3月31日、東京厚生年金会館が閉館になった。1961年4月の開館から49年、近年は老朽化が進み、又、新しいホールが随分増えたことから公演の機会が減っていたようだ。経営も赤字だった。
最後の公演は3月29日の松山千春、10年振り、通算75回目のステージだという。因みに、東京厚生年金での公演回数1位はさだまさしで174回(彼は3月28日に最後のステージを行った)、2位は高橋真梨子で117回、3位がこの松山千春とのこと。
僕も、主に学生時代、このホールには大変お世話になった。読売日響の会員券を買っていた僕は、毎月演奏を聴きに来ていたのである。貧乏学生だった僕にしてみると、日常から離れられる、月1回のハレの日だった。新宿の厚生年金が僕の文化、芸術の象徴だったのである。そうそう、初めて年末に第九を聴いたのもここだった。
今回の東京厚生年金会館閉館のニュース、時代の流れといえばそれまでだが、やはり淋しく、感慨深いものがある。
ところで、これを聞いて、「えっ、私の地元の厚生年金会館も閉館したわ」、「僕の近所の厚生年金は経営が変わったぞ」という方が多くいらっしゃると思う。
そう、厚生年金会館、年金休暇センター、サンピア等の年金福祉施設は、平成17年10月に「独立行政法人 年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)」に移管されており、そしてこれらの施設は今年9月末までの売却が予定されているのである。全国の厚生年金ホールの売却は、この大方針に沿った動きなのであった。
この「年金・健康保険福祉施設整理機構」、なかなか優秀である。平成21年3月末の時点、つまり発足後わずか3年半で、既に237施設、278物件処分している。その売却額は 1,330億円、国の出資時の価格を簿価とすれば、その簿価は 1,090億円であり、240億円の売却益を計上している。新たな国民負担を発生させることなく売却が進められている。関係者各位に敬意を表したい。ただ、今月末に平成21年度実績がHPで公開されると思うが、リーマン・ショック後の状況が若干気になる。
しかし、ここで忘れてならないのは、年金福祉施設の建設を推進し、かつ天下りにより関連団体に多くのOBを送り込んでいた厚生労働省の責任である。
年金福祉施設の建設や不動産取得のために充てられた金額は1兆4000億円。とすると、まだ1割弱の金額しか回収できていない。国の出資時の価格の算出方法がわからないため両者の単純な比較はできないが、事実は事実である。勿論、これはRFOの責任ではない。おそらく、年金福祉施設の老朽化・償却等による減価と、採算・経済性等を無視して施設を建設した結果なのであろう。
問題は建設コストだけではない。運営コストも問題だ。RFO設立当時、年金福祉施設の97%が赤字と言われていた。例えば、全国に21か所あった厚生年金会館は全体で25億円の赤字だった。
そもそも、厚生年金の貴重な積立金の浪費、無駄使いがRFO設立の発端であった。厚生省の役人が自らの職場を確保する、あるいはOBの関与する企業・団体に仕事を回すために、年金の積立金で要らない施設まで作っている。おまけに杜撰な経営によってそうした施設のほとんどは赤字で、厚生年金からの埋め合わせが必要になっている。これが当時の問題意識だった。
似たような話を聞いた覚えがないだろうか。そう“かんぽの宿”である。かんぽの宿は、事業継続と雇用の維持を条件としたことから売却交渉が難航し、なんとかまとまったオリックスへの一括譲渡も政治の横やりで流れてしまった。(因みに、年金福祉施設の売却には事業継続等の条件はない。実際、東京厚生年金はヨドバシカメラに売却され、カメラ博物館等になる予定である。)
昨年来かんぽの宿の赤字は更に拡大しているであろうし、今回の民主党政権の郵政見直しで郵政事業の効率化は後退している。これは国民負担増加だけの問題ではない。民業を圧迫する、非効率な郵政が肥大化することを、民主党は日本経済全体にとって良いことだと本当に考えているのだろうか。
