間を鵺のようにふらふらする外交姿勢がプーチン大統領の怒りをかったとする見方も出ている。外交失敗を隠蔽するためなのか、安倍晋三首相は会談終了当日の夜に相次いで報道番組に生出演して国民に長々と弁解を述べた。



 最も権力批判を勇気を持って行い、政府から恫喝と非難され、キャスター交代された両番組は「報道ステーション」の古館伊知郎キャスター、「news23」の岸井成格アンカーの勇気あるコメントが鋭く光っていた。
 首相は、北方領土返還とその成果をもとに総選挙に打って出る戦術が頓挫した。経済問題をあれやこれやしゃべる安倍首相。首相出演で忌憚なく発言を批判・分析するならよいが、内容は大きく隔たっていた。長々と弁解じみた饒舌の安倍晋三にあいづちをうちつづけるサポーター役の実質中心の後藤謙次キャスター、星浩キャスターの両氏。テレビ報道界良識の両番組は、久米宏の「ニュースステーション」「筑紫哲也のnews23」キャスターの両氏から始まった。その両番組も、黄昏を迎えている。期待しつづけてきた両番組だけに、このような重要案件に対する対応は、きわめて残念であり惜しまれる。大きく時代の情勢の波にのまれよく姿に、いままでの健闘があっただけに残念でならない。最大の非難は、このような報道状況をつくりだした安倍政権そのものの専制的独裁政治に向けられるべきだろう。




 番組の首相出演コーナーはすべて見るには耐え難い提灯持ちだった。虚しくスイッチを消した。もはやテレビや新聞、インターネットでも「権威ある良識報道番組の発言」は、政治情勢によっては、永続せずたえず転向や変質するものだと痛感した。私たちは自らが、報道されることがらについての自前の見解をもつ「まなび」を耕し続ける営みが欠かせなくなった。