英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

竜王位獲得、永世七冠達成!(追記しました)

2017-12-05 17:59:56 | 将棋
第30期竜王戦七番勝負第5局、 3勝1敗で迎えた挑戦者・羽生棋聖が制し、竜王位を獲得した。終局時刻は16時23分。羽生棋聖は通算7期目の竜王位を獲得、永世竜王の有資格者となり、永世七冠を達成した。




本当に嬉しい……。


 まず、第5局を簡単に振り返ります。

 11月29日にA級順位戦で対局するという間の悪さ、しかも、先手後手も同じ。将棋界では、不思議とタイトル戦で対戦すると他の棋戦でも顔が合うということが多い。羽生-渡辺戦でも多いような気がする。タイトル戦に登場する両者なので、トーナメントの上の方や挑戦者決定リーグで対戦することが多いので、必然と言えば必然かもしれない。

 本局は、その順位戦とほぼ同じ進行を辿った。

 順位戦との違いは▲9六歩と△3一玉が加わっている。順位戦では▲4七金と右辺をカバーし、後手の渡辺竜王が△6五歩と先攻した将棋となった。
 しかし、本局はいきなり▲4五銀!
 この手には△5五銀とかわす手があり、さらに、桂が跳ねた後△3七角と打たれるキズもあるので、指しにくいと見られていて、青野九段も驚く仕掛けであった。最近、≪えっ、この段階で?≫と思われるような仕掛けが多い。


 案の定、△5五角とかわされ、さらに、△3七角と打たれてしまい、≪仕掛け、失敗?≫と思われる展開。検討陣の研究では≪仕掛けは成立していそう≫との見解であったが、私が実際に先手を持ってこの局面を迎えたら、≪仕掛け失敗しちゃったよ~。1筋の突き捨ても入っていないし…≫と悲観したことだろう。
 △3七角に、▲2九飛△4六角成と銀取りに馬を作られ、それを受けて▲4九飛と進んだ。
 そこで△1五歩(第3図…封じ手局面)。

 堂々と端歩を取った竜王らしい手だが、後の展開を考えると、落ち着き過ぎの緩手だったように思う。

 封じ手は▲4六飛が有力で、検討陣や将棋ソフトの評価値も先手が良さそうという見解だった。

 2日目、封じ手開封。若干、ほんと若干、疑ったが、▲4六飛。
 以下、ほぼ予想手順通り進み、第4図。

 直前、活用が難しいのではと思われた4六の銀を5七に捨て、△5九飛と王手金取りで駒損を回収。
 玉の近くに龍がいて、8一の飛車の潜在力も侮れない。
 しかし、8一の飛車の位置が、2三の地点を攻められた時の位置関係が悪く(▲4五角の両取りがある)、先手が優勢らしい。


 第5図の▲1三歩が厳しく、第6図では▲4五角の他に▲6七角の筋もあり、先手は手段に事欠かない。ゴール近づいているようだが、テープを切るまでは油断できない。無事ゴールのテープを切るのを祈る……




………………16時23分、渡辺竜王投了(仕事中なのでリアルタイムではなかったが)





 夏以降、王位戦で菅井七段、王座戦で中村太六段に敗れ、相性が良かった山崎八段に、JT日本シリーズ、NHK杯と連敗するなど、不安材料は多かった。
 しかし、王座戦第3局や順位戦の勝利局など、勝局の内容が良く、徐々に復調の兆しがあった。ただ、竜王戦での渡辺竜王の強さが怖い。本調子ではないというか、不調っぽいが、まったく安心はできない。正しい将棋ファンの心構えではないが、≪不調のままでいてほしい≫という思いが強かった。

2008年、世紀の大勝負に敗れ、“永世竜王”を渡辺竜王に先んじられる(しかも、3連勝4連敗のおまけつき)
2010年、再び挑戦するも、2勝4敗で敗退。
2013年、挑戦トーナメント準決勝で森内九段に敗退(森内九段、竜王位奪取)
2014年、1組優勝後、挑戦決勝3番勝負で糸谷六段に1勝2敗で敗れる(糸谷六段、竜王位奪取)
2015年、1組優勝するも、準決勝で永瀬六段に敗退。(挑戦者決定3番勝負で永瀬六段を下した渡辺棋王が竜王位を奪還)

