昨年、小学生、中・高校生のための「放射線副読本」が文科省で作成され、教育現場におりてきていることをご存じですか。清瀬・憲法九条を守る会、清瀬・くらしと平和の会の仲間のひとりがメンバーに紹介し、問題点を指摘してくれました。それを聞いて、これは捨て置けないと思った連れ合いが次のような請願を出しました。傍聴はどなたでも自由なので、どうぞいらしてください。
*2019年3月14日(木) 10:00~(通常なら10:30頃からになりそうです)
*清瀬市役所、4階、総務文教委員会
■「小学生、中・高校生のための『放射線副読本』」の使用中止を市教育委員会に求める請願
紹介議員 ふせ由女
〈請願の内容〉
現在小・中・高校生に対して使われている「放射線副読本」は子どもたちに誤った知識を植え付けようとしています。従って、これらの副読本の使用中止を市教育委員会に求めます。
〈請願の理由〉
平成30年度に文科省から出された「小学生のための『放射線副読本』」と、「中・高校生のための『放射線副読本』」を読んだところ、両方の副読本ともに大変気になる表や文章がありました。
小学生のための副読本では「原子と原子核」の項目が無く、他の項目の文章は少し簡単になっていますが、以下に述べる内容や図表は両副読本に共通のものです。ここでは「中・高校生のための『放射線副読本』」で疑問点を書いておきます。
(1)「放射線による健康への影響」について
※「中・高校生のための『放射線副読本』」10頁
●「100~200ミリシーベルトの放射線を受けたときのがん(固形がん)のリスクは1.08倍であり、これは1日に110gしか野菜を食べなかったときのリスク(1.06倍)や高塩分の食品を食べ続けたときのリスク(1.11~1.15倍)と同じ程度となっています。」と書かれているが、大変わかりにくい比較。1億2千万人が100ミリシーベルトずつ被ばくしたらがんで死ぬ人が60万人も増えるということである*1。「~と同じ程度」ということばには当然「だから心配しないで大丈夫」ということばが続くとイメージされ、生徒たちの心に「放射線はそんなに気にしないでいいんだ」と刷り込まれていくことになる。
●この段落は「これから長く生きる子供たちは、放射線を受ける量をできるだけ少なくすることも大切です。」とまとめられているが、上記の文章と相容れない。
*1:ICRP(国際放射線防護委員会)1990年勧告、表3による計算結果
(2)「住民の避難と帰還」について
※「中・高校生のための『放射線副読本』」14頁
●「福島県が行った平成30年3月までの調査の結果によれば、県民等に、今回の事故後4か月間において体の外から受けた放射線による健康影響があるとは考えにくいとされています。」と書かれているが、通常なら100万人に一人と言われる小児甲状腺がんが200人以上も見つかっている。福島県の2016年県民健康調査でも「先行検査(一巡目の検査)を終えて、わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などから推定される有病数に比べて数十倍のオーダーで多い甲状腺がんが発見されている。」と認めている*2。
*2:福島県「県民健康調査」検討委員会「県民健康調査における中間とりまとめ(平成28年3月)」2頁より
(3)「食品中の放射性物質に関する指標等」について
※「中・高校生のための『放射線副読本』」17頁
●日本は事故後1年経った2012年「平常時」の基準値であり、他のEU、米国、コーデックスの数値は「緊急時のガイドライン」である。設定の違う値を比較すること自体が無意味。
●表①「食品中の放射性物質に関する指標等」の説明文章②と、同頁下欄の注釈③10, 11には解釈の食い違いがある。(3頁の資料参照)
以上のことから、現在の副読本には児童、生徒たちに「放射線って安全で心配は要らないのだな」という気持ちを持たせるような記述が多く含まれていることがわかります。
一方で、福島原発事故の被害や内容に触れているのは12頁の5行分のみで、しかも概略が述べられているだけです。この事故に対する国や東京電力の責任には触れず、現地に留まった方々にも現在なお避難している方々にも、その実情、心情を無視したものとなっています。事故の後、将来に絶望して自ら命を絶った方もいますし、避難したくてもできなかった方々、避難はしたものの住宅手当を打ち切られ、やむを得ず帰還した方々もいます。そうした方々の想いにもっとよりそった内容の副読本であるべきです。
