2017/3/3
「観劇三昧・2017手のひらフェスティバル」という企画に、全力で参加してみました。
これは、演劇配信アプリ「観劇三昧」にて、各団体からエントリーされた81作品から、視聴者の投票に基づき、大賞や部門賞を決めようというイベントです。(詳細はコチラ)
作品はパソコンやスマートフォンから見ることが出来ます。
フェスの応募期間は2/1から2/28まで。期間内で81作品中42作品視聴しました。
フルタイムで働く身としてはギリギリの視聴数でした。
視聴にあたって自分の中でいくつかルールを決めました。
「必ず400字程度の感想文を書くこと」
「必ずいずれかの部門賞に投票すること」
「暫定ランキング上位の作品はできるだけ避けること」
「配役がわかるものについてはメモを残す」
感想とメモについては、備忘録にしたいのと、ある程度責任感を持って観られるように。
投票は、自分もどちらかというと作品の提供側の人間なので、心構えとして上目線で優劣を語りたくなかったこと。
暫定ランキング上位の作品を避けたのは、イベントトップ画面に上位作品が表示されるので、上位の劇団がより有利になる仕組みだったように感じたからです。
あ、あと、自分の活動エリアである北海道の2団体はひいきして選びました。
どちらも劇場で見ているし面白いのは知っているので、あえて映像で見ることにためらいはあったんですが、投票もしたかったし、結果、いろいろ発見もあってよかったです。
ただ、やはり他エリアの未知の強豪団体とたくさん出会えたのは刺激的でした。
過去作を見たことがあるのはたった5団体(yhs intro 宮川サキ一人芝居 笑いの内閣 シアターモンゴルカンパニー)。ライブだと3団体のみ。
全体の1割程度。あとはほぼ未知です。
こんなに知らない団体の作品を一度に見たのは初めてです。
しかも、フェスには「団体一推しの作品」が提供されるわけで、どの作品にも必ず見所があります。
自分の立ち位置を客観的に見られたのも重要なことでした。
各作品の上演時期は2007年~2016年、短い作品は20分、長いものだと2時間34分と、同じレギュレーションで比べるのは完全に無理があるんですが、こんなに幅広い作品を横一列に比べられるのもWEB配信ならでは。
一方で、集中力は劇場で見るより20%くらい減。
どうしても自宅で古いノートPCで見るとなると、作品だけに集中しにくい環境になってしまいます。
視聴から感想文を書くまでそう何時間もかけられないので見返すにも限界がありました。
こういうことを書いておいてなんなんですが、せっかくここまで観てきたのだから、自分なりのアカデミー賞をやりたいと思います。
観ていない有力作品も多いし、自分でも「おまえごときが」という気持ちはありますが、この一ヶ月間で費やした時間に免じてお許しいただきたいです。
…とここまで書いたのが3月のはじめ。
それから、いろいろそれっぽいことを書いてみたものの、書けば書くほど、「お前は何様だ」という気持ちに押しつぶされてしまって、すっかり日にちがたってしまいました。
面白かった作品だから、別に悪口書くわけでもないのに、選ぶ行為だけでここまでしんどいとは。
このフェスでは、<芸術賞><エンタメ賞><笑える賞><感動賞><観劇ビギナー賞>の5つの部門賞がありました。
そもそも、芸術とは、エンタメとは、感動とはなんだ。
そんな大それた概念の定義付けから始めなきゃいけないのか。
作品ごとに、いずれかの賞を当てはめるのは難しくなくても、部門ごとに作品を選ぶのは大変です。
せっかくここまで見てきたし選びますけど。
でも、ひとつずつ振り返っていると時間がかかりすぎるので、作品名だけでカンベンしてください。
<芸術賞>
時間堂『ゾーヤ・ペーリツのアパート』
劇団 壱劇屋『SQUARE AREA』
芸術的な評価とは、斬新さとか秩序とかそういうことだと思います。
<エンタメ賞>
ゲキバカ『0号(2014.ver)』
パノラマ堂『怪人坂の少女と、少女館の怪人』
見ている間、ずっと楽しく、退屈しない作品です。
<笑える賞>
オパンポン創造社『オパンポン☆ナイトvol.3~曖昧模糊~』
そのまんま、生理反応としてよく笑える作品です。
<感動賞>
匿名劇壇『二時間に及ぶ交渉の末』
笑いの内閣『名誉男性鈴子』
劇団ZTON『ティル・ナ・ノーグ ~太陽の系譜~』
実際は「泣ける」という意図なんだと思いますが、自分は作品を見て泣く感覚がよくわからないので、こういう本を書いてみたいという「憧れ」で代替しました。
<観劇ビギナー賞>
宮川サキ一人芝居『モダンtimes』
匿名劇壇『二時間に及ぶ交渉の末』
ほとんど現地で観劇したことのないので、「観劇三昧のビギナー」に最初にオススメしたい、時間短めの作品です。
大賞とかそういう大それた選出はなしです。上に書いている作品全部大賞です。
書いてない作品もおおむね大賞です。
まとめ。
もちろん、演劇は劇場で見るのが一番。
作り手は劇場で見たときに一番面白くなるように作るものだからです。
しかし、「どんなにたくさん動画を見ようが一度の観劇体験に及ばない」というのも極端な話。
利用できるものは何でも利用して自分の創作に活かすのが本筋だと思います。
今、観劇三昧では600作品くらい見られるはずです。自分がこの期間で見た42作品なんて1割にもなりません。
たくさん見ればいいというものではありませんが、今後も色んな刺激をいただきたいと思います。
ちなみに、観劇三昧で特におもしろいのは、劇評の可能性が広がることだと思っています。
批評は、受け手が共通のテキストを持っていないと成立しないものです。
ライブである演劇は、見た人ごとに異なるテキストが残ります。
同じ演目の同じ回を観ていても、座席によって印象が変わることは珍しくありません。
この再現性のなさが演劇の面白さであると同時に、批評の敵でもあります。
だから、どうしても劇評というと印象論やポエム風の文章、知識の羅列になりやすい。
しかし、観劇三昧なら、誰でもほぼ共通のテキストで論じられます。
これはとても面白いことだと思います。
きちんとした劇評が書ける人が増えれば、演劇というジャンルがもっと豊かになるはずです。
自分も少しでもマシな感想文が書けるようにがんばります。
今後もよろしければお付き合いください。
おわり
観劇三昧:感想文一覧