子ども手当などのバラマキを行い、人気取りや選挙対策しか考えない今の政治の現状を見るに、日本という国自体が今の大阪市、更には夕張市になる日が遠くない気がして恐ろしい。
最後の公演は3月29日の松山千春、10年振り、通算75回目のステージだという。因みに、東京厚生年金での公演回数1位はさだまさしで174回(彼は3月28日に最後のステージを行った)、2位は高橋真梨子で117回、3位がこの松山千春とのこと。
僕も、主に学生時代、このホールには大変お世話になった。読売日響の会員券を買っていた僕は、毎月演奏を聴きに来ていたのである。貧乏学生だった僕にしてみると、日常から離れられる、月1回のハレの日だった。新宿の厚生年金が僕の文化、芸術の象徴だったのである。そうそう、初めて年末に第九を聴いたのもここだった。
今回の東京厚生年金会館閉館のニュース、時代の流れといえばそれまでだが、やはり淋しく、感慨深いものがある。
ところで、これを聞いて、「えっ、私の地元の厚生年金会館も閉館したわ」、「僕の近所の厚生年金は経営が変わったぞ」という方が多くいらっしゃると思う。
そう、厚生年金会館、年金休暇センター、サンピア等の年金福祉施設は、平成17年10月に「独立行政法人 年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)」に移管されており、そしてこれらの施設は今年9月末までの売却が予定されているのである。全国の厚生年金ホールの売却は、この大方針に沿った動きなのであった。
この「年金・健康保険福祉施設整理機構」、なかなか優秀である。平成21年3月末の時点、つまり発足後わずか3年半で、既に237施設、278物件処分している。その売却額は 1,330億円、国の出資時の価格を簿価とすれば、その簿価は 1,090億円であり、240億円の売却益を計上している。新たな国民負担を発生させることなく売却が進められている。関係者各位に敬意を表したい。ただ、今月末に平成21年度実績がHPで公開されると思うが、リーマン・ショック後の状況が若干気になる。
しかし、ここで忘れてならないのは、年金福祉施設の建設を推進し、かつ天下りにより関連団体に多くのOBを送り込んでいた厚生労働省の責任である。
年金福祉施設の建設や不動産取得のために充てられた金額は1兆4000億円。とすると、まだ1割弱の金額しか回収できていない。国の出資時の価格の算出方法がわからないため両者の単純な比較はできないが、事実は事実である。勿論、これはRFOの責任ではない。おそらく、年金福祉施設の老朽化・償却等による減価と、採算・経済性等を無視して施設を建設した結果なのであろう。
問題は建設コストだけではない。運営コストも問題だ。RFO設立当時、年金福祉施設の97%が赤字と言われていた。例えば、全国に21か所あった厚生年金会館は全体で25億円の赤字だった。
そもそも、厚生年金の貴重な積立金の浪費、無駄使いがRFO設立の発端であった。厚生省の役人が自らの職場を確保する、あるいはOBの関与する企業・団体に仕事を回すために、年金の積立金で要らない施設まで作っている。おまけに杜撰な経営によってそうした施設のほとんどは赤字で、厚生年金からの埋め合わせが必要になっている。これが当時の問題意識だった。
似たような話を聞いた覚えがないだろうか。そう“かんぽの宿”である。かんぽの宿は、事業継続と雇用の維持を条件としたことから売却交渉が難航し、なんとかまとまったオリックスへの一括譲渡も政治の横やりで流れてしまった。(因みに、年金福祉施設の売却には事業継続等の条件はない。実際、東京厚生年金はヨドバシカメラに売却され、カメラ博物館等になる予定である。)
昨年来かんぽの宿の赤字は更に拡大しているであろうし、今回の民主党政権の郵政見直しで郵政事業の効率化は後退している。これは国民負担増加だけの問題ではない。民業を圧迫する、非効率な郵政が肥大化することを、民主党は日本経済全体にとって良いことだと本当に考えているのだろうか。
子ども手当などのバラマキを行い、人気取りや選挙対策しか考えない今の政治の現状を見るに、日本という国自体が今の大阪市、更には夕張市になる日が遠くない気がして恐ろしい。