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マイ・ファニー・バレンタイン

2014-01-31 02:24:00 | 音楽
もう幾つ寝ると、2月14日なわけです。聖バレンタイン・デーの虐殺の日です。警察官に偽装したアル・カポネの手下たちが、敵対するモラン一家の6人プラス無関係な1人を倉庫の壁際に立たせ、マシンガンの銃弾を浴びせて射殺しました。同様に、毎年、数千万人の男の恋心が乱射される「義理チョコ」を浴びて虐殺される日です。

クリスマスがケーキの日であるように、バレンタイン・デーがチョコレートの日であることを嘲笑いながら、スコッチウィスキーのバランタイン17年の美麗なラベルをカットグラスに傾け、マイ・ファニー・バレンタインをチェット・ベイカー風に口ずさんで涙ぐむ。そんな男が2014年の2月14日も、数百万人は出るでしょう。

ご存じでしょうが、マイ・ファニー・バレンタインは、バレンタイン・デーの歌ではなく、バレンタインという男の子の名前です。ロッテファンなら、ボビー・バレンタイン監督をすぐに思い出すでしょう。妻への暴行・監禁容疑で米国で逮捕され保釈中ながら来日した、ヤクルトのウラジミール・バレンティン外野手のような、間抜け面の彼氏を歌ったのです(しかし、バレンティンの名前がプーチンと同じウラジミールとは!)。

My funny valentine
Sweet, comic valentine
You make me smile with my heart
Your looks are laughable, unphotographable
yet your my favorite work of art

Is your figure less than Greek?
Is your mouth a little weak?
When you open it to speak,
are you smart?
don't change a hair for me
Not if you care for me
Stay little valentine
Stay
Each day is valentine's day


変な髪型で、口は半開き、もたもた喋り、ちょっとバカみたい、という男は山ほどいますが、そんなやつを好きになって、どうかそのままでいて、と願う女なんていやしません。卒業写真のような、いつまでも変わらないで素敵なあなた、とかいう女もいやしませんがね。卒業写真に見入っているのは、彼を探すためではなく彼女(自分)が目当てですからね。

我々男は等しく永遠に、煉瓦壁に立たされマシンガン掃射を待つモラン一家なのであります。しかし、無関係なのに巻き添えを食って殺された、通りがかりの眼鏡屋は気の毒です。チョコを差し出されてドギマギしていたら、「彼に渡して、お願い」とお使いを頼まれる彼の友人みたいなものでしょうか。

Youtube で検索すると、マイ・ファニー・バレンタインの歌や演奏は山ほどアップロードされています。つまり、それほど手垢にまみれ、オリジネリティを出しにくい、どうしても誰かに似てしまう難しい歌のはずですが、これはかなり自分の歌にしているのではないかと。

Alice Fredenham


ドラッグで骸骨のようになった晩年のチェット・ベイカーではなく、輝くような美青年だった頃のチェット・ベイカーを意識していますね。アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」をリメイクした「リプリー」の場面です。歌っているのは、マット・デイモン。

matt damon


ホームレス女が街頭で歌っているのではありません。イヴァ・ビトヴァというとても変わった歌手です。今回、検索してはじめて知りました。いずれ、「今夜はイヴァ・ビトヴァ」をやりたいですね。

Iva Bittova


(敬称略)

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