と、竜王戦に於いて歯がゆい思いをしてきた。

 今回は≪最後のチャンスかも≫と羽生棋聖自身も頭をよぎったとのこと。今期の勝局を考慮すると、まだチャンスはあると思うが、竜王位挑戦権獲得までの険しい道のりを思うと、是が非でも今期、奪取したい。
 「王位、王座を失っても竜王位を獲得できればおつりがくる(中日さん、日経さん、ごめんなさい)」などと不届きなことを考えていたが、叡王戦予選、棋王戦トーナメント、王将戦予選、NHK杯で早々と敗退し、あとはA級順位戦と朝日杯ぐらいしか残っていないので、ここで敗れたら≪発狂するかも≫という不安が過りっぱなし。
 前人未到の永世七冠達成は嬉しいが、純粋に竜王位を獲得できて本当に良かった。本当にうれしい。

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10 コメント

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ついに… (zoran)
2017-12-05 19:34:54
こんばんは。
今帰宅し,英さんの記事を読みました。
ついにやりましたね。永世7冠,達成です。
羽生ファンとしては,とにかく嬉しいです。
英さんと(勝手に)喜びを共有できて嬉しいです。

その瞬間は,棋譜中継を見ていました。
本当はネット中継を見たかったのですが,
その環境がなく棋譜だけでしたが,
その瞬間には立ち会えました。感動でした。

正直なところ,あの3連勝4連敗の後,
もう一度のチャンスも2勝4敗で逃し,
もう永世7冠は無理かも知れないと,
心の片隅では思っていました。
今年も若手に2冠を奪われ棋聖1冠となり,
「衰えた」と言われた羽生さんでしたが,
やってくれました。なんて凄いのでしょう。
書きたいことは山ほどあるのですが,
とりあえず,あと一言。

羽生さん,竜王奪取,そして永世7冠達成,
ほんとうにおめでとうございました。

就位式には,ぜひ行きたいと思っています。
返信する
嬉しいです ()
2017-12-05 21:09:54
zoranさん、こんばんは。

>ついにやりましたね。永世7冠,達成です。

 ええ、ついにやりました!まさに「ついに」です。

>英さんと(勝手に)喜びを共有できて嬉しいです。

 はい。この記事はzoranさんを思い浮かべ、アップしました。たの羽生ファン、将棋ファンの方も頭に浮かびましたが、zoranさんとは最近の羽生さんの苦難などを分かち合ってきましたから…

>もう永世7冠は無理かも知れないと,心の片隅では思っていました。

 確かに、zoranさんの仰った7番勝負での2度の敗退、さらに、挑戦者決定トーナメントで良いところまで進出しながらも、挑戦権を逃してきました。
 そして、今夏以降、菅井七段、中村太六段にタイトルを奪われ、竜王位七番勝負で敗れたら、呼吸が止まってしまうのではと思っていました。

 ほんと、良かったです。

>就位式には,ぜひ行きたいと思っています

 いいなあ…。
返信する
ありがとうございます (zoran)
2017-12-05 21:59:05
再度,こんばんは。

>この記事はzoranさんを思い浮かべ、アップしました
なんと嬉しいお言葉でしょう。ありがとうございます。

就位式については,過去何度も「行こうかな」と思いつつ,結局これまでは一度も行っていないのです。でも,今度こそは行きたいと思うのですが,凄い競争率になりそうですね。申し込みの先着順なら見逃さずに申し込まないと…。

英さんほどの方なら(って,実はほとんど存じ上げないのですが),きっと過去に羽生さんにお会いになっていらっしゃいますよね。
返信する
大した羽生ファンではないです ()
2017-12-05 22:55:28
zoranさん、再びのコメント、ありがとうございます。

羽生さんとお話ししたのは1度だけ、しかも、ほんの一瞬。
2009年の女流棋士誕生35周年記念パーティです。
http://blog.goo.ne.jp/ei666/e/118ad9e685f09a88c558e8f65832a8f1
http://blog.goo.ne.jp/ei666/e/a1dda5e494f454a5b26343aa3d092609
など、記事にしています。

 この他は、2007年の王位戦と2013年の名人戦(ブログ内検索で「東京紀行」で辿れます)で姿を拝見した程度です。
 私の代わりに就位式に是非。
 あ~あ、招待されないかなあ(笑)
返信する
A級順位戦11回戦 (Stanley)
2018-03-03 11:38:05
英さん、こんにちは。

昨日のA級順位戦は凄いことになりました。6人によるプレーオフは前代未聞!
これで羽生竜王が2局勝てば挑戦者。これはチャンス到来かな?と思いました。
三浦九段が残留し渡辺棋王が降級したのも、例の疑惑事件を思うと意味深です。