これからを生きる子どもたち、生徒たちは放射線の危険性に対する正しい知識を持ち、健康被害についても積極的に考えていく必要があります。また、今ある原発の今後をどう見据えるのか、万が一のことがあったらどう対処したら良いのか、自分が避難者だったらどうして欲しいのか、何が必要なのかといったことを親身になって考えられるような副読本になっていなければなりません。 従って現在の副読本を小学校・中学校・高等学校の授業で使用することを中止していただくよう市教育委員会に請願するものです。
2019年2月25日
清瀬市議会議長
西畑 春政 様
清瀬・憲法九条を守る会 福田 緑 東京都清瀬市
〈資料〉
①17頁の表
②:本文説明 ※下線は筆者
「原子力発電所の事故の後、厚生労働省は、食品に含まれていても健康に影響を及ぼさないと考えられる、放射性物質の量(基準値 ) を決めました。日本の基準値は、他国に比べ厳しい条件の下設定されており、世界で最も厳しいレベルです。そして厚生労働省は、基準値を超える放射性物質を含む食品が市場に出回ることのないように厳しく見守っています。」
③:番号は上の表内に小さく書かれた数字に対応している。
9 コーデックス:食品の国際規格を作成している組織
10 本表に示した数値は、この値を超えた場合は食品が市場に流通しないように設定されている基準等の値です。 数値は、食品から受ける線量を一定レベル以下に管理するためのものであり、安全と危険の境目ではありません。また、各国で食品の摂取量や放射性物質を含む食品の割合の仮定値等の影響を考慮してありますので、単に数値だけを比べることはできません。
11 コーデックス、EUと日本は、食品からの追加線量の上限は同じ1mSv(ミリシーベルト)/年です。日本では放射性物質を含む食品の割合の仮定値を高く設定していること、年齢・性別毎の食品摂取量を考慮していること、放射性セシウム以外の核種の影響も考慮して放射性セシウムを代表として基準値を設定していることから、基準値の数値が海外と比べて小さくなっています。
〈補足説明〉
◆ICRP:International Commission on Radiological Protection専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織
◆コーデックス:正式にはコーデックス・アリメンタリウス(Codex Alimentarius)というラテン語からきた言葉で、食品規格という意味をもち、19世紀末のオーストリア・ハンガリー帝国でも使われたことがある伝統的な言葉です。
現在、世界的に通用する食品規格はこの規格だけで、これを普通コーデックス規格といっています。
1962年、国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で、国際的な食品規格をつくることが決められました。その食品規格計画の実施機関が食品規格委員会、英語名でコーデックス・アリメンタリウス・コミッション(Codex Alimentarius Commission)といい、CACと略称されています。2006年10月現在、CAC加盟国は174カ国及び1機関(欧州共同体)です。(公益社団法人日本食品衛生協会ホームページより)
参議院議員の山本太郎さんが、トークライブとしては初めて清瀬に来られます。国民民主党と自由党の統一会派を代表しての太郎さんの国会演説はとても迫力がありましたね。
彼の肉声を聞きに清瀬までいらっしゃいませんか。「交流会」ということで質問の時間もとってあります。
お待ちしています!
最後に鎌田慧さんの渾身の新聞コラムを読んでください。
◆恐怖の再稼働
首都圏唯一の東海第二原発は40年たった老朽原発
鎌田 慧(ルポライター)
昨年10月、インドネシアで墜落したばかりだった。米ボーイング社の
最新鋭旅客機「737MAX」、この10日にもエチオピアで墜落した。
安全性が問題視され、世界各地で即座に運行停止された。が、米連邦
航空局(FAA)の停止の決断は遅かった。「ボーイング社とトランプ
大統領の関係は非常に深い」からだった(本紙17日付)。
これを読んで「トランプよ、おまえもか」。ハタと膝をたたいたのは、
大事故があってなお、平然と原発を推進するわが国の首相と原発メー
カーとの「関係の深さ」に思いがおよんだからだ。
首相の率先外遊、世界への原発売り込みは結局、全敗に終わった。
が、まだオリンピック開会式の晴れ舞台がある。
いまなお続く原発被曝地や避難民の苦境には目をつぶり事故にもめげず
原発再稼働をすすめ、ひたすら「復興」と「帰還」を唱えるのは「アン
ダーコントロール」ニッポンを演出したいからなのか。
「原子力村」として脚光を浴びた茨城県東海村にある首都圏唯一の東海
第二原発は40年たった老朽原発。いま無謀にも再稼働を準備している。
東京まで110キロ。水戸市など30キロ圏内には100万人が生活している。
