先日ブログにもアップしましたが、たまたま見たくなってDVD「大都会パートⅢ」を視聴した数日後に、渡哲也逝去のニュースがメディアで流れました。その影響でしょうか。渡哲也ロスとでも言いましょうか・・・「大都会パートⅡ」を見たくなって第22話「最後の戦場」を視聴しました。
いやはや・・・カッコいいっす、渡氏演じるクロさんこと黒岩刑事。そこに「太陽にほえろ!」ではジーパン刑事だった松田優作とドック刑事だった神田正輝がいて、後に「西部警察」でも暴れる刈谷俊介と峰竜太がいて、「踊る大捜査線」では偉くなっていた小野武彦が絡んできます。そして今回視聴した「最後の戦場」ではメインキャラを演じる高品格が、クロさんや刑事たち、そして石原裕次郎演じる医師でさえ一目置くベテラン刑事としてレギュラー出演しています。
裕次郎と哲兄ィや刑事たちのカッコよさを期待して視聴を始めたのですが・・・”戦争”を感じました。厳密に言うと”戦争の名残”です。連続発生していた事件の容疑者が浮かび、捜査課の丸さんこと丸山刑事が捜査に乗り出します。初めて容疑者と対面/事情聴取した際、容疑者は「ビルマ戦線にいましてね」と戦時中は陸軍の職業軍人だった話をすると、丸さんは「私は北支にいまして」と同じく軍人として現在の中国にいた過去を話します。
番組冒頭で、「丸さんは定年まであと2年」といったエピソードが描かれています。定年の年齢を60歳とした場合、この時の丸さんは58歳。町で印刷業を営んでいる容疑者の年齢もほぼ変わらないと考えられます。丸さんがこの事件に関わった時=この作品は1977年製作なので、丸さんは1919年生まれで1945年の終戦時は26歳だったと考えられます。
定年を控えた現役の警官/公務員と、印刷業をを営む現役の民間職員が元兵隊。終戦から32年も経っていても、まだ描けた物語/作品です。今年は終戦75年。丸さんが今でも健在だったら101歳。当然「現役」ではありません。令和になった今、公務員であろうと民間職員であろうと現役でバリバリ働いている人に、太平洋戦争で軍人だった人はいないでしょう。それほど先の戦争は「過去」になってしまったわけです。
そう言えば1971年に放送された「仮面ライダー」でも”元日本海軍少佐が隠し持つナチスの鉄箱を、悪の組織ショッカーが狙う”といったエピソードもありますし、1977年の映画「人間の証明」では、物語のキーパーソンとなったハーフ青年の母親は日本人でしたが、父親は終戦後に日本に駐留した米兵でした。その他、ウルトラマンシリーズや他の刑事ドラマにも或いはホームドラマにも、リアルで戦争にまつわるエピソードを扱った作品は多数ありました。
ちなみに今回視聴した「最後の戦場」ですが、容疑者は戦時中に愛用していたと思われる南部式拳銃を今でも隠し持っており、ラストでは「必勝」と書かれたハチマキを頭に巻き、自身の物と思しき軍服に身をまとい、黒岩軍団と激しい撃ち合いをし、最後は「万歳!」と叫びながら自らその拳銃で命を絶ちました。
太平洋戦争或いは日中戦争という大きな歴史を背景としたドラマや映画は、今でも作ることはできるでしょう。しかし”戦争経験のある元軍人”を”現役社会人(企業人)”として登場させる現代作品は、もう作ることが出来なくなりつつあるんですね。
この作品の撮影中、高品格は中国で八路軍と戦った事を思い出し涙ぐみ、小野武彦と2人で飲んだ際には戦地でのつらい話をしたそうです。