スタンリー
返信する
「何ということだ?」と言いたくなる結果でした ()
2018-03-03 16:06:12
Stanleyさん、こんにちは。

 久保王将、豊島八段が共に負けると、羽生竜王を含めたプレーオフという目もあることは承知していましたが、両者の負けを願うのはさもしいと思い、昨日は深く見ないようにしていました。(ニコ生もAbemaTVも視聴せず、名人戦棋譜中継のみ)
 ただ、対戦相手が広瀬八段、深浦九段と手強いので両者敗局も充分あり得ると思っていました。
 それにしても、6勝4敗が最大限の6人になるとは!羽生ファンとしては、行方八段に頑張ってもらい、強敵稲葉八段のプレーオフ進出を阻んでほしかったです。そうなれば、挑戦権獲得には1勝で済みますし。

 渡辺棋王の陥落も衝撃です。
 不調、降級のプレッシャー、さらに対局者が三浦九段という精神的圧迫もあったと思います。
返信する
A級順位戦プレーオフ第5回戦 (Stanley)
2018-03-22 05:36:16
英さん、こんにちは。

A級順位戦プレーオフ最終戦に、羽生竜王が稲葉八段に勝利し、挑戦権を獲得。
素晴らしいことが現実になりました!第76期名人戦七番勝負が超楽しみです。
私は羽生竜王が奪取して、タイトル獲得数通算100期の記録を達成!と予想。
如何でしょうか?ではまた。失礼します。


返信する
諦めていたのですが ()
2018-03-22 17:54:51
Stanleyさん、こんにちは。

>素晴らしいことが現実になりました!

 素晴らしいです。
 王位戦、王座戦と失冠した時は視界が暗くなりました。せめてと言うか、竜王位だけは是が非でもと思っていましたが、まさか、名人挑戦権を獲得できるとは!
 豊島八段が鉄壁な強さで全勝しており、羽生竜王はイマイチで2敗。その後、豊島八段の強さに陰りが出て、もしやと思ったら、まさかの連敗。特に佐藤康九段戦の敗局は大誤算。

 奇跡的にプレーオフになりましたが、豊島八段、稲葉八段を連破するのは、難しいかもと思っていました。


 椿山荘に応援に行きたいです。今回は前夜祭に行きたいと思っているのですが、抽選に通らないとダメなようで……時間的にも金銭的にも苦しい………う~ん。

 まあ、それはともかく、

>羽生竜王が奪取して、タイトル獲得数通算100期

 これは、実現してほしいです。
 羽生竜王の棋力に陰りが出てきているのは事実で、勝率も落ちていますが、強い時の強さは、やはり、棋界一です。直近では、プレーオフの対豊島戦は鬼神のごとくの強さでした。強い時の強さは、却って強くなったとさえ感じます。
 その強い時の羽生将棋が4回出れば、名人復位です。十分あり得ます。
 ただ、佐藤天名人との2年前の7番勝負では、「勝てる気がしない」とまで感じました。
 でも、今回は、天彦将棋に対応できるような気がします。対菅井、対中村戦での敗局も強さの糧になったはずです。
返信する
名人戦第1局 (スタンリー)
2018-04-13 15:36:25
英さん、こんにちは。

名人戦第1局が始まり、見事羽生竜王が先勝しました。素晴らしいです!
横歩取りの将棋で序盤から激しい戦いで、一時は佐藤名人が有利だったようです。
非常に難解で、素人の私には敗因とか分かりませんが、羽生さん先勝出来て良かった。
今回は4勝1敗で挑戦者、羽生竜王が奪取すると予想していますが、どうなりますでしょうか?
返信する
よかったです ()
2018-04-13 21:12:50
スタンリーさん、こんばんは。

 非常に難解な将棋で、佐藤名人に分がある将棋のように感じていました。
 しかし、▲4八銀が指されると、評価は一変。「後手が簡単に勝てない」と言うような雰囲気に。馬を消す変化に読みを深く入れていた佐藤名人も愕然としたのではないでしょうか(あくまで、私の想像です。でも、控室は見えていなかったはず)
 この手が、この局面が見えていたからこそ、▲5八銀と打たずに、▲3八玉と寄ったのではないでしょうか。

 今の羽生竜王ですが、強い時には恐ろしく強いのですが、不出来な時も多くなりました。
 恐ろしく強い目が出る確率が6割とすると、7番勝負では4.2局となります。
 第1局を勝ったことは非常に大きいと思いますが、まだ1勝なのでこれからです。
返信する

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