旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

ガイドブック再考

2007年05月25日 | 旅行一般
旅行という言葉と旅という言葉には若干違う印象があると思いませんか。先日も友人とここの話題になったのですが、明らかに二人ともニュアンスの違いを感じながらも、それを説明する事はできませんでした。どちらかというと旅行というのは傍観者的に観察するような雰囲気。旅というのはそこに自らも飛び込んでいって体験し感じる事のようなイメージではないかと思いますが的確な表現は見付かりません。

旅というのが感じる事を中心にした体験であるという私のイメージが皆さんと同じであるとした場合、旅したい方に私が提案したいのは、とにかくガイドブックやインターネットの情報を見ない事です。そして、このブログのような記事も読まない事です。ガイドブックは確かに便利ですが、そこには旅行の情報は載っていても旅の情報は載っていないと考えて間違いありません。それから、ガイドブックやインターネットで得た情報を元に自分の行動を決めていくとしたら、結局は誰かが調査済みの場所に自分の行動を限定する事になりますから、何となくステレオタイプな体験(それでも体験しないよりはした方が良いですが)をする、あるいはガイドブックに書いてある事を確認する作業に終始するだけになってしまいます。

こう書いている私も海外を旅行しはじめた頃はガイドブック無しに旅する事など考えられませんでした。いつも黄色い表紙の例のガイドブックを片手に旅行していたわけですが、私にとって非常に幸運であったのは、今から20年以上前の日本では、まだまだガイドブックの無い国がたくさんあった事です。パキスタンやイランのガイドブックなどありませんし、インターネットもありませんから行きたいと思ったら、とりあえず行ってみるしかありませんでした。

とりあえず行ってみて発見したのはガイドブックが無くても人に教えてもらったり、旅行者同士で情報交換したりして充分泊まる所は見つかりますし、だいたい、行き先を決める手がかりもないわけですから、それすら現地で探すようなスタイルは逆に非常に自由で束縛の無い旅ができるという事でした。そんな足の向くまま、気の向くままの旅ができれば、自分の感受性を最大限に発揮しながら色々な事を感じ考える事ができるのです。

ただ、あまりにもその国に対する予備知識、そこで何かを感じる土壌が無いのも考えものです、ですからガイドブックを読むのではなく、その国の歴史に触れた本やそこを舞台にした本を読んだり、その国を舞台にした映画を見たりするのが良いと思います。

昔、フランダースの犬というアニメがありました。ベルギーを舞台にしたこの物語はどういうわけか日本人の心に刺さるところがあったようなのですが、この物語を地元、ベルギーで有名にしたのは日本人の旅人達です。物語を書いた人物はイギリス人ですし、ベルギーではほとんど知られていない話であったそうです。アニメが日本で制作されてから、ベルギーのツーリストインフォメーションを日本人の旅人が訪れるようになり、その人達が皆、"ネロの家はどこですか?"などと質問したようです。この質問を不思議に思ったツーリストインフォメーションの人達が調べた結果、フランダースの犬という物語がある事が判明して、今ではベルギーにパトラッシュとネロの銅像まで存在しています。アニメの公開が1975年という事ですから、この頃にヨーロッパを旅した人達は今よりずっと高額の費用を払い、今よりずっと難しい旅をしていたはずです。この人たちの行動力には脱帽ではありませんか。


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