吹雪の次の日の仙台は、晴れ間のみえるいい日でした。40週2日。いよいよ分娩予定日です。卒後6年目の内科医の立ち会い出産日記、どうぞご覧ください。医クメン・たきいです。
雪の定禅寺通。ついこの前まで「光のページェント」をやっていたところ。
仙台市内も久々の雪景色。今日が息子の誕生日になるのかなと思うとドキドキです。
助産師さん「お待ちしていました。今日は丸森の勤務の日じゃなくてよかったね、って話していたんですよ」
行ってみたら、ナースステーション中で私の所属と職業がバレバレでした。
たきい「やっほー、着いたよ~」
もえちゃん「脇腹が痛い~」
和通分娩を希望した妻、硬膜外麻酔が入れ終わって、オキシトシンの持続静注がはじまったところでした。動く椅子にまたがる妻。
助産師さん「初産の方は、誘発剤使ってもその次の日になることもあるんですよね」
産科院長先生「硬膜外麻酔は日中のみの対応としているので、今日中にこない時は、分娩誘発剤の点滴は終了して明日に備えることもあります。こればかりはいつくるか分かりませんので」
……え~っ!!!
オキシトシンの効果を過信していました。内科医たきい、明日は再来30人弱。大丈夫かな。頼むよ我が息子。生まれてきておくれ。
もえちゃん「助産師さん、動いたほうがうまれるんですよね?」
助産師さん「スクワットなんかがいいかもしれませんね。ぜひ旦那さんも一緒に!」
スクワットを始める。助産師さんは15分おきくらいに訪室してくださいます。
11:10「お昼時間の時間まで立っていましょう!」
11:15 オキシトシン流量アップ。
11:30 助産師さんの診察「ご主人はいちど退室してくださいね~」
11:50 助産師さん「子宮口は4cmでした。午前中よりも1cmすすんでいますね」
12:00 お昼ごはん。陣痛メニュー。
うまそう。これでは足りず、わたしのおにぎりを食べる妻。
助産師さん「全部自分で食べられましたか?」
たきい「ぼくのおにぎりまで食べていました」
もえちゃん「もう……!」
たきい「記録は大事だからね」
もえちゃん「医者っぽい」
たきい「医者なんだわ」
13:15 産科院長先生診察「ただいま子宮口を開くためのバルーンを抜きました。子宮口6cmです。今日になるか、明日になるかはわかりません。」
助産師さん「経験的には、明日になりそうな予感もあります」
明日休むと外来だから迷惑かけるな……と思い、職場の外来看護師長へ泣きの電話。「明日になるかもしれず、明日もお休みいただくことになるかもしれません……」。「うちの院長先生にも相談しましょう」と冷静なアドバイスを頂戴し、院長先生に繋いでもらう。「わかりました。これは夜になってしまいますかね。どうなるかわかったらまた連絡をください。安産を願っています」。あとから聞いた話ではかなり職場をざわつかせていたらしい。
13:30
もえちゃん「なんか出た気がする」
助産師さん「“なんかでた”、破水したかもしれませんね。診察するのでご主人はまた退室してください」
助産師さん「破水していました。足のほうの膜が破れた“高位破水”という状態です」
「コウイハスイ??」朝から慌てて読み始めた「びょうみえ」で復習します(笑)。病気からはいっちゃうのが医者のよくないところですが、「名著産科びょうみえ」には「正常分娩」とかもしっかり記載されています。とはいえ白状しますが、産科の知識は国家試験のときがピークで、以後単調減少です。2階微分したら負になりそう。因みに「びょうみえ」は妻が妊娠したときに買い直しました(笑)。6月の内科専門医試験前には現実逃避によく読んでいましたが最近読んでなかった(笑)
13:40 硬膜外麻酔持続開始。オキシトシン減量。
13:45 助産師さん「モニターで『赤ちゃんが下がってきているサイン』がみえました。診察してみましょう」
もえちゃん「痛みは8/10です」
たしかに胎児心拍が140/分くらいがベースだけどたまに100くらいに下がる。
産科主治医先生「頭が下がってきましたね。今日産まれたいって言っているのかな? 呼吸はしっかり吐き出すのが大事です。もう溜まっていないくらい息をだせば、自然に吸えますから。ご主人の専門ですね!」
13:55 助産師さん「そろそろ先生に痛み止めのお薬だしてもらいましょうか」
14:00 エピからアナペインショット。これがかなり効いたらしい。
14:30 もえちゃん「痛みは5/10くらいになりました。楽になりました」。診察してもらったところ子宮口7、8cmと。これは今日中にうまれてくれそうだよね……?。
14:40 助産師さん「子宮口を柔らかくする薬をいれましょう。あ、ブスコパンなんですけど。なんか不思議ですよね」
内視鏡医としてはブスコパンは使い慣れている薬剤のひとつだけどお産のときに使うの知らなかった。
14:55 助産師さん「ほぼ子宮口全開大です」
15:00 導尿
15:15 「ご主人は頭のほうに立ってくださいね。点滴スタンドより足側にはこないでください」
助産師さん「いきむときには前傾姿勢になりましょう。陣痛にあわせて! 手は握りやすいほうのレバーを握ってください」
たきい「もえちゃんがんばれ!!」
助産師さん「頭がみえました。髪が生えていますよ。」
産科主治医先生「胎児の出てくる方向にベクトルをあわせて吸引を加えます。会陰切開を行います」
もえちゃん「ふぅ~~~」
助産師さん「上手上手」
16:07 「でてきた……!」
助産師たちの話を聞いている感じ、アプガースコア1分値は8点、その後10点っていう感じのよう。いいね!
もえちゃんよくがんばった!!
産院の院長先生直々に胎児診察をしてくださいます。
「足の指は5本です。そして股関節、しっかりよく動いています。たまたま、2つしっかり袋に入っていますね。お尻の穴ちゃんとあります。仙骨の披裂もなしです。背骨の配列異常なし。頸のつっぱりもなしです。筋力しっかり。モロー反射。」
たきい「うほぉ~、懐かしい!!」
助産師さん「フフ、盛り上がってますね~」
産科院長先生「口蓋裂もなし。はい、元気でーす!」
たきい「よかったよかった」
産科院長先生「よかったらステートつかっていただいて先生も診察してください」
たきい「え、いいんですか?」
普段高齢者の聴診しか経験がありませんが、140/分で刻まれるⅠ音Ⅱ音はなんだか美しかった。
因みにわたし、緊張すると右利きなのに左手が先にでる癖があるんですが、この写真でも証明されますね(笑)。日常診療では右手で聴診器を使っています。
新生児のバイタルサインもばっちり。
もえちゃん本当におつかれさまでした。
産まれてきてくれて、ありがとう。これからの長い人生、よろしくね。
(医学生時代にブログランキングでしのぎを削ったうーはな先生の出産ブログが参考になった人(笑))
当時の医大生ブロガーでいまだに続いているのトリちゃんだけだと思うから尊敬です!
ひさびさにブログもがんばりますー!
久しぶりに訪問してみたら、再開されていたので嬉しく読ませていただきました。