ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

桜田門外ノ変

2010-10-19 10:53:09 | さ行
今年は時代劇映画が
ホントに多いですねえ。

「桜田門外ノ変」48点★★


安政7年(1860年)。
水戸藩士・関鉄之介(大沢たかお)は
18名の同志たちと
徳川幕府の大老・井伊直弼(伊武雅刀)を撃つべく
桜田門に向かう。

襲撃の現場ですべてを見届けた鉄之介は
さらなる倒幕計画のため
京都へと向かうが――。


かの有名な歴史的事件の発生から
その現場で起こったできごと、
顛末までをつぶさに描く作品。

なるほど
よく通りかかるあの場所で
ほんの150年前にこんな事件が起こったんだなあという
実感を呼び起こされ、
驚きはありました。

しかしですね
歴史のお勉強にもなるし、との思いもあったけど
いやはや
本当にここまでお勉強だとは……(苦笑)

作品自体が
歴史を変えんとした志士たち全員への
畏敬を表現することを目的としており

本当にひとりひとりの死に様を
しっかり映してるんです。

それはもう
卒業証書がひとりずつ
読み上げられるのを
延々聞いているがごとき丁寧さ。

それを2時間16分やられたら
息子の卒業式ならいいけど
部外者ならアクビも出ようってものです。

ただ子細なのは確かなので
相当な歴史好き、しかも
古地図や家系図レベルまで
いってる人向きかもしれません。


★10/16から全国で公開中。

「桜田門外の変」公式サイト

どうでもいいけど
大沢たかおのちょんまげ姿を見ながら
ドラマ「JIN」の続きはどうなったんかいなと
思わずにいられませんでした。

え?来年4月?早く見せてくれ~~!
コメント (2)
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わたしの可愛い人―シェリ

2010-10-18 10:27:45 | わ行

ま、年の差愛は
いつの時代もムズカシイやね、と。

「わたしの可愛い人―シェリ」68点★★★

1906年、ベル・エポック時代のパリ。

ココットと呼ばれる
高級娼婦レア(ミシェル・ファイファー)は
友人(キャシー・ベイツ)の一人息子
19歳のシェリ(ルパート・フレンド)と恋に落ちる。

愛の達人レアは若いシェリに
愛のなんたるかを教える役目だったのだが

意外にも二人は
6年も付き合うことに。

だがそのうちに
シェリに結婚話が持ち上がり……。


40後半の女性と19歳の美青年の愛……

女にとっては夢のようなお話で
この時点ですでに
男性群はひいてしまいそうですが
それはちょっともったいない。

のっけから軽妙な語り口の
弁士調ナレーションで始まり

ハリウッドの名バイプレイヤー、
キャシー・ベイツの活躍といい

決してドロドロ愛ではなく
意外に「愉快」という印象であります。


原作は20世紀を代表する
女性作家コレット。

文学値も高く
単なるハーレクイーンロマンスではない
女性と老い、そして愛を含めた
非常に示唆のある、内容になっています。

ラストもすごく気に入りました。


まあ単純に
ルパート・フレンドのあまーい
ハンサムぶりを楽しむのもいいですし
(なんか石田衣良氏に見えちゃって
しょうがなかったですが(苦笑))

ミシェル・ファイファーキレイですしね。
しかし52歳ですよ。
すっごい細っ。


常に恋愛第一線に立つには
やはりそれなりでないとということを
学びましたハイ。


★10/16からBunkamuraルシネマで公開中。ほか全国順次公開。

「わたしの可愛い人―シェリ」公式サイト
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ルイーサ

2010-10-17 13:06:16 | ら行
アルゼンチンのもたいまさこ
みたいな人が主人公です。

「ルイーサ」68点★★★


きちんとスーツにきっちりひっつめ髪
質素だけど清潔な部屋で
猫のティノと暮すルイーサ、60歳。

朝起きて、ティノにごはんをあげて
バスで“やすらぎ霊園”に出勤する。

そんな彼女の判で押したような毎日が
ある日突然崩壊する。


朝起きるとティノが冷たくなっていた。

さらに
なんと勤続30年の職場を
定年前にしてリストラされてしまったのだ。

ドン底に落ちたルイーサ、
さあ、どうする!?


笑いもあるし
孤独なルイーサを助けてくれる
人々もいる。

決して陰気な映画ではないけれど
「どっこいがんばるおばさんの、ほのぼの映画」
を想像すると
ちょっと遠い、というのが正直なところ。


過去にもつらい経験をしてるだろうと
想像させるルイーサの奮闘は
かなり空回り気味で
マジに気の毒だったり

それに描かれる
ブエノスアイレスの町や地下鉄の風景が
どうにも陰鬱としてるんですよ。

地下鉄の駅には物乞いがいて
地下通路には物売りが溢れてる。

貧しい社会の描写は多々あれど
この映画には
どこまでいっても色味がない
グレートーンな暗さを感じる。

これは
政情不安の歴史が深い
アルゼンチンというお国柄なのか

これが初監督作という43歳、ゴンサロ監督の味なのか。

そこで
アルゼンチンの映画ってなんだろ?と思ったら
そうだ!番長のベスト映画
「蜘蛛女のキス」じゃないか!