バラ色の夢を描いた東海第二原発でオリンピックに花を添えるのか。
21日午後零時半、東京・代々木公園で「さようなら原発全国集会」
がある。 (3月19日東京新聞朝刊25面「本音のコラム」より)
*2019年3月14日(木) 10:00~(通常なら10:30頃からになりそうです)
*清瀬市役所、4階、総務文教委員会
■「小学生、中・高校生のための『放射線副読本』」の使用中止を市教育委員会に求める請願
紹介議員 ふせ由女
〈請願の内容〉
現在小・中・高校生に対して使われている「放射線副読本」は子どもたちに誤った知識を植え付けようとしています。従って、これらの副読本の使用中止を市教育委員会に求めます。
〈請願の理由〉
平成30年度に文科省から出された「小学生のための『放射線副読本』」と、「中・高校生のための『放射線副読本』」を読んだところ、両方の副読本ともに大変気になる表や文章がありました。
小学生のための副読本では「原子と原子核」の項目が無く、他の項目の文章は少し簡単になっていますが、以下に述べる内容や図表は両副読本に共通のものです。ここでは「中・高校生のための『放射線副読本』」で疑問点を書いておきます。
(1)「放射線による健康への影響」について
※「中・高校生のための『放射線副読本』」10頁
●「100~200ミリシーベルトの放射線を受けたときのがん(固形がん)のリスクは1.08倍であり、これは1日に110gしか野菜を食べなかったときのリスク(1.06倍)や高塩分の食品を食べ続けたときのリスク(1.11~1.15倍)と同じ程度となっています。」と書かれているが、大変わかりにくい比較。1億2千万人が100ミリシーベルトずつ被ばくしたらがんで死ぬ人が60万人も増えるということである*1。「~と同じ程度」ということばには当然「だから心配しないで大丈夫」ということばが続くとイメージされ、生徒たちの心に「放射線はそんなに気にしないでいいんだ」と刷り込まれていくことになる。
●この段落は「これから長く生きる子供たちは、放射線を受ける量をできるだけ少なくすることも大切です。」とまとめられているが、上記の文章と相容れない。
*1:ICRP(国際放射線防護委員会)1990年勧告、表3による計算結果
(2)「住民の避難と帰還」について
※「中・高校生のための『放射線副読本』」14頁
●「福島県が行った平成30年3月までの調査の結果によれば、県民等に、今回の事故後4か月間において体の外から受けた放射線による健康影響があるとは考えにくいとされています。」と書かれているが、通常なら100万人に一人と言われる小児甲状腺がんが200人以上も見つかっている。福島県の2016年県民健康調査でも「先行検査(一巡目の検査)を終えて、わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などから推定される有病数に比べて数十倍のオーダーで多い甲状腺がんが発見されている。」と認めている*2。
*2:福島県「県民健康調査」検討委員会「県民健康調査における中間とりまとめ(平成28年3月)」2頁より
(3)「食品中の放射性物質に関する指標等」について
※「中・高校生のための『放射線副読本』」17頁
●日本は事故後1年経った2012年「平常時」の基準値であり、他のEU、米国、コーデックスの数値は「緊急時のガイドライン」である。設定の違う値を比較すること自体が無意味。
●表①「食品中の放射性物質に関する指標等」の説明文章②と、同頁下欄の注釈③10, 11には解釈の食い違いがある。(3頁の資料参照)
以上のことから、現在の副読本には児童、生徒たちに「放射線って安全で心配は要らないのだな」という気持ちを持たせるような記述が多く含まれていることがわかります。
一方で、福島原発事故の被害や内容に触れているのは12頁の5行分のみで、しかも概略が述べられているだけです。この事故に対する国や東京電力の責任には触れず、現地に留まった方々にも現在なお避難している方々にも、その実情、心情を無視したものとなっています。事故の後、将来に絶望して自ら命を絶った方もいますし、避難したくてもできなかった方々、避難はしたものの住宅手当を打ち切られ、やむを得ず帰還した方々もいます。そうした方々の想いにもっとよりそった内容の副読本であるべきです。
これからを生きる子どもたち、生徒たちは放射線の危険性に対する正しい知識を持ち、健康被害についても積極的に考えていく必要があります。また、今ある原発の今後をどう見据えるのか、万が一のことがあったらどう対処したら良いのか、自分が避難者だったらどうして欲しいのか、何が必要なのかといったことを親身になって考えられるような副読本になっていなければなりません。 従って現在の副読本を小学校・中学校・高等学校の授業で使用することを中止していただくよう市教育委員会に請願するものです。
