英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2020A級順位戦 羽生九段-佐藤天九段 その1

2020-07-29 17:12:25 | 将棋
柔道の組み手争い、相撲の前捌きの応酬のような将棋が延々と続く、難解な将棋、消耗戦だった……消耗の末、スキが生じた羽生九段が土俵の外に一気に持っていかれてしまった……そんな負け方で、ずっと一日、力を入れて観戦していたが、終盤のぎりぎりの勝負を観ることができず、欲求不満状態に陥ってしまった。


 角換わり腰掛銀……例によって、私には理解不可能な間合いの探り合い(先手玉は6八から一旦6九に引いた後、7九→8八に入城。後手玉はさらに複雑で、4二→4一→5二→4二と1回転。銀も6三→5四→6三と出戻り)の後、▲4五桂と跳ねて仕掛ける(跳ねた後に▲3五歩と突く手順。昭和なら“手順前後”と言われそう)。
 この後、▲5五銀と進出し後手からの△4四歩の桂取りは防いだものの、先手の銀桂が前のめり気味で不安を感じるのは私の昭和感覚のせいか?
 歩も手持ちにないので、攻めの常套手段の▲3三歩の打ち込みもないぞと思っていたら…

 後手が自ら△3三桂と跳ねて桂交換を望んでくるとは……

 その後、玄妙な1八の角打ち(間接的に後手の飛車や6三の地点を狙う)から後手陣を攻めるが(定跡らしい)、佐藤天九段も2、3筋に歩の壁を作り対抗。この間、手にした桂を8四に打ち、先手陣を揺さぶる。先手の羽生九段も▲6七金と先手玉の側近の金を繰り出し桂跳ねを防ぎ、玉を7八に寄せて△9六桂の強襲に備えた。しかし、佐藤九段は構わず△9六桂を敢行!

 予め、先手玉を躱しているので、手抜きができ、タイミングを見て▲9六香と桂を手にすることができる(ちなみに、△9六桂に▲同香と応じる手には、△9五歩と突いて強引に香を手に入れ△5四香や△6六香と打ち込むのが狙い)。
 それにしても、△9六桂は大胆というか果敢というか……
 そして、直後の羽生九段の▲4五角も不思議な一手。

 △4四歩と突かれると退却を余儀なくされる。実戦も△4四歩と突かれ▲3四歩とくさびを打ち込んだものの、角を撤退させられた後、△3四金とせっかく打った歩を払われてしまった。1歩損プラス数手の損で先手としてはバカバカしいやり取りのように思われるが、羽生九段の将棋には時折観られる手法である。
 △3四金と歩を取られた手に対し、羽生九段は▲4五歩と突く。

 4筋の勢力は「先手・角金歩」対「後手・玉銀歩」と拮抗しているが、玉が関わっている分、後手は強く応じにくい。よって、▲4五歩に対して、佐藤九段は△3二玉と譲歩(先の▲4五角は最善手ではないと思うが、譲歩を引き出せたので結果的には成功)。…以下、▲4四歩△8八歩▲4六桂△2四金▲7七桂△4二歩と進む。佐藤天九段も△8八歩を利かせたものの、△4二歩と謝るのは相当の屈伏。

「その2」に続く

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