あ、なんかわかる気がする。
あれも悲しい話だったもんな~


ただ不思議な吸引力があるのは確か。
最後には、ちゃんと光が見えますしね。


ちなみに
この映画の発端は
地下鉄会社が募集した
地下鉄を舞台にした脚本コンクールだそう。

そう考えるとちょっとおもしろいな。

★10/16から渋谷ユーロスペースで公開中。ほか全国順次公開。

「ルイーサ」公式サイト
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エクスペンダブルズ

2010-10-16 16:19:39 | あ行
さっそく観に行ったかたも
多いのではないでしょうか。

「エクスペンダブルズ」69点★★★

シルベスター・スタローンの呼びかけで
超ド級のメンツが集まった
筋肉系アクション映画です。


依頼を受けて
危険な仕事を引き受ける
エクスペンダブルズ(消耗品軍団)。

リーダーのバーニー(シルベスター・スタローン)
謎の男(ブルース・ウィリス)から
とある独裁政権を壊滅させるよう頼まれる。

だが、それはかつてないほどの
危険を伴う大仕事だった……


もうとにかく“ザ・肉体派”!

ジェイソン・ステイサムに
ジェット・リー
ミッキー・ロークにドルフ・ラングレンetc・・・

もう、これだけのメンツを集めただけで
90点なのかもしれません。


近年のCG主流アクション映画に
「物申したる!」と奮起した
スタローン先生の意図と意欲が明確に伝わってくるし

アクションがいい意味でズッシリ重く
肉体感覚をともなって迫ってきます。

こりゃあ
ひょろりとしたヤツなど
生き残れませんわな(笑)


例えばこのなかに
「トランスフォーマー」のシャイア・ラブーフや
「インセプション」のジョゼフ・ゴードン=レヴィットなんかを
放り込んでみたらどうなるか~なんて)

くだらない想像をして
笑ってみたり。


チームのマスコット的存在で
なにかといじられるジェット・リーのお茶目さと

一言に重みある
ミッキー・ロークの一人語りシーンが
カッコよかったです。

シリーズ化するようで
次回はもっとあの人にも登場して欲しいなあ。


ただまあ
銃にバイクにナイフに肉弾戦という
ゴリゴリの男臭さなので

デートの際は
ちゃんと理解してる女の子を連れてかいないと
退屈させちゃうでしょうな。


★10/16から全国で公開中

「エクスペンダブルズ」公式サイト
コメント (6)
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死刑台のエレベーター

2010-10-13 11:35:47 | さ行
これ「いつか読書する日」の監督なんだ……。

「死刑台のエレベーター」63点★★☆


1957年に作られた
超名作映画のリメークです。


大企業の会長夫人(吉瀬美智子)
会長の部下、時藤(阿部寛)と愛人関係にある。

夫人は時藤に
会長を自殺にみせかけて殺すように持ちかける。


完全犯罪のはずだったが
思わぬところで運命の歯車が狂い出し……。



話も展開もオリジナルに忠実。

最近、オリジナルを見直してなければ
もっとハラハラできたかもと
ちと残念。

でも
「あの人を殺して私を奪いなさい」は
名ゼリフ賞はいくかもね。


小説→映画でも、映画→映画でもそうですが
特にミステリーを元にしてるのって

ラストが違うとか、相当に換骨奪胎してるとかでないと
やはり衝撃度も、おもしろ味も減少するのはいたしかたないところ。

でもこの映画が狙ったのは
とにかくオリジナルを
どう美しく再構築するか。

それをわかって
見に行くのがいいと思います。


実際、本作は
吉瀬のシャープなラインの赤いコートが
映画の雰囲気すべてを決定している。


常に髪の毛1本乱さない
完璧な美しさを維持し続ける吉瀬は

現実味はないけれど
映画的アイコンとしては
成功していると番長は思いました。


こういうのって
内容いかんよりも
意外と脳裏に焼き付いて離れなかったりするんですよね。


異国情緒漂う横浜の官庁街や元町など
ロケ地選びもがんばっている。

ただ
本筋にからむ
若いカップル(玉山鉄二&北川景子)の暴走への過程や背景は
やはり書き込みが足りないなあ。


この二人の存在の意味づけって
重要かつ難しいところですからねえ。
ここがんばって欲しかった。


それにしても
53年経ってもうまい話だなあと感心します。
本作と同時に
オリジナルのニュープリント版も公開中。
(10/9からシアターイメージフォーラム)



未見の場合はどっちを先に見るか
悩みどころですなあ。

★10/9から全国で公開中。

「死刑台のエレベーター」公式サイト
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