6月9日の昼に、フラッと出かけたわさび。
夜になっても戻らず、朝帰りの前科があるので、
とりあえず、その日は寝たのですが、
おきても、全然帰ってくる様子がなく、
10日の夜も戻ってきません。
いよいよ、心配に。
子供の時も、飼い猫が戻ってこないことを経験していたけれど、
まさか、メスのくせにそんなことがあるなんて…。
でも、山の中には毒蛇やスズメバチもいるので、覚悟もしなくてはと思いました。
危険性を考えると、室内で飼うという選択肢もあったけれど、
裏磐梯に来てからの猫たちの生き生きとした姿を見ると、
リスクはあっても、猫達はこのほうが幸せなんだろうなと思っていました。
だから、何があったとしても、わさびは猫生を満喫しているだろうと思うと、
なんだか、心も静かな状態でした。
そして、わさびが戻ってこようが来るまいが、
たぶん、私にはやることがあるような気がしました。
そして、無性に周囲を歩き回ってみたくなりました。
わさびを探すという目的ももちろんあるのだけれど、
周囲は湿地、森、山、湖…。どちらへ行ったらいいかわかりません。
でも、わさびの気持ちになって歩いてみたくなりました。
ついでにいつでも山菜が採れる装備をして。
最初は湿地を歩きました。アザミがたくさん出ていて、
これは山菜として食べられるものです。
立ち止まりながら、
「くるみちゃんの木登り事件」の木に出会ったので、
わさびのことを聞いてみました。
なんだか、そこにいると、わさびはちゃんと帰ってくるような気持ちになりました。
強く信じるでもなく、落胆するでもなく、
なんとなく淡々とした気持ちで、やるべきことをやることが大事と思い、
失踪1日目は過ごしました。
でも、庭に苗を植えていると、急にわさびのチビの時の姿が浮かんできて、
わさび的には猫生満足してるかも知れないけれど、
わさびがいなくなったら、くるみもさびしいし、私たちもさびしいし、
大自然の中で、一日中過ごしているわさびから、
教えてもらうことはもっとあったはずなのにと思うと、急に涙が出てきてしまいました。
もしも、わさびがこのまま帰ってこなかったら、
自分はどう思うんだろう…。
たぶん、花や木々をみても、鳥達の声を聴いても、
全部がわさびと関係あるものに感じるんだろうなと。
でも、それは、帰ってこようが来るまいが、
自分の中では,それぐらい、自然を身近に感じることが、
今の自分にとって大事なことなのだろうなと思いました。
ツイッターにわさびが戻らないことをつぶやいたら、
「帰ってくるといいね」「大丈夫だよ」という皆の言葉に救われ、
母からも心配の電話が来て、
実家の猫はメスなのに平気で3日も帰ってこなかったとか、
いろいろ聞かされ、少し気分が軽くはなっていました。
そんなこんなで、帰ってこなくなってから2日目の朝。
「もっと、周りを歩いてみよう」
「気になる方角があるので、そっちに行ってみよう」
と思い、朝、目が覚めました。起きてぼーっとしていたら、
「調子に乗って遠くまでいってみようと、遊びでフラフラいつも行かないところに
行動範囲を広げてみたものの、どこかで迷っている」という感じがしました。
行きたい方向があったので、相方と二人で、熊鈴をつけながら、
家の周りをうろうろ。ついでに山菜を採ったりして。
ふと思いたって、はす向かい(といっても遠いのです)の方に、
あいさつにいって、その奥にある林道を歩いてみたくなったので、
入っていくと、なんとなく、わさびが歩きそうな道になっていました。
しかも山菜がいっぱい。
わさびのことは心配だし探してる途中なんだけれど、
山菜を採り、ブナの木を見て、喜んでみたり、
なんだか、ワクワクした気分になってきたので、
心配なのにおかしいなと思っていたら、
相方が、「悲壮な感じで探すより、わさびがそこを歩いたときの
楽しい感覚と同調しないと見つからない感じがする」といいました。
本当に、ここにはたくさんの生き物が住み、
特に植物は、わたしにとっては、みんな大事な宝物で、
アロマやハーブやフラワーエッセンスで使われているものや、
一つ一つの植物の個性が大事に思えて、
本当にここに来てよかったと思いながら歩きました。
帰り道、近所のおばあさん達数人に
「どこまで山菜取りに行ってきたんだい?熊が出るからあまり奥に行かない方がいいよ」
言われたので、たぶん、こんなことがないと、
来なかったような場所だから、わさびに感謝だよなと思ったりして。
ところが、わたしたちどこで間違ったのか全くわからないのですが、
帰り道を間違えたのです。森の中で迷ったら、こちらも大変。
もと来たところまで、引き返そうかと思ったのですが、
川が近くにあったのと、近所の人の草刈機の音がしていたので、
間違えた道も、方向がわかるし、出られると思い進みました。
でも、肝心のわさびは見つからず、
用事があったので、お昼過ぎに家に一度戻りました。
午後から来客があったのですが、夕方17時を過ぎてから、
相方が「自分達が迷って出たあたりをもう一度見たい」といって出かけようとしたので、
熊が出てくる時間だからとめたのですが、熊鈴があるからといって、
自転車で出かけていきました。
それから、程なくして携帯に連絡があり「わさびがいた!」という知らせ。
嬉しいというかなんと言うか。迎えに行くと傷一つなく元気でした。
ちょっとやせていたけれど。
相方は「わさびも自分と同じく迷ったんじゃないかと思って
その場所をみたくなった」とのこと。
そのエリアは、私も気になってた場所でもあるし、
いろんなサインが、そこを指し示していたのです。あとで振り返れば。
そして、自分たちが迷ったり、いろいろなことがあった偶然が
重なって、見つけることができました。
本当に、自然界にも、心配してくれたり、祈ってくれた人たちにも感謝をしたい失踪事件でした。
それから、自分の中の微細な感覚って本当に大事にすべきだなと思いました。
わさびは、ただいま、爆睡中。