女性動物学者が書いた殺人ミステリーです。
おおよそ人間は、神に近い特別な存在だと考えがちですが、著者は人間のあらゆる行動を、野に住む動物と同じ目線でとらえ描いています。
たとえば、差別や集団いじめは七面鳥の群れの行動で例えたり、着飾ったり、派手な車やボートに乗る男たちは繁殖期の雄に過ぎないようです。
主人公の少女カイアは、幼いころから湿地に一人取り残され暮らし、その豊かな自然は、彼女を湿地の生物学者に育てあげ、感情豊かな詩人にもしたのでが、しかし同時にその思考は動物的で、雄の求愛行動、雌の雄を利用する様々な形は、一見残酷なようでも自然の法則の中ではごく当たり前のことだったのでしょう。
派手なオスの典型であるチェイスは、カイアから贈られた貝のペンダントをいつもしていたなんて、実はカイアを愛していたのかもしれなあ。
結末は驚く展開でしたが、法律など人間の物差しに収まらない、カイアの本能に偽らない行動を見たような気がしました。
ホタルのメスは、仲間のオスを呼ぶ光り方と変えて別種のオスを呼ぶ光り方をしてそのオスを食らい、カマキリのメスは、交尾しながらそのオスを食らう。自然界のメスは強いのです。
物語に登場した鳥たち
オオアオサギ、七面鳥、シラサギ、セグロカモメ、カラス、ハチドリ、ガチョウ、ネッタイチョウ、ハクトウワシ、ハクチョウ、ムクドリモドキ、アメリカワシミミズク、アオカケス、クーパーハイタカ、カッショクペリカン、アカオノスリ、コウノトリ、マガモ、ハクガン
2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位
ザリガニの声が聞こえるほど自然がステキなところという意味らしいです。
俳句の世界にもあるのですね。
知りませんでした。
そんな感性がすごいと思います。
ザリガニの鳴き声はどのようなものなのでしょうね
俳句の世界では
螻蛄(おけら)や蚯蚓(みみず)が鳴きます。
豊かな自然の中で耳を澄ませば
きっと聞こえますよね。