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思い出を抱えて生きる

トレッキングの杖

2017-05-26 11:16:42 | Weblog

「あんた 自転車のカゴに入れておいた杖が盗まれたの!」
歩行がままならなくなった闘病中の友から電話があった。
「いろんな人がいるからねぇ~」深いため息がでた。

母親の遺品だし 杖がないと歩けないから返してください。と張り紙をしたそうだが
結局 戻ってこなかった。

数日してからトレッキング用の杖を買ったと連絡があった。

トレッキングかぁー
一度 親友と御岳山に行ったことがあった。
ケーブルカーで上までいって 山歩き
お年寄りが多かった。そして 皆さん杖を持っていらっしゃった。
それを足が悪いのに登山ってすごい!って感心してみていた(後から杖の意味を理解した)。
下ったり上ったりしているうちに へたってきた私を見て友がそのへんに転がっていた棒をさしだした。
膝がわらうということも初めて理解した。
う~!あ~!
彼女は、持っていた軍手まで貸してくれたので四つん這いになって進んでみたり。
もう恥も外聞もなかった。
無口な彼女が
「ちょっとしんどいハイキング程度なんだけれどね」ぽつりと言った。
私は、トレッキングぐらいだと思ったのだけれど・・
棒を杖にうらめしげに彼女を見上げる。
「あのね 登山用の靴を買うから 杖を持って また来ようよ」
薄く笑っていた彼女の顔が忘れられない。

杖って 足が悪いだけで使うんじゃないんだなってしみじみこの時思った。

 

  木製パレット屋のつぶやき

 






 


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