2019年2月25日
清瀬市議会議長
西畑 春政 様
清瀬・憲法九条を守る会 福田 緑 東京都清瀬市
〈資料〉
①17頁の表
②:本文説明 ※下線は筆者
「原子力発電所の事故の後、厚生労働省は、食品に含まれていても健康に影響を及ぼさないと考えられる、放射性物質の量(基準値 ) を決めました。日本の基準値は、他国に比べ厳しい条件の下設定されており、世界で最も厳しいレベルです。そして厚生労働省は、基準値を超える放射性物質を含む食品が市場に出回ることのないように厳しく見守っています。」
③:番号は上の表内に小さく書かれた数字に対応している。
9 コーデックス:食品の国際規格を作成している組織
10 本表に示した数値は、この値を超えた場合は食品が市場に流通しないように設定されている基準等の値です。 数値は、食品から受ける線量を一定レベル以下に管理するためのものであり、安全と危険の境目ではありません。また、各国で食品の摂取量や放射性物質を含む食品の割合の仮定値等の影響を考慮してありますので、単に数値だけを比べることはできません。
11 コーデックス、EUと日本は、食品からの追加線量の上限は同じ1mSv(ミリシーベルト)/年です。日本では放射性物質を含む食品の割合の仮定値を高く設定していること、年齢・性別毎の食品摂取量を考慮していること、放射性セシウム以外の核種の影響も考慮して放射性セシウムを代表として基準値を設定していることから、基準値の数値が海外と比べて小さくなっています。
〈補足説明〉
◆ICRP:International Commission on Radiological Protection専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織
◆コーデックス:正式にはコーデックス・アリメンタリウス(Codex Alimentarius)というラテン語からきた言葉で、食品規格という意味をもち、19世紀末のオーストリア・ハンガリー帝国でも使われたことがある伝統的な言葉です。
現在、世界的に通用する食品規格はこの規格だけで、これを普通コーデックス規格といっています。
1962年、国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で、国際的な食品規格をつくることが決められました。その食品規格計画の実施機関が食品規格委員会、英語名でコーデックス・アリメンタリウス・コミッション(Codex Alimentarius Commission)といい、CACと略称されています。2006年10月現在、CAC加盟国は174カ国及び1機関(欧州共同体)です。(公益社団法人日本食品衛生協会ホームページより)
参議院議員の山本太郎さんが、トークライブとしては初めて清瀬に来られます。国民民主党と自由党の統一会派を代表しての太郎さんの国会演説はとても迫力がありましたね。
彼の肉声を聞きに清瀬までいらっしゃいませんか。「交流会」ということで質問の時間もとってあります。
お待ちしています!
最後に鎌田慧さんの渾身の新聞コラムを読んでください。
◆恐怖の再稼働
首都圏唯一の東海第二原発は40年たった老朽原発
鎌田 慧(ルポライター)
昨年10月、インドネシアで墜落したばかりだった。米ボーイング社の
最新鋭旅客機「737MAX」、この10日にもエチオピアで墜落した。
安全性が問題視され、世界各地で即座に運行停止された。が、米連邦
航空局(FAA)の停止の決断は遅かった。「ボーイング社とトランプ
大統領の関係は非常に深い」からだった(本紙17日付)。
これを読んで「トランプよ、おまえもか」。ハタと膝をたたいたのは、
大事故があってなお、平然と原発を推進するわが国の首相と原発メー
カーとの「関係の深さ」に思いがおよんだからだ。
首相の率先外遊、世界への原発売り込みは結局、全敗に終わった。
が、まだオリンピック開会式の晴れ舞台がある。
いまなお続く原発被曝地や避難民の苦境には目をつぶり事故にもめげず
原発再稼働をすすめ、ひたすら「復興」と「帰還」を唱えるのは「アン
ダーコントロール」ニッポンを演出したいからなのか。
「原子力村」として脚光を浴びた茨城県東海村にある首都圏唯一の東海
第二原発は40年たった老朽原発。いま無謀にも再稼働を準備している。
東京まで110キロ。水戸市など30キロ圏内には100万人が生活している。
バラ色の夢を描いた東海第二原発でオリンピックに花を添えるのか。
21日午後零時半、東京・代々木公園で「さようなら原発全国集会」
がある。 (3月19日東京新聞朝刊25面「本音のコラム」より)