守り人シリーズの外伝として昨年11月に発表されたもの
本屋の中を探しても見つからないので店員さんに尋ねたら、なんと児童文学コーナーに!
確かに本を開くと、ことごとく漢字にルビが施されており、これまで読めない漢字は飛ばしていたので、正直とても助かる。
しかし内容は、政治的なやりとりやら人の生き方やら、相変わらず奥深くて、これを「児童」がどれだけ理解してくれるだろうか、と不安はあるが、それでもこのことを少しずつでも理解してくれたら、きっと読んだ子供は豊かな生き方ができるだろうと思う。
先の見えない民族同士の争いに昔、ひとりの賢者が相手国に出向いて結んだ和平同盟だったが、相手国で命を落とす。しかし和平実現のためにその死因は伏された。にもかかわらず数百年たった今、再び争いがぶり返そうとしている。
民族間の争いは根深く、戦いは恨みしか生まず、民の生活は豊かにならない。平和を維持するためにどのような政治的駆け引きをするか。
このあたりは上橋さんらしい広い視野で物語は展開する。
これを書いた時、上橋さんはお母さまを亡くされたそうで、物語の後半には、言葉で伝えられなかったことでも、その人に育てられたことによってすでに体の中にあって、ふとしたことで知ることができる、というような描写があり胸が熱くなった。